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「こんにちは。魔族のメアリーローズ。」
魔物の隣に先生は座りそう言う。
顔をペストマスクで隠し、翼をマントで隠す。
そして角を黒い帽子で隠した状態だ。
無論。俺もその状態だが。これも魔物にバレないためだ。
仕方がない。
「何故、私の名を…?」
魔物が獣のような目をしょぼしょぼさせて言う。
そんな魔物に俺は少し驚いて先生の翼を掴んでしまった。
先生がこちらを睨みつけてため息をつく。
「フー…私は上級魔族のサタンです。」
「隣は同じく上級魔族のソロモン。」
先生が俺の背中を強く叩く。
「あ…。よ、よろしくお願いしますぅ!!」
あたふたしながら言うと
メアリーがお辞儀をした。
「上級魔族でしたの…私は中級魔族ですわ。」
「治療をしてくれたということは、お医者様でして?」
メアリーが問う。医者ということでバレるのではないかと
冷や汗を流す俺に先生が答えた。
「そうです。私は悪魔の執刀医。」
俺も急いで答える。
「俺は先生の助手です。」
俺と先生の言葉にメアリーは驚いた顔で言った。
「執刀医でしたの!悪魔の医師なんて初めて見ましたわ!」
メアリーが紺色の翼をバサバサと広げる。
「悪魔の医師なんて大層珍しいでしょう。」
「私ら三柱は上級魔族三大医師ですのでね。」
「えっ三?」
メアリーと俺が後ろを見る。
すると後ろには、とんでもない生き物がいた。
「お呼びですか兄上。」
馬の毛皮を肩まで被り
下半身はカエルの魔物の皮を履いている。
化け物としか思えぬサーフィーである。
俺もサーフィーだと気づくのに時間がかかった。
「まぁ、お美しいこと!」
メアリーが言う。俺は『こいつのどこが?』と
正直思ったが口をふさいでおこう。
先生はというとマスクの下で怖い顔をしている。
「そう言っていただき光栄です〜。」
「兄上、ご用事は?」
サーフィーが毛皮の下でニヤリと笑う。
先生はサーフィーに舌打ちをし、
次のように言った。
「メアリー様に診察書を見せてやりなさい。」
「はい。」
サーフィーが診察書を胸元から取り出す。
診察書を確認すべく
俺がすぐにサーフィーの元に寄り、診察書を見た。
すると…
【メアリーローズ(1450)】
子宮内胎児死亡。
と書かれていた。
そう。全くの誤診だ。
魔物も信じ込まないだろうと思い魔物の腹を見たら
それまた仰天してしまった。
(胎児が…居ない?!)
膨らんでいた腹が凹んでいる。
何事だと先生に駆け寄ると小声で先生が言った。
「ささっと取り出して人口子宮に入れた。」
「はぁ…そういうことでしたか…」
はぁ…と安心のため息をつく。
そんな俺に先生が何かを渡してきた。
(なんだろ…って、え?)
それを見て呆然とした。
何故ならそれは上級魔族の印鑑なのだから。
「メアリーさん。辛いとは思いますが、どうか生きて。」
先生が隠すように言う。
メアリーは泣きながらも『はい…』と言った。
「兄上も頑張りましたが手遅れでして。申し訳ない。」
サーフィーが頭を下げる。
俺と先生も深く頭を下げた。
俺は「騙してすみません」の意味
先生は「嘘ついて申し訳ない」の意味
サーフィー「奪ってごめん」という意味で、だ。
「頭を上げて。頑張ってくれたんでしょう。」
「…私はいつここを出られるのかしら?」
メアリーが言う。
すると先生が言った。
「今すぐにでも出られますよ。」
「なら…失礼しますわ……………。」
メアリーが逃げるようにここを出た。
俺はメアリーを見守り、マスクを外す。
「罪悪感の塊ですよ。」
俺がそう言うと先生が答える。
「これ以上魔族は増やせぬ。」
「これ以上増えたら俺らが暮らせないだろ。」
先生が服を脱ぎ捨てる。
俺もそれに比例して服を脱ぎ捨てた。
「結局、胎児は育てるの?兄ちゃん。」
サーフィーも馬の皮を脱ぎ捨て、言う。
「兄上と言え。胎児は育てる。」
「へぇ〜意外。兄上とは言わないけど。」
「えっ、先生育てるんですか?!」
「当たり前だ。連れて行くぞ。」
「ええぇ、マジすか。」
「マジだ。」
「そうですか…てかこの印鑑って何に使えば?」
俺が手元の印鑑を手に取り言う。
すると先生が紙とペンを出し言った。
「今から契約書を書く。」