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俺の“好き”が聞こえない君へ
楽屋の中、いつも通りの賑やかさ。
打ち合わせが終わって、メンバーたちは思い思いにくつろいでいた。
「翔太、これ食べる?」
「えっ、食べる。さんきゅ」
嬉しそうに笑って、無邪気におにぎりを受け取る翔太を、涼太は何気ないふりで見つめる。
(その笑顔、俺だけに向けてくれたらいいのに)
そんなこと、思ってしまう自分が嫌だった。
翔太はみんなに優しい。誰にでも笑いかけるし、ちょっとした気配りも自然にできる。
そんなところが魅力で、だからこそ、ファンにもメンバーにも愛されてる。
でも――
(俺にだけ、特別なんて、ないよな)
ふと視線が合う。翔太がにこっと笑って、近づいてくる。
「涼太!明日さ、あの撮影の入り時間ちょい早くなったってマネさん言ってたよ」
「ああ、聞いた。ありがと」
(それだけのことなのに、嬉しいって思ってる俺、どうかしてる)
ほんの些細なやりとりに、一喜一憂してしまう。
言えるわけがない。
“好きだ”なんて。
同じグループで、これからもずっと一緒にやっていく相手に。
言ったらきっと、全部壊れる。
今の関係も、翔太の無邪気な笑顔も、見られなくなる。
「……なんでもない」
「ん?なんか言った?」
「いや、なんでも」
そんなふうにごまかすことにも、もう慣れてしまった。
(ずっと隣にいるのに、距離は縮まらない)
苦しくて、愛しくて、それでも目を逸らせない。
片想いの痛みを抱えたまま、今日もまた、涼太はステージに立つ。
―――――――――
「再会が始まりだった」
あの頃の記憶は、曖昧で、でも鮮やかだ。
地元の公園で、一緒に遊んだ男の子。
誰よりも元気で、よく笑って、でも泣き虫だった。
「涼太、いっつも優しいんだよな~」
そんな風にくしゃっと笑っていた声も、表情も、心のどこかに残っていた。
けれど、いつの間にか会わなくなって――
時が経って、涼太はジャニーズのオーディションを受けた。
あの日も、いつも通りに緊張していて、
周りの人間すべてが“ライバル”に見えていた。
……なのに。
「……え?」
見慣れた後ろ姿が、数年の時を越えて、目の前にあった。
「……翔太?」
その名前を呼んだ瞬間、彼が振り返った。
目を大きく見開いて俺が『宮舘涼太』である事に間違いなく気が付いた。
ただその雰囲気は少し変わってしまったいた。
ツンとした表情。
「ブレスレット。危ないから」
俺に向かって放たれたのはたった一言。
その時の俺は意味も分からずブレスレットを外したが今になって思えば反抗期真っ盛りの翔太なりの優しさだったんだと思う。
その後ダンススクールへ通うようになりなんとなく話もするようになった。
「へえ、涼太もジャニーズ志望なんだ。なんか……意外」
「翔太こそ、全然変わってないね」
「そりゃあどうも」
会話はぎこちなくて、どこか壁を感じた。
昔みたいに、いきなり打ち解ける……そんな簡単な話じゃなかった。
けど、同じレッスンで汗を流し、ステージに立ち、
少しずつ積み上がる時間の中で、翔太の態度も変わっていった。
「涼太、ダンスのとこちょっとズレてた。ほら、ここ」
「え、本当だ。教えてくれてありがとう」」
「うっ、うるさいな、見てらんないだけ」
言いながらも、ちゃんと隣で合わせてくれる。
ツンとしながらも、どこか気にかけてくれてるのが伝わって、
気づいたときには、涼太の中で“翔太”は特別になっていた。
――そしてある日、収録後の帰り道。
俺は昨日起こった出来事を翔太に雑談がてら話していた。
「……なあ翔太」
「んー?なに?」
「俺さ……チワワのおばけ、見た」
「……は?」
唐突すぎて、翔太は素で固まった。
「……マジで。夜の公園で、白くて、ふわっとしてて、チワワの形してた。……鳴いてた」
「プッ」
「え?」
「あはははは!!それただの犬でしょ」
翔太は今までのそっけない顔が一気に崩壊し顔をクシャっとさせながら笑った。
――――『笑った』
そんなささいな事が俺にはすごく嬉しくて…仕方がなかった。
「いや、おばけだった。足、地面についてなかったし」
「……あんたほんと、たまにわけわかんないこと言うよな」
翔太の笑う顔が、もっと見たい。。
ほんとにチワワのおばけを見たのかどうかなんて、もうどっちでもよかった。
ただ――
「そういうとこ、昔から変わんないなって思った」
「なにが?」
「涼太のそういうとこ」
そう呟いた翔太の声は、小さくて優しくて、
その一言が、胸の奥にずっと残った。
ダンスレッスンやボイストレーニング。
過酷な日々は続いた。
そして一緒に活動することになって――
「Snow Man」という名前の下で同じ夢を追うようになって、気づいたんだ。
(俺、翔太のこと……好きになってる)
最初は、懐かしいだけだと思った。
でも、同じステージに立って、隣で笑って、悔しさや喜びを共有するうちに、
翔太の言葉一つ、表情一つが、自分の中でどんどん大きくなっていった。
「涼太、今日俺のパフォーマンス何点だった?」
そんなストイックな言い方も、真剣に向き合う目も、全部。
ただの“幼馴染”なんかじゃなくなっていた。
(ずるいよ、翔太は。昔から――)
気づいた時にはもう、目が離せなくなっていた。
―――――――――――――
「なあ、だてさん」
リハーサル終わりの廊下で、いきなり康二に呼び止められた。
「……なに」
「最近さ、しょっぴーのこと見る目ぇ、優しすぎん?」
「……は?」
「いやいや、もうさ、あんなんバレバレやで。俺じゃなくても気づくって」
「……何が言いたいの?康二」
康二はニヤニヤしながらも、目だけは本気だった。
「なあ、好きなん? しょっぴーのこと」
その一言で、涼太の足が止まった。
「…………」
否定しようとして、できなかった。
ごまかす言葉も、出てこなかった。
「……わかる?」
思わず白旗をあげる。
これだから末っ子は油断ならない。
「そらもう、わかるやろ。ずーっと見てるし。しょっぴーが近づいたら目ぇ細めるし、話しかけられたらちょっと声、柔らかなるし。わかりやすすぎんねん」
俺は溜息をひとつついた。
「まあ、俺ぐらいっしょ。しょっぴーは全然気づいてへん。鈍感にもほどがあるで」
「それな……」
思わずこぼれた言葉に、康二がくくっと笑う。
「で、どないすんの?このままずっと片想い?」
「わかんない。……壊したくない、ってのが正直なとこ」
「壊れへんかもしれへんやん。しょっぴー、変なとこで優しいし。ていうか、案外……」
「それ以上言わなくていい。期待したくない」
康二が言いかけた言葉を、そっと遮った。
優しい言葉ほど、今は痛い。
「……俺、別に恋愛しにこの世界入ったわけじゃないし。グループとして、ずっと一緒にいたいから」
「でも、“好き”って思っちゃうやん?」
「……そうなんだよな」
静かに、そう呟いた。
それが誰かに初めて言った“好き”だった。
思っていたより、口に出すのは苦しくて、でも少しだけ楽になった。
康二は、何も言わずに肩を軽く叩いた。
「ま、いつでも聞くで。俺、味方やから」
「……ありがと、康二」
その背中に向かって、涼太は静かに礼を言った。
―――――――――――
夜、レッスン後のスタジオ。
みんなが帰っていって、俺は一人で鏡を見ながら反省会。
(また……今日も、俺だけ勘違いしてたのかもしれない)
リハ中、翔太が何気なく「涼太って頼りになるな。さんきゅ」って笑いかけてきた。
その笑顔が嬉しくて、喉の奥がじんと熱くなるほどだったのに。
楽屋に戻れば、翔太はまったく同じトーンで照にも、目黒にも笑ってた。
(なんで……俺だけに言ってるわけじゃないって、知ってるはずなのに)
分かってる。翔太は昔から、そういうやつだ。
気配り上手で、誰にでも優しい。しかも意外と兄貴肌で面倒見もいい。
でも、その優しさが一番つらい。
「涼太、今日ダンス教えて」
「今日の髪型、なんか似合ってる」
そんな些細な言葉に、何度期待したかわからない。
だけど――
「えっ、そう? 俺、ふつうに褒めただけだけど」
ある日ぽろっと本音をこぼしかけたとき、翔太はきょとんとした顔でそう返してきた。
(……そうだよな。俺だけ、勘違いしてるんだ)
ほんの少しでも“もしかして”なんて期待した自分がバカみたいで、
そのたびに、自分の気持ちを無理やり押し込める。
「涼太は変なとこで真面目なんだよなー。そういうとこ…好きだけど」
(嘘なのか本気なのか、分からなくなる……)
思いが届かないどころか、からかわれてるようにすら感じるときもある。
でも、翔太は悪気なんてまったくなくて、無邪気で。
だからこそ、たちが悪い。
この気持ちがバレるくらいなら――
冗談で済ませて、笑ってくれてる今のままでいい。
そう思うくせに、
翔太の一言一言に、今日もまた、振り回されてる自分がいる。
――――――――
そんなある日のレッスン後。
皆がわちゃわちゃしている中、涼太はひとり、スタジオの隅でストレッチをしていた。
「舘さん。大丈夫?」」
不意に声をかけてきたのは照だった。
軽い調子で隣に腰を下ろす。
「……ちょっと疲れてるかも」
「ふーん。…それだけ?」
その一言に、涼太は思わず息をのんだ。
「……なにか言いたい事が?」
「俺さ、ずっと康二だけが気づいてると思ってた」
そう言って、照は涼太の横顔をじっと見つめる。
「舘さん、最近ずっと無理してる。笑い方とか、翔太との距離とか、見てて分かるよ」
「…………」
「分かりやすすぎるんだよ、舘さんは。翔太にだけ、目が甘い」
「……」
照は微笑んだ。
「好きなんでしょ、翔太のこと」
俺は何も答えられなかった。
けれど、その沈黙がすべてを物語っていた。
「康二から聞いたとかじゃない。俺が見てて、そう思っただけ。……だから、否定しなくてもいいよ」
(康二だけじゃ、なかったんだ)
心の奥で張っていた糸が、静かにほどけた気がした。
「……あいつ、ほんと鈍感なんだよ」
「だよね。あれで気づいてたら、逆に詐欺だよ」
照のその言い方が、なぜか優しくて、
涼太は、ふと息を吐いた。
「……俺さ、これ以上期待して、勝手に落ち込むの……疲れた」
「うん。知ってるよ」
「どうすればいいか、わかんねぇんだよ」
「無理して笑わなくていいよ。俺と康二くらいにはさ、ちゃんと見せて。舘さんのそういうとこ」
沈黙が落ちた。
けどそれは、苦しいものじゃなかった。
誰かに分かってもらえるって、こんなに――安心するものなんだな。
―――――――――
何がきっかけだったかは、もう分からない。
でも、たぶん――
「ラウールはほんと優しいなぁ」
って、翔太が何気なくラウールに言ったあの瞬間。
その声を聞いたとき、涼太の中で何かが“ぷつん”と切れた。
(俺だけじゃなくて、誰にでも優しい。それが翔太だって、もう何回も思い知らされてきたはずなのに)
分かってるのに、何度も期待して、何度も勝手に落ち込んで。
そんな自分に疲れ果てて、涼太は、ようやく決めた。
――もう、距離を置こう。
このままだと、壊れるのはきっと自分のほうだ。
次の日から、俺は“そっけなさ”を意識した。
翔太にだけ、目を合わせないようにして、会話も必要最低限にした。
「涼太~今日一緒に帰……」
「悪い。用あるから」
「あ、そっか……」
「じゃあ」
言い終わる前に、涼太は背を向けてスタジオを出ていった。
振り返らなかったけど、背中に刺さるような沈黙があった。
________________________________________
数日後、楽屋。
「涼太、髪……切った?」
翔太の声に、涼太は一瞬だけ目を上げる。
でもすぐに視線を外して、そっけなく答えた。
「ああ、まあ」
「……似合ってる」
「……ありがと」
たったそれだけ。
本当は嬉しいはずの言葉も、今は受け取らないようにしていた。
ふと視界の端で、翔太が少し寂しそうに笑ってるのが見えた。
(そんな顔すんなよ……)
心のどこかがぎゅっと痛んだけど、涼太はそっちを見ないようにした。
その日の帰り道。
エレベーターで二人きりになったとき、翔太がぽつりと呟いた。
「……最近さ、涼太俺に冷たくない?」
「……そう?」
「うん。なんか、俺、なにかした?」
その問いに、涼太は言葉を返せなかった。
(翔太は、なにもしてない。……してないから、余計に、きついんだよ)
けど、それを口にしたら全部壊れてしまいそうで、
涼太はただ、首を横に振った。
「別に。何もないよ」
「……うん」
翔太の声が、ひどく小さくて、
それを聞いた涼太の胸は、またひとつ苦しくなった。
――でも今は、距離を置くしかなかった。
自分の気持ちを守るために。
だけどそれは、
翔太を――誰よりも傷つける方法でもあった。
――――――――――
Side翔太
幼い頃、地元の祭りの帰り道。
人混みに紛れて泣きそうになった翔太の手を、涼太が何も言わずに引いてくれたのを、今でも覚えている。
「しょーた、迷ったらちゃんと声出してね」
「……だって、恥ずかしかったんだもん」
「しょーた。俺が気づきたいの、しょーたのピンチ」
そのくせ、ぐしゃぐしゃの頭をくしゃって撫でてくれたあの手は、ずっとあったかかった。
あれから十年以上――
気づけば俺たちは、Snow Manというグループの中で、同じ時間を過ごしてる。
だけど、あの頃と違って、
「涼太」って呼ぶようになったし、
ふざけてばかりの俺に、涼太はちょっと呆れた顔をするようになった。
それでも、安心するんだ。
ステージ前に目が合えば、心が落ち着くし。
ふとしたときにくれる「大丈夫?翔太」の一言に、背筋が伸びる。
(涼太は、俺の特別だったんだよ)
それは、ずっと変わらない。
だけど――
最近、何かが変わった。
目を合わせてくれない。
笑ってくれない。
話しかけても、必要最低限の言葉だけ。
(なんでだよ)
この間なんて、帰り道一緒だったのに「先に帰る」って、一言だけ残して背中を向けられた。
(俺、なにかしたか?)
何度も考えるけど、思い当たることがない。
ただ、距離が空いていくことだけは、痛いほど分かる。
俺たちは、もっと近かったはずだ。
“幼馴染”なんて言葉じゃ足りないくらいに。
(もしかして……俺だけ、ずっと子供のままだったのかな)
涼太は、もうとっくに、何かを抱えながら前に進んでたのに。
俺は、隣にいるのが当たり前だと思ってた。
笑ってくれるのが普通だと思ってた。
でも、そうじゃなかったんだ。
(……それでも、気づきたくない)
胸の奥にある、薄くて柔らかい感情。
それが何なのか、本当はもう分かってるのに。
舘さんの手が、もう二度と戻ってこないような気がして――
今さら、怖くて言葉にできない。
撮影終わりの楽屋。
他のメンバーはそれぞれ着替えたり、スマホ見たり、自由に過ごしている中で――
ふっかさんが、ふいに声をかけてきた。
「翔太、ちょっといい?」
「ん? なに?」
「……最近の舘さん、変だと思わない?」
その一言に、翔太の手が止まった。
「……やっぱ、そう見えてた?」
「うん。誰が見ても分かると思うけどね、あれは。……特に、お前なら」
「……」
翔太は口を閉じた。
答えられなかったのは、分かっているくせに、それを認めたくなかったからだ。
「距離置かれてるって、思ってる」
「だろうね」
ふっかさんは優しい口調のまま、けど、視線は真っ直ぐだった。
「で、聞くけど――お前、本当に舘さんのこと、なーんにも気づいてないの?」
「……何を、だよ」
言い返した声が、少しだけ震えた。
ふっかさんはため息をひとつ吐いて、
飲みかけのペットボトルを机に置いた。
「俺らさ、付き合い長いじゃん。もう、表の顔だけじゃ分かんないとこまで、見えてくる」
「うん……」
「で、最近の舘さん。翔太にだけ、明らかに“隠してる”顔してる」
「…………」
「たぶん、苦しいんだよ。ずっと、言えない気持ち、抱えたまま隣にいるって、しんどいじゃん」
その言葉に、心臓がドクンと跳ねた。
「涼太……俺に、なにか……?」
「それを、ちゃんと向き合わなきゃいけないのは――お前だよ、翔太」
ふっかさんの声は、どこまでも静かだった。
「気づいた瞬間、もう遅いってこともあるからさ」
それだけ言って、ふっかさんは立ち上がる。
「今なら、まだ間に合うかもよ」
ポンと俺の肩を軽く叩いて、ふっかはいつもの柔らかい笑みを残して去っていった。
――――――――
なんてものおもいにふけってみても仕事はある。
今日は仕事の質をより高める為の合宿初日。
都内から少し離れた山あいの施設に着くなり、わちゃわちゃが止まらない。
「え、ベッドふかふか!これ絶対康二が爆睡するやつ!」
深澤。
「とりあえず荷物のかたづけ…ってあれ?俺の化粧水しらね?」
目黒
「いや、寝る前にゲームしようや!なあ、しょっぴー、対戦しよ!」
康二
「ちょっ、ラウール!それ俺のカバン!なんで引っ張るの!」
佐久間。
「だって中にお菓子入ってるじゃん!分けてよぉ~!」
ラウール。
「照!バドミントン持ってきたってマジ?」
阿部
「おう、やろうぜ後で。でもまず練習だぞ、練習!」
照
集合早々からテンション高めなメンバーたち。
練習までのわずかな時間も、まるで修学旅行のような騒がしさ。
涼太も笑って輪の中にいるけれど、少しだけ距離を取るようになったその“わずかな違和感”に、気づいているのは翔太だった。
(今日こそ……ちゃんと、話さなきゃ)
もちろん合宿の目的は、ダンスや歌、ユニットごとの強化。
午前も午後も、全員汗だくになって真剣に練習に取り組んだ。
「ふぅ~、さすがに疲れたー!」
「でも今日のラウ、めっちゃキレあったな!」
「え、マジ?めめの褒め言葉レア~!」
和気あいあいとした空気が夜の風に溶けていく中――
俺の視線は、少し離れた場所にいる涼太へ向けられていた。
食後の自由時間、みんなは風呂に行ったり、ストレッチしたりしている頃。
俺は、意を決して涼太の元へと歩いていく。
「……涼太」
涼太がふっと顔を上げる。
久しぶりに名前を呼んだ気がして、翔太の胸が少しだけ痛んだ。
「ちょっと、今夜……話、したい。練習終わって、みんな寝た後とか」
涼太は少し驚いた顔をしたあと、ゆっくりと頷いた。
「……分かった。夜、外のウッドデッキで」
翔太の心臓が、バクン、と大きく鳴った。
(ちゃんと話そう。怖くても、逃げずに)
空には星がにじんで光っている。
その夜は、まだ始まったばかりだった。
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