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## 第50話:『仮面の下の真実』
吹き荒れる砂嵐の音が、遠くでかすかに響いている。
相打ちに近い衝撃で倒れ伏したウイングエックス・ディバイダーとアルカディア。双方のジェネレーターが沈黙し、冷却の蒸気が荒野の地表に白く漂う中、ゼロは歪んだハッチをこじ開けて外へと飛び降りた。
過負荷に達したゼロ・システム緩和装置のせいで、頭の奥はまだ酷く痛む。だが、それ以上にゼロを突き動かしていたのは、目の前の敵に対する執念だった。
「おい……! 生きてんだろ、出てきやがれ!」
ゼロが砂を蹴って叫ぶと、同じく右肩から激しく放電しているアルカディアの、神秘的なエメラルドグリーンのハッチがゆっくりと開いた。
中にいたパイロットが、機体からワイヤーを使わずにしなやかに地面へと着地する。その顔には、目元を覆う金属製の冷たい仮面が装着されていた。しかし、体つきはゼロとそう変わらない、一人の若い男だった。
「……やはり、お前だったのだな、ゼロ」
「あぁ? その声……やっぱり俺を知ってやがるな。お前は一体何者だ。なんで俺の過去や、リメイン・ヴィレッジのことを知ってやがる」
ゼロは険しい表情のまま、男を睨みつけた。以前のゼロであれば、ここで逆上して掴みかかっていたかもしれない。だが、ゼストの仲間たちと死線を潜り抜け、セレスやジュードたちの意志を背負ってきた今のゼロは、生意気な口調の中にも、どこか冷静に相手を見極めようとする成長の兆しを滲ませていた。
仮面の男は静かに息を吐くと、自らの顔に手をかけ、躊躇いなくその仮面を外した。
現れたその素顔を見た瞬間、ゼロの身体が、まるで落雷を受けたかのように激しく硬直した。
「……う、嘘だろ……。お前、アルヴィス……なのか……!?」
ゼロの口から、驚愕のあまり掠れた声が漏れる。
アルヴィス。それは、ゼロがリメイン・ヴィレッジでしがないヴァルチャーの真似事をしていた頃、共に荒野を駆け巡り、明日のメシのためにジャンクを漁っていた、紛れもないかつての相棒だった。
「久しぶりだな、ゼロ。リメイン・ヴィレッジを飛び出し、ガンダムのパイロットになったという噂は聞いていたが……まさか、これほど私を追い詰めるとは思わなかった」
「なんで……なんでお前がそんな凄えモビルスーツに乗って、俺たちの前に現れるんだよ! 生きてたなら、なんで村に戻らなかった! 村は……あの一帯は、今だってまだ残ってんだぞ!」
ゼロの言葉に、アルヴィスは悲しげに、しかし毅然とした瞳を向けた。
「戻れなかったのさ。私はあの日、村の近くの遺跡でルカス軍の極秘部隊に捕らえられ、彼らのパイロットとして強制的に従事させられていた。……だが、私はそこで知ってしまったんだ。ルカスという男の『真実』を。そして、お前が乗るあのウイングエックスが、どれほど危険な存在かということをな」
「危険な存在……? サテライトシステムなら、もう回路を遮断して封印した! ガドルフのじいさんと一緒に、人間の力に変えたんだ!」
「システムの話だけではない。私がゼストを、お前たちを襲ったのは、お前たちをルカス軍の目から遠ざけ、この戦いから強制的に引き離すためだった。あの陸上戦艦とガンダムがこれ以上進めば、本当の破滅が訪れるからだ」
アルヴィスは一歩、ゼロに近づき、声を潜めて語り始めた。
「ゼロ、お前たちはルカスが『世界調律計画』の首謀者であり、大陸全土を焼き払おうとしている最大の悪だと思っているだろう。……だが、それは違う。ルカスは、あくまでここら一帯を牛耳っている地方軍隊の長に過ぎない」
「何だと……!? じゃあ、あのノアを調整して、ノワールレイスで世界を管理しようとしてたのは何なんだよ!」
「あれは……目眩ましだ。本当に『世界調律計画』という狂気を遂行し、大陸の裏側からすべてを操っているのは、連邦のさらに上層部にいる『別の偉い人物たち』だ。ルカスは、その本当の黒幕たちの存在や、計画の真の恐怖を周囲に気づかせないために、あえて自分がすべての悪を背負い、自らの意志で計画を遂行しているように見せかけているらしい」
アルヴィスの口から語られるあまりにも衝撃的な事実に、ゼロは言葉を失った。ルカスという絶対的な壁の向こうに、さらに巨大で、冷徹な「本当の悪」が潜んでいるというのか。
「ルカスは……あの冷徹な男は、歪んだやり方ではあるが、彼なりの方法で黒幕たちの暴走をコントロールしようとしている。あるいは、すべてのヘイトを自分に集め、計画そのものを自分の手の中で完結させようとしているのかもしれない。だが、お前たちがルカスをただの悪として討てば、均衡は崩れ、本当の黒幕たちが表に出てくることになる。だから私は、お前たちを止めたかった……私の愛機、アルカディアの力で」
沈黙が荒野を支配する。
ゼロは拳を強く握りしめ、地面を見つめた。アルヴィスの話が本当なら、自分たちが今まで戦ってきた意味、そしてこれから向かおうとしている第1拠点の意味すらも変わってくる。
だが、ゼロの瞳から光は消えなかった。ゆっくりと顔を上げたゼロは、かつての相棒に向かって、不敵に、そして力強く言い放った。
「……そっかよ。相変わらずお前は、一人で色んなもんを背負い込んで、大人の事情ってやつに振り回されてんだな、アルヴィス」
「ゼロ……?」
「教えてくれてありがとよ。でもな、だったらなおさら、俺たちは止まるわけにはいかねえんだ。ルカスが何考えてようが、その裏にどんな偉い奴がいようが関係ねえ。現にルカスの部隊のせいで、たくさんの奴らが傷ついて、ノアみたいな悲しいパイロットが生まれてんだよ。目の前で泣いてる奴らを放っておいて、裏の黒幕がどうのなんて言ってられるかよ!」
ゼロの言葉には、確かな一本の芯が通っていた。かつてのように、ただ感情に任せて吠えているのではない。守るべき仲間を知った少年の、本当の強さがそこにあった。
「本当の悪が別にいるなら、ルカスの拠点をぶっ潰した後に、その偉い奴らもまとめて俺たちが叩き潰してやる。……アルヴィス、お前もルカスに利用されるのはもう終わりだ。俺と一緒に来い。お前のその『アルカディア』の力、本当の未来を作るために使ってくれよ」
ゼロが差し出した右手を、アルヴィスは見つめた。その瞳に、かつて共に荒野を駆けていた頃の、懐かしい信頼の光が微かに灯る。
「……変わったな、ゼロ。お前がそこまでの覚悟を持っているというのなら……私も、これ以上の無駄な抵抗はやめよう」
その時、遠くからセレスのヴィヴァーチェが駆動音を立てて近づいてくるのが見えた。
引き裂かれていた二人の記憶が今、再び一つに繋がり、ルカス軍の第1拠点『ヘリオス』を揺るがす、新たなる反撃の風が吹き始めようとしていた。
**次回予告**
かつての相棒アルヴィスとの、衝撃の再会と和解。
ゼスト一行は、ゼロの過去の原点であり、今なお残る故郷『リメイン・ヴィレッジ』へと足を踏み入れる。
懐かしい土の匂いの中、老人たちの口から語られる、ウイングエックスが村の遺跡に隠されていた本当の理由とは?
そして、ジュードのシャドウエッジも復活の時を迎える!
次回、『始まりの荒野』
**「待ってろよ、ルカス。俺たちの本当の戦いは、ここから始まるんだ!!」**
コメント
1件
わあああ第50話おめでとうございます!!🎉✨ ゼロの成長がもう本当にエモすぎて泣けるんだけど…!!!😭💕 昔の相棒アルヴィスがまさかの敵として登場→仮面の下の素顔に「嘘だろ…!」ってなる展開、めっちゃアツすぎて声出たよ…!しかも「ルカスは本当の悪じゃない」っていう新事実、世界観どんどん深まってるじゃん!🔥 それでも「目の前で泣いてる奴らを放っておけない」って言い切るゼロ、推せる…!次回、リメイン・ヴィレッジ編も楽しみすぎる〜!!⋆♡