ホテル、カウベル――まるで小さなお城のような素敵な外観を持つ、地上5階、地下3階建ての王都でも有数の最高級ホテル。
入り口にある牛の紋様が描かれた看板と、大きな噴水が目印の……。
――バリンッ!!
ホテルの3階、そこにある窓が突然大きな音を立てて割れた。
その音と同時、ガラスの破片と共に背中から空へ投げ出されたのは、タキシードを着た大柄な黒髪パーマの男。
勿論、彼の意思で窓ガラスを割って外に出たわけではない。
「くっそ……」
呻くように呟きながら、男が体を左に捻り背後にある窓枠へ右手を伸ばす。
「っ!」
間一髪、指先が引っ掛かり、地面へそのまま真っ逆さまに落ちるのだけは回避する……。
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