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桜春遥朔🌸
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## 第51話:『始まりの荒野』
相打ちに近い激闘を繰り広げた、白銀の『ウイングエックス・ディバイダー』と、エメラルドグリーンに輝く美しき海賊機『アルカディア』。両機はゼストの大型クレーンによって慎重に吊り上げられ、陸上戦艦の格納庫へと収容された。
ハッチが閉まり、激しい外の砂嵐が遮断された格納庫内。
そこには、かつて死闘を繰り広げた二つのガンダムが、まるで長年の戦友であるかのように静かに肩を並べて並んでいた。
ハモニカ砲の衝撃で一部のシャッターが歪んだウイングエックスと、ハモニカ砲の赤紫の閃光によって左半身を激しく焼き焦がしたアルカディア。傷跡が生々しい二機の巨体は、激動の運命を経て再び交錯したゼロとアルヴィスの絆そのものを体現しているようだった。
「……信じられないわね。さっきまであれだけ殺し合っていた相手と、まさか同じ船に乗ることになるなんて」
キャットウォークから二機を見上げていたセレスが、呆れたように、しかしどこか安堵したように息を吐く。その隣では、ミラが少し緊張した面持ちで、ゼロの後ろを歩くアルヴィスの姿を見つめていた。
ゼストの艦長室。レフト艦長をはじめ、カイル、ジュード、セレス、ミラ、そしてノアが集まる中、ゼロに促されるようにしてアルヴィスが中央に進み出た。
「皆に、多大な損害を与えたことを改めて謝罪する。……私はアルヴィス。先ほどゼロにも話したが、これよりルカス軍の第1拠点『ヘリオス』を破壊するまでの間、一時的にこのゼストに行動を共にさせてもらう」
アルヴィスの丁寧で落ち着いた挨拶に、カイルが腕を組んで頷いた。
「ルカスの裏にいる『黒幕』の話、そしてルカス自身がすべてのヘイトを背負うために道化を演じているという推測……にわかには信じがたいが、お前のあの技量とアルカディアの戦闘力を見れば、ルカス軍の内部にいたという言葉に嘘はないと分かる。歓迎するよ、アルヴィス」
「助かる、カイル。だが……」
アルヴィスは一度言葉を区切ると、隣に立つゼロ、そしてレフト艦長へと真っ直ぐな視線を向けた。
「勘違いしないでほしい。私はあくまで、ルカスが引き起こそうとしている歪んだ『調律』の暴走と、その裏の黒幕たちの計画を阻止するために、利害が一致したからここにいるに過ぎない。……私は今の間だけ、この第1ポイントを破壊するという任務が終わったら、この船を降りる。私は私のやり方で、世界の裏に潜む悪を追わねえければならないからな」
「へっ、相変わらずお堅いねえ、アルヴィス。ま、今の間だけでもお前のあのクソ硬いアルカディアが味方になってくれるなら、これ以上心強いことはねえよ」
ゼロはニカッと生意気に笑い、アルヴィスの肩を小突いた。その姿は、かつてリメイン・ヴィレッジで明日のメシのためにジャンクを漁っていた頃の、悪ガキ二人の距離感そのものだった。
「……フン、勝手にしなさいよ。任務が終わったらすぐに降りるなんて、お高いプライドね。でも、戦力としては数えてあげるわ」
セレスがフイと顔を背ける。
「ノワールレイスとは違う、別の漆黒の機体……。そいつがメトロポリスにいたってことは、黒幕たちの手はもうそこまで伸びてるってことね……」
ノアがボソリと呟いた言葉に、アルヴィスは静かに目を細めた。
「ああ。時間はない。レフト艦長、まずはゼロの故郷へ進路を」
「分かっている。ゼスト、全速でリメイン・ヴィレッジへ向かう」
数時間後。ゼストのブリッジのモニターに、不毛な荒野のあちこちに突き出た、巨大な大戦時のジャンクパーツで囲まれた小さな集落が映し出された。
ゼロの原点であり、今なお力強く荒野に根を張る故郷、『リメイン・ヴィレッジ』。
超大型の陸上戦艦が砂煙を上げて村の境界に停止すると、村のあちこちから、錆びついたライフルやジャンクの工具を手にしたヴァルチャーたちや、怯えた表情の老人たちが一斉に姿を現した。ルカス軍の襲撃か、あるいは凶悪な盗賊団の襲来か。村全体が極限の緊張感に包まれる中、ゼストの主タラップがゆっくりと地面へと下りていく。
その先端から、最初の一歩を踏み出したのはゼロだった。
「よぉ、みんな! 久しぶりじゃねえか!」
「……え? ぜ、ゼロ……!? ゼロなのか!?」
ジャンクの装甲車の上にいた若いヴァルチャーが、驚きのあまりライフルを取り落としそうになる。
「お前、あのガンダムって化け物に乗って村を飛び出したきり、死んだって噂が――」
村の人々がどよめき、ゼロの生還に歓声が上がりかけたその時。ゼロのすぐ後ろから、エメラルドグリーンのパイロットスーツを着た男が静かに姿を現した。
「皆、息災だったか」
その声が響いた瞬間、リメイン・ヴィレッジの時間が、文字通り完全に凍りついた。
老人たちは目を見開き、かつての仲間たちは息を呑み、誰もが信じられないものを見るかのような、凄まじい衝撃に打たれていた。
「あ……アル、ヴィス……?」
「馬鹿な……! お前はあの日、東の遺跡でルカス軍に消されたはずじゃ……!」
「ああ、死にかけたのは事実だ。だが、私はこうして生きている。ゼロと共に、な」
アルヴィスが静かに告げると、村中がひっくり返るほどの騒ぎになった。あの日、村で最も優秀なヴァルチャーでありながら、理不尽な軍の暴力によって奪われたと誰もが諦めていた天才少年の帰還。そして、同じく村を飛び出してガンダムの乗り手となったトラブルメーカーの帰還。荒野の小さな村にとって、それは奇跡以上の衝撃だった。
「本当に……本当にお前たちなのか……」
村の長老である老人が、杖を震わせながら二人の元へと歩み寄ってくる。
「ああ、じいさん。ただいま。……色々と話したいことがあるんだ。特に、あの東の遺跡のこと、それから俺が乗ってたウイングエックスが、なんでこの村の地下に隠されてたのか……その本当の理由を、教えてくれよ」
ゼロの真剣な眼差しに、老長老は深く、深く溜め息をつき、ゆっくりと頷いた。
「……やはり、その時が来てしまったか。お前たちがそれを知る覚悟があるのなら、すべてを話そう。あのガンダムが、このリメイン・ヴィレッジに眠っていた本当の意味をな」
その頃、ゼストの格納庫では、リンを中心とした整備班が、アルカディアとウイングエックス・ディバイダーの急速補修に追われていた。
そして、隣のドックでは、ガドルフの工房で応急処置を済ませていたジュードの『シャドウエッジ』の、最終調整が行われていた。
「よし、左腕の駆動フレーム、マッチング完了! 光学迷彩の発生器も、出力を80%まで戻したわ!」
リンが汗を拭いながら叫ぶ。
『へへ、ありがとよ、リンちゃん。やっぱり自分の腕が繋がると、落ち着くねえ』
シャドウエッジのコクピットから、ジュードが新しくなった左腕を滑らかに動かしてみせる。
「ジュード、無理はしないでね。アルヴィスが一時的に入ったとはいえ、あいつは第1拠点を壊したら降りるって言ってるんだから。次の戦い、あなたのシャドウエッジの援護が絶対に不可欠になるわ」
格納庫の隅で、セレスが腕を組んでジュードを見上げていた。
『分かってるさ、エース様。新入りの故郷の因縁に、新しい海賊の仲間、おまけにルカス軍の巨大基地のぶっ壊しだ。脇役が寝込んでる暇なんてねえよ。……さあ、ゼロたちが過去の精算を終わらせて戻ってくるまでに、このシャドウエッジを100%の戦闘状態に戻してやるぜ!』
復活の時を迎える漆黒の隠密機。
そして、村の古びた集会場の奥で、長老の口から、ゼロとアルヴィスの運命を根底から覆すような、旧大戦の恐るべき真実が語られようとしていた。
**次回予告**
長老の口から語られる、リメイン・ヴィレッジの血塗られた過去。
ウイングエックスがこの地に隠されていたのは、偶然ではなく、ある過酷な『使命』のためだった!
明かされる真実に、ゼロとアルヴィスの心が激しく揺れ動く中、ジュードのシャドウエッジが完全復活を遂げる!
そして、アルカディアを加えた最強の布陣で、ついにルカス軍の第1拠点『ヘリオス』への進軍が始まる!
次回、『引き裂かれた記憶』
**「どんな過去があろうと関係ねえ! 俺たちの翼は、今、目の前の命を守るためにあるんだ!!」**
コメント
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第51話、読み終わりました。先の激闘から一転して静かな再会の場面、ほっとする反面、長老から語られる「血塗られた過去」への伏線がゾクゾクしました。何より、ゼロが故郷でアルヴィスと並んで立つ姿――あの親友同士みたいに肩を叩き合う距離感が、昔の悪ガキ時代そのままで胸が熱くなりました。次の「引き裂かれた記憶」、すごく気になります…!