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マンネリ、っていうの? 最近、恋人の俺を見る目が冷めたように感じる。あーはいはい、つまんねーつまんねー、って。ごめんな、俺が下手でつまらくなってきたんだよな。今のままじゃいけないんだよな。俺じゃお前を喜ばせられないのか。 低迷期、と言うのだろうか。最近はライブに来てくれるファンも減ってCDの売上も下がったまま抜け出せない。ただお金のために音楽をやっている、そんな空気がバンド内に流れ始めていた。 前置きで、だいぶ紛らわしいことを言ったようだが、俺たちは麦茶同好会と名乗っているベテラン手前の売れないバンドだ。俺の恋人というのもかれこれ10年付き合ってきたエレキベースだ。名をしずえと言う。ベースボーカルなんて重たい役割を背負う俺は経験でどうにか頑張ってきたが元々の才能がお粗末なもんだから最近はしずえを満足させられる音を出せていない。伸び悩んでいる、とか言うのか。俺たち麦茶同好会は6年ほど前に結成して最初はそこそこ面白いバンドだって界隈で少し騒がれていた。ファンの呼び名が決められるくらいには、ファンが増えていた。(ちなみにファンのことを麦茶愛好家と呼ぶ)最初はみんなでやる音楽が好きで好きでたまらなく、アイツらとの練習も楽しかった。もちろん1人でも音楽が好きなのはそれぞれ変わらないと思うが、みんなでやる音楽が楽しかったのも本当だ。しかし売上が低迷し始めてみんながバイト詰めになることが増えた。時間の確保の問題でバンドで練習することは減ってしまった。みんな生きるのに必死で働いている。それは分かっているのだが音楽を楽しんでいる、と言うよりか何とか稼ぐために音楽を利用している、と言う印象が強くなった。今は、ただただバンド練習が作業になっている。昔は楽しく、なおかつそれなりに稼げていたのが今となっては地下のスタジオで数人に向けて漫才をする売れない芸人よろしく小さいハコで作業のようにライブをやる。みんなだってきっと感じているはずだ。低迷し始めて、このままじゃ空気解散も否定できなくなってくる。俺はそれだけは嫌だった。みんなでやってきた音楽が楽しくて忘れられない。こんな気持ちになってるのは、俺だけなんだろうか。