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待機室の棚の前。
恒が棚の上のケースに手を伸ばしたけど、指が届かなかった。
ひろが隣からすっと手を伸ばして、先に取ってくれた。
「これ?」
恒は受け取りながら、ぼそっと言った。
「……これでも俺、男のはずなんだけどね。」
ひろは、ケースの中身を確認しながら言った。
「まぁ、恒は身長関係なく性格がかわいいからね。」
恒は、笑いながら言った。
「かわいいって言われると、なんか複雑なんだけど。」
ひろは、棚の奥を見ながらぽつり。
「たった7センチの差なのにな。
こんなに印象違うんだね。」
恒は、手を止めてひろを見た。
「……え、待って。なんで俺の身長把握してんの!?
なんか怖いんだけど!?」
ひろは、肩をすくめた。
「だって、前に言ってたじゃん。165でしょ?」
恒は、棚の奥を見ながらつぶやいた。
「いや、言ったかもしれないけど、覚えてるの怖くない?」
ひろは、何も言わずにケースを戻した。
夜。
恒は自分の部屋で武器のメンテをしながら、ふと昼のことを思い出した。
「……なんで俺の身長把握してんの!? なんか怖いんだけど!?」
自分で言ったセリフを思い返して、少しだけ笑った。
ひろの顔は、あのとき特に何もなかった。
ただ肩をすくめて、「前に言ってたじゃん」って言っただけ。
でも、恒はなんとなくわかっていた。
ひろは、そういう細かいことを自然に覚えるタイプじゃない。
ついこないだまでは、恒を守ることさえできたら、
恒にどう思われていてもかまわないって言ってた。
守ることに、好きなことや身長はいらない。
だから、たぶんあれは、記憶の中から頑張って引っ張り出してきたんだろう。
恒は、棚の高さを思い出して、
次はちゃんと踏み台使おうかな、とか考えていた。
でも、ひろが覚えていたことは、
なんかちょっとだけ、うれしかった。