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Episode 21「試験監督室 後編」
担当員Aが資料をめくる。
「四日目」
「秋月隊員への秘密指令です」
「内容は今日一日課題を一切行わないことでした」
担当員Bが少し笑う。
「きつい指令だな」
「課題をやろうとした所に課題をやるなという指令だ」
「無理がある」
担当員Aが頷く。
「実際、この指令に関しては課題をやってしまった班も少なくなかったです」
「課題をやらなかった班も何かしらの問題が起きていましたし」
「上手くいったのは黒瀬隊と冬島隊だけでした」
担当員Bが聞く。
「冬島隊はどう対処したんだ?」
担当員Aが答える。
「当真隊員に指令を出しましたが」
「当真隊員が『俺は今日課題を出来ない、いいかやらないんじゃない出来ないんだ』と言い」
「他の隊員はそれで納得していました」
担当員Bが苦笑する。
「まあ冬島隊は何度も遠征に出てるしな」
「この手の問題も初めてじゃないんだろう」
「経験の差が出たな」
担当員Aが続ける。
「一方黒瀬隊は」
「秋月隊員が体調不良を申告して寝室に引っ込みました」
「機転が利きましたね」
「残り三人が文句一つ言わずフォローしました」
「課題の遅れもなし」
「夕方、秋月隊員が出てきた時も自然に迎えていました」
「誰も責めない」
「誰も引きずらない」
担当員Bが静かに言う。
「共同生活としてはかなり理想的な動き方だな」
担当員Aが続ける。
「五日目」
「こちらは秘密指令ではなく施設への仕掛けです」
「寝室のドアを施錠しました」
「問い合わせへの返答もわざとはぐらかしました」
担当員Bが聞く。
「結果は?」
担当員Aが答える。
「黒瀬隊員が試験の一環と判断しました」
担当員Bが少し目を見開く。
「よく気づいたな」
担当員Aが続ける。
「問い合わせの返答を見てすぐ気づいていました」
「しかも遠征で実際にこういう状況になった時の対処も意識した発言が出ていました」
「強引に開けようとしなかった」
「壊すリスクを避けてロビーで一夜過ごす判断をしました」
「最終日まで壊さずに対処しましたね」
「黒瀬隊員の観察眼、かなり機能していますね」
「ランク戦での動きを見ても分かりますが、状況判断が速い」
担当員Bが資料を閉じる。
「六日間を通して、大きな衝突なし」
「トラブル発生時の対処が迅速」
「隊としての雰囲気が終始安定していた」
「課題の出来より、そっちの方がよっぽど大事だからな」
担当員Aが続ける。
「長期遠征でも隊内トラブルの可能性は低いと思われます」
「共同生活でも大きな問題は起こしにくいでしょう」
担当員Bが静かに頷いた。
「遠征環境での共同生活にも十分耐えられるだろう」
コメント
1件
第31話、読み終えました。試験監督室のやり取りから浮かび上がる黒瀬隊のチームワーク、本当に素敵だなと思いました。「誰も責めない、誰も引きずらない」——この一文に、彼らの関係性の全てが詰まっている気がします。冬島隊の「出来ないんだ」という言い回しも印象的で、経験値の差がこんな形で出るんだなと興味深かったです。黒瀬隊員がドアの施錠を試験と見抜いた場面は、思わず息をのみました🤍