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<幕間>


〜匡〜


一度、凌太を疑った事があった。本当に恥ずかしい、亮二は俺にも母親にも似ていなかったが凌太は俺によく似ていたのに。


DNA検査で父子である確率が99.999まごう事なく俺の子だ。


もちろん可愛くないわけがない。


優秀な子で、いつも一緒にいてやれなくても文句も言わないいい子だ。



ただ、ことあるごとに甲斐を見下す母親とはどうしても無理だ。


没落し、金のために身売りをしてきたような女が俺をバカにする。


結婚するように言われて仕方なく見合いに行った時、綺麗な人だと思った。


この人とやっていくのだと思った。


だから貴江とはもう会うことはないとあの時は思っていたのに、八栄子の態度が鼻についていた時、偶然貴江に再会した。


もう無理だった。


本当なら甲斐夫人となるはずだった人。


彼女も俺を忘れたことはないと言っていた。


そして、彼女は俺の子を孕った。


社員として登録して月々の給与とマンションを与えた。正妻であることの権利をあげることができない分、土日は貴江と亮二に当てた。



幸せだった。



ところが、貴江が癌に侵されていてすでにステージはⅣだった。



闘病中の貴江の元に通うため疲れているわたしを凌太はいつも気遣ってくれていた。


心配する言葉をいつも心苦しく思っていた。


凌太を愛してる、だけど貴江も亮二も大切にしないといけない対象だった。


わたしのせいで一生を日陰に置いてしまったから。



貴江が亡くなり亮二が取り残されて、認知はしているが非摘出子、愛人の子であることは変えられない事実だ。わたしのせいで亮二が苦労してくのを見たくない。

凌太と違い亮二は良い子ではあるが凡人だった。



だから家に連れてきた。


そのことで凌太がどう思うのかということに頭が回ってなかった。


どれほど傷付いたのか、凌太はあの日家から出ていった。



父は烈火の如く怒った。



当たり前だ、自分の息子がそんなことをしたら怒るだろう。




八栄子に対しては、何も思わなかった。


いや、いい気味だと言う気持ちがあった。


バカにし続けた夫が他の女に子供を生ませていたんだから。



凌太とは何度も話し合いの場を設けようとしたが、頑なに心を閉ざしてしまい話をすることもままならなくなった。


会社に入ると凌太と亮二にはますます差がでてきたが、むしろ扱い安そうな亮二を担ぎ出そうとする人間があらわれ、将来性のある部門を切り離してその社長に据えることを考えるようになった。


凌太と違い亮二には大きな会社を回すのは無理だ。



ある日、話し合いをすることを凌太に提案されて4人でテーブルを囲んだ。


八栄子はわたしがこっそりDNA鑑定をしていたことを知っていた。そこで亮二にもするように言われ二人で検査に行った。



検査結果は0%だった。



亮二は笑いながら土日しか居ない父親の目を盗んで、平日は母親の恋人が来ていた。その恋人は貴江の金、しいてはわたしの会社から出ていた金で生活をしていたと言っていた。

亮二は自分が母親の恋人に似ている事、そして何より亮二はわたしが父親ではない事を知っていた。


貴江がわたしを憎んでいたこと、ただ亮二の父親には生活力がない事でわたしの子供ということにしたこと、ゆくゆくは甲斐の遺産が入ればラッキーだと思っていたと。



凌太は父の養子になると、そしてわたしに横領罪で告発されたくなければ社長を降りることを提案してきた。凌太は学生時代からわたしがやっていた事を知っていて証拠や裏付けもしていた。



女にだまされ、最愛の息子に愛想を尽かされた。



亮二をこのままにしておくわけにはいかない。

わたしとの親子関係がないのならそれは甲斐の問題になる。


認知を取り消すことを亮二に伝えると、二つ返事で了承をした。


私は亮二のために用意した太陽光事業の会社を自ら経営していくことになる。



そして、私は八栄子にもひどいことをしていた。


初夜にわたしは貴江と言いながら抱いていたことを知った。


八栄子が私を憎むのは仕方のないことだった。



甲斐は太陽光事業を他の会社と提携をした。



家族を無くして、最初から泥舟のような会社を経営して行かなくてはならない。

ふと亮二のことが心配になりアパートに会いに行くと、亮二が亮二によく似た男性と並んでいる姿を見て自分には何も残っていない事に気がついた。

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