同じ世界線
クロノアside
今日割りあてられた刑務作業は厨房での料理。
しにがみは懲罰房、ぺいんとは牧場で動物の世話をしている。
昨日までの収穫と夜の時間の計画を練りながら作業を進めるとナイフで指を切る。じわりと痛み血が流れる。
食材についてはまずいと蛇口で洗う。水がかなり染みていたい。
取り敢えず絆創膏をもらいに看守のところに行こうと思ったところで厨房の扉が開く。
「やってるか」
「あ、…はい」
「そんなところで何を……あぁ、指を切ったのか。アルコール…か、エタノールでの消毒はしないように。ほら絆創膏だ」
「……ありがとうございます」
「どうした」
きっとこの優しさのせいなのかもしれないと思う。
最近のぺいんとはよくリアム看守の話をするようになった。よく個人面談もするし気を許せるようになっててもおかしくはない。でも、それが面白くなくて堪らない。今まで自分たちにしか向かなかったあのキラキラした笑顔が他の人にも向けられていると思うとモヤモヤ、ドロドロとしたものが溢れ出てきそうだった。
少し八つ当たりのように渡された絆創膏を貼る。
すぐにじんわりと血が滲んできて布の面を赤黒く染める。
「看守」
「なんだ」
「看守はぺいんと……8番のことどう思ってるんですか」
「………それは、」
「あんまり近付きすぎないでください」
「…………」
深く被った帽子から緑の目が見える。あの夜と同じようなどこか余裕があるような、挑発するような、そんな目。
腹の底が煮えるような感覚がある。思わず奥歯を噛み締める。
「あいつには俺たちだけいればいいんです。他なんかいらない」
「それなら首輪をつけて縛っておけばいいだろう。俺は俺の仕事をしているだけだ」
また、余裕が出来たような目。
また後で来るとだけ言い残して厨房から出ていく。
悔しい、悔しい、
「……ッ、」
強く流し台を叩く。横に置いてあったナイフがガタン!と音を立てたが気にならない。
首輪なんて、ずっと前から…………。
通信機が通じるようになって二人の会話が聞こえる。
楽しそうな会話にまた腹の底がジリジリしだした。
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