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建物の中へ向かっていると、すんなり凪くんが手を繋いできた。左側に御影くんも来たし。
どうやら2人は荷物没収の際にボディスーツを貰ったようで、今から行く場所でそれに着替えなければならないらしい。
「なんか書いてるね」
「そだね。レオは何番?」
「250のV」
それはそうとしてとにかく広い。ゲームであるような広さ。こんな感じの内装だったあのゲーム、名前なんだっけ…と興奮気味に考えたが一向に名前が出てこないので考えることを諦め、また与太話をする。
そして、一頻り話が終わり、これから凪くんたちが入るであろうドアの前まで来た。
「ここで着替えるんだよね。だったら私はここで待っとくね」
「うん。何かあったら呼んでね」
それから、「あれ、私の生活品は?」と考え始めて1分。選手たちと違って自分はああいう服を支給されていないし、持参はスマホとゲーム、イヤホンとモバイルバッテリーだけだし。ちなみに、スマホの充電残量が心の余裕になるタイプなのでモバイルバッテリーは5個持ってきた。
うーん…と唸っていると、着替えが終わったようで扉から凪くんが出てきた。
「すごい、ボディスーツって感じ」
「んー」
私を呼びに来てくれた凪くんに手を引かれてまた扉の向こうへ入り、少し気まずかったからなんとなく皆に会釈をした。
するとモニターが付き絵心さんが映った。どうやら今からオニごっこをやるらしい。
制限時間は136秒、ボールに当たった人が鬼で、最後にオニだった人が脱落するらしい。それとハンド禁止だって。本当にデスゲームみたいだなあ…オニでも死にはしないけど、夢は完全に終わっちゃう。
私はこのおにごっこには関係ないので部屋の端っこで座っておくことにした。
「てかこの部屋…なんか身に覚えがあると思ったらペナルティ・エリアと同じサイズじゃんね」
そうなんだ。何mか書かれているわけでもないのによくわかるなあ。凪くんの空間認識能力えげつねー…
そう感心していると御影くんも「この制限時間『136秒』ってのも多分アレだ。1試合前90分間で一人のプレイヤーがボールを触れる平均時間136秒っていうデータがあるし」と言っていた。よく調べてるなぁ。
すると何故かルールを誤って理解しているメガネの人がボールを奪った。御影くんは「天然記念バカ!」とか笑っていた。天然記念バカ、何か語呂いいね。これから使おうかな天然記念馬鹿。
それから凪くんがボールに当たって御影くんが代わりにボール貰って当てて御影くんが当たりそうになって凪くんがボール取って当てて…とにかく色々あった。
「お疲れ様」
「ん、ありがと」
あ、そういえば……
一通りの会話を終えれて絵心さんとアンリちゃんのいる部屋を後にする。
内容は「持ち物が全くない」ということ。
タオルやマグカップなどはあるけれどそれ以外のものがなんにもない……服がない。そういうと親御さんに送って貰う?という話になったが、私は上京して一人暮らしをしているのでそれは無理だと断った。すると、アンリちゃんが私の服を新しく買ってくれるらしい。ありがたい。そして、届くまではアンリちゃんがお洋服を貸してくれるんだって。ありがとう。
絵心さんを見ているとUF〇焼きそば食べたくなるなぁ。
………後になって、途中から焼きそばのことばかりで話を右から左へ流していたことを後悔した。
聞き流していた話の中には「怪我人のため治療用具を置いて回れ」って。
怪我するほどのボールの威力ってやば…普通に転けたりもあるだろうけど。
治療も出来ればやれって。さすがにそこまではできないから私は置くだけにさせてもらう。スポーツ選手って怖いイメージあるから少し心配。体ががっしりしてるからかな。
あ。それと、手に負えない具合の怪我は報告するように、だと。
「とっとと終わらせよ…」
「失礼します」
それからどれだけの時間が経っただろうか、やっと仕事が終わった。建物が複雑で、もちろん何度か道には迷ったし、他にも挨拶や、なくなった分の補充にまた戻ったりと、とにかく時間がかかった。
それと、私のために部屋を用意してくれていたようで、その部屋への案内をアンリちゃんにしてもらっていた。私の持ち物に関することは、完全に頭が回っていなかった、謝ってもらった。ほぼ2人で進めていたようなものだし、疲れていたんだろう。ここに私なんていない方が楽だったのかもしれない。
それと、たくさんの伍号棟を回っていると幼馴染と再会できた。慕っていた兄に対してクソ兄貴、と呼んでいたことには驚いたけれど、今もサッカーを続けていて、そして私のことも嫌いになっていないようで本当に安心した。
戻れば凪くんと御影くんから何をしていた、と問い詰められた。
一応雇われてるから仕事してた、とそのままこたえればしぶしぶ納得した様子でハグをしてきた。
この距離感は本当に慣れる気がしない、東京の男の人って皆こんな感じなのかな。神奈川から来たから分からないや。あ、凪くんも神奈川県出身だっけ……
その体制のまままたいつも通り会話をふられ、そのまま話していると時刻が24時を回ったので「じゃあ寝るね、おやすみ」とチームVの部屋を後にした。どこで寝るの?という質問には、「私専用のお部屋を用意してもらったの」とこたえた。すると「危ないから一緒に行くよ」と2人がついてくることになった。
…過保護。
そのまま目が覚めると時刻は4時、ものすごく早い時間に起きてしまった。
ゲーム三昧で、いつもはもっと遅い時間に寝ていたからだろう。仕方がない。これを機に昼夜逆転気味になっていたのも治せるかも。
眠くも無かったがやることも無いので二度寝をし、次目覚めた時には5時になっていた。
5時と言えばド早朝という人もいればド深夜という人もいるだろう。あと4時はド早朝かド深夜か。私は4時はド深夜、5時はド早朝だと思うけれど。
そんな無駄話を頭の中で広げながら顔を洗いに行き、タオルで顔とぬれた手を丁寧に拭いた。
そのまま少しだるい体で食堂まで歩き、無事食堂まで到着してから周りを見渡した。
「広い」
これは予算も無くなるものだ、と何回目かも分からないことを呟いた。