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待機室の午後。
ひろは、ギアの袋を整えながら、恒の背中をちらっと見た。
恒は棚の前で、黙って作業している。
その姿を見ながら、ひろはぽつりとつぶやいた。
「うーん……」
恒が振り返る。
「なに言ってんの。」
ひろは、少しだけ考えてから言った。
「こうって、かわいいときは小さく見えるし、
頼れるときは大きく見えるんだよね。」
恒は、手を止めてひろを見た。
「俺、伸び縮みしてるってこと?」
ひろは、真顔でうなずいた。
「うん。見た目は変わってないのに、なんか違って見える。」
恒は、棚の奥を見ながらつぶやいた。
「それ、俺が変わってるんじゃなくて、
ひろの目が勝手に補正してるんじゃない?」
ひろは、少しだけ笑った。
「かも。でも、そういうのって面白いよね。」
「こうって、かわいいときは小さく見えるし、
頼れるときは大きく見えるんだよね。」
頼ってもらえる時の俺は、
ひろには大きく見えてるんだ。
そのことに気づいて、恒は少しだけ笑った。
隣でギアを拭いていたひろが、ふと口を開いた。
「逆に恒は?」
恒は、手を止めてひろを見た。
「……なにが?」
「僕の身長。どう見えてる?」
恒は、にやっとした。
「めっちゃ珍しく照れてる時のひろ以外は、
だいたい大きく見えるな~。」
ひろは、手を止めて恒を見た。
「それ、どういう意味?」
恒は、肩をすくめた。
「いや、照れてる時だけちょっと縮む感じするんだよ。
なんか、空気がやわらかくなるっていうか。」
ひろは、ギアを拭き直しながら、ぽつりと言った。
「そうか。」
恒は、ちょっと笑いながら棚の奥を見た。
その笑みは、からかい半分、見守り半分だった。
恒はギアのパーツを並べながら、少しぼんやりしていた。
ひろは、その様子を横目で見て、
何も言わずに恒の隣に立った。
しばらくして、ぽつりと声をかける。
「今日の恒、ちょっと小さめだね。」
恒は、手を止めてひろを見た。
「は? 何その雑なサイズ感。」
ひろは、口元だけで笑った。
「昨日は大きかった気がするんだけどな。
今日はちょっと、かわいい寄り。」
恒は、眉をひそめながら言った。
「俺、日替わりで印象変わるタイプなの?」
「うん。たぶん。」
恒は、ギアを持ち直してつぶやいた。
「じゃあ明日はどうなるんだよ。」
ひろは、少しだけ考えてから言った。
「明日は……中くらい?」
恒は、思わず吹き出した。
「なんだよそれ。適当すぎる。」
ひろは、何も言わずに恒の隣で作業を始めた。
恒は、笑いながらギアを並べ直した。
ちょっかいは、ただのからかいじゃなくて、
ふたりの距離を測る道具みたいだった。
恒は、ギアの細かい調整に集中していた。
工具の先をじっと見つめて、無言で作業を進めている。
ひろは、その隣でパーツを並べながら、
ふと真面目そうな顔で言った。
「今日の恒、ちょっと縦に伸びた気がする。」
恒は、工具を止めて顔を上げた。
「……またサイズ感の話?」
ひろは、うなずいた。
「昨日より2センチくらい上がってる。
たぶん、気圧のせい。」
恒は、じっとひろを見た。
「気圧で身長変わる人間、聞いたことないけど。」
「でも、今日の恒は“頼れる感”がちょっと高めだから、
見た目も連動してる気がする。」
恒は、工具を置いて腕を組んだ。
「じゃあ俺、気圧と感情で身長変わるタイプってこと?」
ひろは、少しだけ笑った。
「うん。あと、照れ具合でも変わる。」
恒は、ため息をつきながら言った。
「そのうち“湿度”とか言い出しそうだな。」
ひろは、何も言わずに恒の肩を軽く叩いた。
「今日の恒は、ちょっと高め。いい感じ。」
恒は、肩を押さえながらつぶやいた。
「サイズ感で褒められてるの、なんか複雑なんだけど。」