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「おはよう、今日は何を食べる?」
太輔は鳩子に向かって言った。
「うーん、今日もパンを食べるわ。」
ニコニコしながら鳩子は太輔にそう言葉を返した。
今日鳩子は人の姿をしている。
何故かと言うとこんな事があった。
「太輔殿、人化の術を私に手解きして頂けませんか?」
突然鳩子が言い始めたのだ。
それは太輔が鳩子を人の姿に変化させてからというもの、
鳩子は人に化ける事に興味を持ち、
化ける事を楽しみ始めたのである。
ただ鳩子自身にはそのようなちからはまだ無い。
だから、太輔のちからを借りつつ
時折、人の姿になっては太輔と朝の一時を楽しんでいる。
「今日は言霊が上手くいったわ」
「すごく良い日になりそうよ」
それから太輔は鳩子にこう伝えた。
「元々言霊を受けやすい体質みたいだから少しずつ練習してみたらどうかな?」
言霊とは太輔が以前、
鳩子を人の姿に変えた時にボソボソと唱えていた言葉の事である。
言霊は自身が起こしたい事を念じ、
念をかけたい対象に言葉を掛けると
それは発現する。
ただ能力の無い者がむやみに唱えても意味は無く、自身に悪い影響を及ぼす時もある。
だが、太輔は陰陽師の家系の事もあり
ある程度の言霊は口にしなくても
念ずるだけで使えてしまう。
そんなこんなで毎日修行らしい事をしていると割と効力があるらしく、
鳩子の意思で化ける事が少しずつ出来るようになってきていた。
そんなある日、1通の手紙を鳩子が持ってきた。
だが、少し様子が変なので
「どうした鳩子?今日は化ける練習はしないのかい?」
と聞いても化ける様子も無く
ただただ首を横に降っているのである。
「その手紙はどうしたんだい?」
と不思議に思った太輔は
手紙を開けてみたのだった。
そこにはこう書かれていた。
(ニゲラレナイ マッテイテ)
(スグ イクワ)
「もしかして陰の者の仕業か?」
太輔は嫌な予感を覚えた。