入学したよー(またぼっちか)
「すみません、もう1回良いですか?」
「はい、すみません..。」
「いえ!誰しも間違えますよ!」
「本っ当に有難う御座います…。」
おかしいな。何時もはこんなに間違えていないのに。今日の涼ちゃんはどうしたんだろうか。
レコーディングは俺、若井、と順調に進んでいった。しかし、涼ちゃんの番になるといきなり、「ごめん、1回外出ていい?」と聞いてきて、俺は良いよと、返事を返した。何時もはこのままレコーディングをするだけなのに。
若井も同情していたのだろう。レコーディング室から涼ちゃんが出ていった時、俺は若井と不思議そうに顔を見合わせていた。
「あの..ちゃんと練習してきましたよね?」
「も、勿論っ、!!」
「じゃあ、何で出来ていないんですか?」
「それは….」
「…はぁ、」
役立ずだな。
役立ず?あのスタッフは涼ちゃんの事を役立ずと言ったのか?きっと小声で言ったつもりなんだろうけどバッレバレ。ていうか、涼ちゃんがいる部屋に繋がれているマイクもオンだし。
流石にブチ切れて文句を言ってやりたい所だが何時も助けて貰っているので我慢我慢。
「あっ、ご、御免なさい。」
「す、すみませんっ。」
「ぁ、あっ、あぁ、っ..。」
「..涼ちゃ」
「ああぁぁぁ”っ、!!!」
「はぁっ、御免なさいっ、御免なさいっ。」
「何で何で何でっ、あぁっ、あぁっ、!」
俺は様子がおかしかった涼ちゃんに声を掛けようとした。すると急に叫び出し、頭を抱えながら床に座り込んだ瞬間。手がピアノの鍵盤に当たり不気味な音が聞こえ、椅子を脚で力強く蹴り飛ばしていた。俺と若井は驚き急いで涼ちゃんのいる録音室に行く。
「涼ちゃんっ、落ち着いてっ。」
「ああっ、御免なさっ、御免なさいっ、役立ずで御免なさいっ。」
「涼ちゃんっ!!!」
若井が鼓膜が敗れそうくらいの大声で名前を呼び、涼ちゃんはハッとした様子で、まるで時が止まったかのように口を開けてぽかーんとしていた。
収まったのかと思ったら、今度はまるで子供のように泣き出し、大粒の涙で服を濡らしていた。
「うぁぁっ、うぁぁんっ。」
「涼ちゃん…。」
「若井、涼ちゃん頼む。」
「分かった。」
頼むの意味は分かるだろう。あのクソスタッフに文句を言ってやるのさ。
「おい。」
「大森さん、藤澤さんどうしたんでしょうかねっ、!! 」
「は?御前いい加減にしろよ。」
「幾らベテランで俺よりも歳上でも許す訳ないよね?笑」
「マネさーん。此奴もう呼ばないで下さい。今後一切。ね?」
「はーい。」
「ちっ、人気だからって調子乗んなよクソがッ!!」
はぁ?調子乗ってんのはそっちだろばーかッ。
もう彼奴とは喋りたくもないな。