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『(まだ死なないでよ)』
命の終わりのことを言ってる訳では無い。お互いを倒すためにスタミナ切れの体を操る。本当に矛盾してるよね、こんなの。
ボールが落ちたら負けて、試合も終わるって分かってるのに終わらないで欲しいと願ってしまう。
稲荷崎マッチポイント。侑さんのサーブから始まり再び怒涛のラリー。ボールが返ってくる瞬間、治さんがダイレクトで叩く。
ブロックに跳んだ灰羽と研磨が衝突。研磨は倒れるが、声を張り上げる。
孤爪「バカ!!!ボール!!!」
「まだ落ちてない!!!」
その通り。まだ落ちてない。
夜久さんのレシーブ、ネットを越える。俺は跳びダイレクトで叩く。でも目の前の灰羽に阻まれる。繋いで繋いで稲荷崎にチャンスボールがきた。
双子速攻。治さんの強烈なストレートは海さんがレシーブ。やっぱり音駒は凄い。どんなに苦しくても、しんどくても繋ぐことをやめない。だから俺達も攻撃することをやめない。
次の攻撃に備える。しかし、次の攻撃がくる事はなかった。ボールは研磨の手で滑りコートに落ちてしまったからだ。
摩浪『終わりましたね』
侑「せ…やな」
後ろを振り向くと侑さんたちは床に寝そべっていた。荒くなった息、汗だらけの体、昨日とは比べ物にならないほどの長いラリー。疲れてないわけが無い。
侑「ハァハァ…づっがれだー!!」
摩浪『あはは笑。お疲れ様です』
角名「摩浪ハァ…何で、そんな余裕なの?」
摩浪『スタミナには自信ありますので』
顔を上げ音駒コートを見る。音駒もさすがに疲れたみたい。
摩浪『さ、立ってください。整列です』
治「手ぇ貸して〜」
摩浪『はいはい』
先輩たちが起き上がるのを手伝った後、すぐに整列。挨拶と握手も終わり次の準備へうつる。
摩浪『研磨、またやろう』
孤爪「うん。やろう」
俺が手を差し出すと研磨は握り返してくれた。
孤爪「ねぇ摩浪。今からでも音駒に来てよ」
摩浪『ちょい笑。またねって言ったばっかなのに』
孤爪「だって摩浪強いしレシーブ上手いから。リエーフの指導して」
摩浪『確かにリエーフはまだまだ甘いからな』
灰羽「甘くねぇし!ん!?今摩浪、名前で呼んでくれた!?よっしゃー!」
夜久「リエーフうるせぇ!」ゲシッ
灰羽「いった!?夜久さん蹴らないで!」
俺はいつの間にか音駒に囲まれてた。なんか研磨に関しては距離近いし。
夜久「まぁでも!摩浪に指導任せたら千人力だな」
黒尾「今からでもどう?ニヤニヤ」
芝山「あれは大丈夫なのかな?」
手白「大丈夫では無いと思うぞ。ほら稲荷崎が」
俺たちが楽しく会話してると後ろから誰か腕を引っ張られ、抱きつかれた。
摩浪『侑さん…』
侑「ウチの1年たぶらかさんでな〜?」
黒尾「誑かすなんて、そんな事してないよ。お誘いだよお誘い〜」
孤爪「クロが言うと胡散臭いからやめて」
黒尾「今日俺にだけパンチ強いの何で?」
いつの間にか稲荷崎も集まってた。赤木さんと夜久さんはリベロ同士仲良く話してて、海さんと北さんで話してる。なんか保護者会みたい。
北「レシーブが最後まで丁寧やったな。音駒好きになったわ」
海「ふふ、ありがとう。昨日の試合見てたけど北も丁寧だよね」
赤木「やっぱ後輩の指導も夜久がやっとるんか?」
夜久「黒尾と海もやってるけど、芝山とリエーフは俺がメインでやってる。芝山ー」
芝山「はい!」
夜久「俺が抜けたら守備はこいつが担うぞ!」
赤木「へぇー!頑張ってな!」
芝山「は、はい!ありがとうございます!」ペコ
周りを見てたらすんなり打ち解けてた。話も合うのかな?でも俺の近くには侑さんと治さん、角名さんと銀さん。あと研磨とリエーフ。
灰羽「摩浪!音駒来るか!」
摩浪『んー、行きたいけどねー』
侑「ダメや!俺らの摩浪なんやから!」
孤爪「愛されてるね」
摩浪『後輩離れ出来ないだけだと思うぞ』
孤爪「来てくれる?」
摩浪『ありがとう研磨。でも俺は稲荷崎が好きだから音駒には行けないごめんね』
俺の返事に研磨はガッカリすることはない。多分わかってたんだと思う。
孤爪「ならやっぱり来年だね」
摩浪『だな』
ネコさんとの試合が終わった。でも俺たちはすぐに次の試合、準々決勝を控えている。このまま勝ってテッペンまでいく。