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『』葛葉
「」叶
叶side
最近葛葉の帰りが遅い。僕と一緒の収録の時は二人で帰ってくるが、葛葉だけ収録の日はこれまでより帰りが遅くなった。
ただ帰りが遅いだけで冷たくなったとかはない、、ないんだけど、、、
1回気になると一生気になってしまうのが昔から僕の悪い癖だ。
葛葉何考えてるんだろ、、、
そう思いながら最近の葛葉の言動を思い返すと、全てひっかかるような気持ちになってくる。
うーん、なんなんだろう、このもやもやは、、、
今日も葛葉だけ収録の日。また帰り遅くなるのかな、今朝も別に普通だった。やっぱり冷たくされたりはない。僕のこと嫌いになったわけじゃないのかな、でもじゃあなんで、、、
あ、マネージャーから連絡だ・・・ん?あっ忘れてた!やばっ
マネージャーから事務所で打ち合わせ約束してたんだった!!しまった、、葛葉と同じ時間に家出れば良かった〜やってしまった、、、
(事務所)
『おつかれさまでしたーありがとうございました!ほんとに今日はすみませんでした。』
マネージャーとの打ち合わせも終わり、挨拶をして帰路に着く。
廊下を歩いていると、通りがかった部屋から見知った声が聞こえる。
「いやまじどーしよ」
あっ、葛葉の声だ。何話してるんだろう。。
ダメなこととは知りながらも、つい聞き耳を立ててしまう。ドアはわずかに隙間が開いている程度で中は見えず声がもれてくるだけだ。
不破「なるほどねぇ!むずかしいなそれは!」
「だよなぁ。ふわっちならどうする?」
不破「うーん、、迷うけど他の探すかな〜」
「あーやっぱ?いや〜、叶むずいわ。」
・・ん?今叶って言った?僕の話してる?
僕がむずいって、、、それにふわっちが他の探すって言った、、?
え、、それって、、、
・・もしかして僕葛葉に捨てられる?
1番考えたくない妄想が嫌でも頭にながれこんできて心がぎゅっと締め付けられるように痛む。
・・勘違い、、ならいいんだけど、でも最近の帰りの遅さも考えると、ありえるような気もしてくる。
俯きながら自宅に帰る。
ドアを開け上着も着たまま電気も付けずにソファにドカっと座る。
ぐるぐる考えてしまう気持ちとは裏腹に、頭は妙に冷静で、自分と葛葉が別れたら、くろのわはどうなるんだろう、とか、くろなんはなくなるのかな、とか仕事のことを考えていた。
小一時間ほどそうしていただろうか。
部屋の寒さで我に返り、電気をつけて夕飯の支度をする。
・・葛葉、今日も帰り遅いのかな。
そう思った時
ガチャっ
「ただいま〜」
葛葉が帰ってきた。僕がいるキッチンまで来て
「今日めし何?」といつも通り聞いてくる。
『生姜焼きだよ〜』
僕はなるべく平然と答える。
「おー、着替えてくる」
葛葉はそう言うと自室に戻った。
・・なんだろう、この感じ。
今までだったら気にならなかったような些細な言葉遣いや声のトーンから僕の頭が勝手に考察してしまう。
嫌でも先ほどまでの妄想が頭を占拠する。
僕・・ふられるんだろうか、これから。
気づくと葛葉がリビングの椅子に座っている。
料理を盛り付け、葛葉が皿をテーブルに運ぶ。
僕が座ったのと同時に葛葉はぱんっと手を合わせていただきますをしている。
「うま〜やっぱ肉しか勝たん」
『・・そ?よかった』
なるべく自然に箸を動かす。うまいうまいと言っている葛葉とは裏腹に、僕は生姜焼きの味なんて全くわからなかった。ただ塊を咀嚼し飲み込む動作を繰り返した。
ごはんを食べ終え、皿を片付ける。食後の飲み物を入れてまた椅子に向かいあわせで座る。
「・・叶さ」
突然葛葉が口を開く。
・・きた。咄嗟にそう思ってしまう。
微妙に開いた葛葉の口から次に紡ぎ出されるであろう言葉を予想し、また心臓が握りつぶされるように痛くなる。
あれ、視界が、、
「・・叶?なんで泣いて、、えっ?!」
葛葉のその言葉で僕は自分が涙を流していることに気づいた。
「叶、どうした?!?!」
心配そうに僕を見る葛葉の前で、なぜか堰を切ったように溢れ出る涙。嗚咽も止まらない。
葛葉は最初焦っていたが、途中から僕の頭を撫でて僕が落ち着くまで待ってくれていた。
「・・なんかあった?」
心配そうに僕を見つめる葛葉。
僕は思い切って聞いた。
『葛葉、もう僕のこと嫌い?』
一瞬目が丸くなる葛葉。
「は?!?!なんで?!」
『・・違うの?』
葛葉はたぶん笑おうとしたんだろうが、僕のぼろぼろの顔を見てやめたのだろう。
僕の顔をしっかり見て
「嫌いなわけないじゃん」
と言う。
「・・叶なんでそう思ったの?」
いつもより優しい声色で語りかける葛葉。
僕は下を向きながら、最近葛葉の帰りが遅いこと、事務所での話を盗み聞きしてしまったこと、一度考えたらどんどん不安になってしまったことをぽつりぽつりと葛葉に話した。
すると葛葉は
「あーーー。それは・・」
と話し始める。
二人の記念日のプレゼントに迷って1人で見に行っていたこと、欲しいものをあげようかと思ったけど僕が自分で買ってしまうこと、プレゼントに詳しそうなふわっちに事務所で相談したことをゆっくり話す。
・・そうか、すっかり忘れていたけど今日は僕と葛葉が付き合った記念日だった。
葛葉が言うには、帰ってきた時あまりにも僕が普通すぎて、プレゼントを渡すタイミングがわからなかったとのことだった。
『葛葉ごめん、僕記念日のこと、、』
「忘れてたんだな、ま、いーよ」
そう言ってくしゃっと笑う葛葉。
「ちょっと取ってくるわ・・」
そう言って一度自室に戻り、小さな紙袋を持って帰ってくる葛葉。
自信が無いのか視線を泳がせながら無言で僕に紙袋を渡す。
僕は受け取り紙袋の中の小さな箱を開ける。
『えっ?!』
僕が驚いたのも無理ないだろう、だってそこには2つのペアリングが光っていたのだ。
『くずh』
「俺っぽくないって思っただろ!!でもお前が喜ぶかなって思ったんだ、それでこのデザインは、ふわっちが俺らっぽいって言うから、、それで、、」
赤くなり恥ずかしそうにしながら下を向いてボソボソしゃべる葛葉。
そんな葛葉を見ていたらまた視界がにじむ。
「・・また泣くんかお前は」
『・・違うよ、嬉し泣きだもん』
「ハハッ、そりゃあ良かったよ」
『ねぇ葛葉、これつけていい?』
「まぁそのためのもんだからな」
『僕どっち?』
「お前がこっち、これが俺」
『めちゃくちゃかっこいいじゃん』
「だろぉ?」
『・・なんだよさっきまでふわっちがとか言ってたのに』
「結局決定したのは俺だもん」
『まぁたしかに、葛葉、、ほんとにありがとう、僕めちゃくちゃ嬉しい』
「・・知ってる。てかお前記念日忘れてた罪は重いからな!!覚えとけよ!!」
『じゃ、ちゅーしてあげようか』
「そういうのはいい」
『なんだよ残念、てか葛葉これつけて仕事行く気?』
「え、買ったからにはつけないともったいなくね?割とたけーんだぞこれ」
『でもこれおそろいだってすぐわかるけど』
「・・別にいいじゃん、もう」
『くろのわはビジネスですとか言ってたのに?』
「ビジネスでつけてますっつったらいいんだよ」
『そういうもんか』
「そういうもんよ」
僕らは互いの薬指に光るリングを見ながら笑った。
次の収録の時に周りが大騒ぎになったのは言うまでもない。
おしまい