テラーノベル
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「 夜空。」
もとぱ
それは、滉斗にとって初めて”祈る”という事を覚えた夜だった。
・
「 ___今日、花火大会だってさ 」
病室のカーテン越しに オレンジの夕焼けが差し込んでいた。
窓の外からは遠くで聞こえる屋台の音、人の声 夏の音がする。
「 俺達も、行きたかったな。」
滉斗の言葉に、ベッドの上の元貴はゆっくりと瞬きをした。
細い腕には点滴の針が刺さり 酸素マスクの下で微かに笑う。
「 …ひろとが…..浴衣 、 着たら…絶対似合うのに。」
「 はは、なんだよ急に。お前こそ絶対似合っただろ。」
「 ん…2人で金魚すくい…したかったな… 」
「 …..ッ 」
滉斗の笑顔が 少しだけ歪んだ。
手を伸ばすと、元貴の手がふわりと重なる。
細くて冷たいその手をそっと包む。
「 じゃあ、代わりに…見せてやるよ 」
滉斗がそう言って、カーテンを開ける その時だった。
___ドンッ !
遠く 夜空に大輪の花が咲いた。
ピンク 紫 青 いくつもの色が交じり合って、空を染める。
「 …わぁ… 」
元貴の目に淡い光が映る。
酸素マスクの向こうで、確かに笑っていた。
「 ねぇ…滉斗…。」
「 ん? 」
「 …こんなに…..綺麗な花火、初めて… 」
滉斗は答えない。
ただ 元貴の手をぎゅっと握り、彼の横顔を見つめていた。
「 ずっと…そばに居てくれて、ありがとう…」
「 バカ…そんなの、当然だろ… 」
言葉の途中で 滉斗の声が震える。
もう涙が溢れていて、それでも必死に笑う。
「 俺は…..お前が好きなんだよ。ずっと前から…。」
夜空に咲いた花火は すぐに音だけを残して消えていった。
けれど、2人の記憶には、ちゃんと残っていた。
この夏が、どれほど綺麗で、切なくて、愛しかったか。___
#2.「 ひとしずく、溢れた涙 」
フィヨルドライビュで観戦してましたが、儚すぎました。
コメント
3件
フォロ返失礼します.𖥔 ݁ 続き作るつもりで居ます😊
初コメ&フォロ失です‼︎ めためた感動しました🥺これって続きありますか? この終わり方もすんごい好きだけどあるなら気になる✨ 私もフィヨルド見ました‼︎最高でしたよね!!