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「あ~菊に会いてぇある」
「菊不足で死んじまいそうある!」
そう、上司二人に押し付けられた仕事に埋もれているスペードの国のジャックがそう言った。
彼の従弟にあたるハートの国のクイーン不足で死にそうになっていた。
むしろ、仕事が溜まっていることはさほど気にしていない様子である。
「先生、早く仕事した方が良い的な?」
「そんなんだから死にそうになるんすよ」
「仕事が溜まってるから死にそうなんじゃねぇある!」
「またアーサーのバカに菊がろくでもないことをされてるんじゃねぇかと思うと!」
「きっとアイツの事だから菊に会いに行くために我に仕事押し付けたに違いねぇある!」
「サーも菊兄もそこまでアホじゃない的な?」
そうジャックに声をかけるのは彼の義理の息子であり、この国の衛兵長である。
「いーや!ぜってぇにアーサーはまた馬鹿なこと考えてるに決まってるあるね‼」
スペードの国のジャック王耀とクイーンのアーサー・カークランドは犬猿の仲である。
それはジャックが義理の息子を要職に付けたことに対抗して義理の弟をキングにしたほどである。
そんな彼らが同じ国で№3と№2の役割を一応仲良くやっているのはハートの国のクイーンの存在が大きかった。
スペードの国のジャックはハートの国のクイーンの従兄、スペードの国のクイーンはハートの国のクイーンの義弟。
だが、彼ら二人には血のつながりはない。
2人は心の底からハートの国のクイーンを深く愛していた。その形が慕情と肉親の情と違えたとしても。
だからこそ、あの時スペードの国のジャックは『菊を守るために、アーサーの側で監視する』という選択を取ったのだ。
「おいおい、人のことをよくそんなに言ってくれるなぁ?」
そこにタイミングが良いのか悪いのかスペードの国のクイーンが現れた。
クイーンはその端麗な顔に嗤い顔を浮かべていた。
それを見てジャックが露骨に嫌な顔をするのも、そんな二人を見て嘉龍があきれ顔を浮かべるのも、最早いつもの事である。
「げ、お前なんでこんなところにいるあるね?」
「お前は今はキングと会議中じゃなかったあるか?」
「キング様がお前の意見を聞きたいだとよ」
「あぁー、俺の弟はお前とは違って人ができてるなぁ?」
「きっしょ。仕事を押し付ける似た者兄弟なんかよりうちの嘉龍の方が断然良い奴あるね」
「そもそもお前が最低だから、たとえもう一人がどんなに良い奴でも相殺されて±0ある」
「お前も随分口が回るようになったな」
「そもそも、一つご指摘をさせて頂くなら、嘉龍を育てたのはお前だけじゃないんだよ」
「あたかも自分の子みたいにふるまいやがって」
そう、この二人の犬猿の仲をさらに深めているのが嘉龍の存在であった。
彼を拾ってきたのは耀だが、彼の教育係はアーサーであった。
2人はよく『嘉龍を育てたのは誰か』という議題でももめていた。
そもそも、ここまでくると何かと理由を作って相手を蔑むのが日常である。
「サー、先生落ち着いて」
「アルフレッドが一人で待ってて可哀想的な?」
そう言ってみるが、嘉龍に止める気はなく、そろそろアルフレッドも来るかな?ということを数えていた。
むしろ、少し楽しんでいる節もある。本人たちにとっては大問題でも傍から見たらコントや漫才と何ら変わらないのだからしょうがないと言えばしょうがないのだが。
この流れじゃ、大喧嘩勃発まで棒読み開始といった具合のなのだから仕方がない。
「はぁ?嘉龍は正真正銘我の子ある!」
「いい加減うるせぇある!」
「おめぇのその衣装代という名の無駄金削ってやってもいいあるよ!?」
「はぁ!?ふざけんじゃねぇよ!」
「紳士たるもの身も心も美しくあるべきだろ!?そのための必要経費であってな!」
「菊にちょっかいかける事しか趣味の無い可哀想な奴が紳士だなんて笑わせるあるね」
「ふざけてる暇があるなら我に押し付けてる仕事の一つやひとつくらいこなしてみたらどうあるね?」
「おめぇなんか無能クイーンくらいがちょうどいいある」
「はっ!人に任された仕事をちゃんとこなせず、自分の仕事もためてるやつに言われたかねぇな」
「どうせお前の事だから菊の様子でも見に行って仕事をサボってたんだろ?」
「お前のデスクの上書類であふれかえってるぜ?」
「都合のいい言い換えはやめるよろし!」
「何が任せたある。自分がやりたくないからって人に押し付けたっていうのが正解あるね」
「それともこんな簡単なことも理解できねぇほど耄碌したあるか?」
彼らの喧嘩は悲しいことにまだ序盤に過ぎないのである。
スペードのキングがやってきた。
彼の手には大きなポップコーンが抱えられている。
「嘉龍!二人の喧嘩はどうだい?」
「戻ってくるのが遅いから大方こんなことだろうと思ってきてみて正解だったよ」
「めっちゃおもろい的な?」
「さっきから二人ともあまりに支離滅裂すぎて」
「よし!ポップコーンもってきたから一緒に食べながら観戦しようじゃないか!」
「ナイスすぎる。どっちが勝つか賭けない?」
「Nice idea!いいね!」
コメント
7件
やった更新だ‼️ 犬猿の仲…いいね……( ˘ω˘ 🫶) あと嘉龍のポジションがすごく好きです常に観客として楽しんで見てる感じ👀
第7話読んだわ!もう冒頭から上司二人の「菊不足」発言で笑ったw ジャックとクイーンの犬猿の仲、相変わらず激しいな…でもその根っこにハートのクイーンへの想いがあるってのがエモい。そして嘉龍とキングがポップコーン持って観戦してるの最高すぎる、この温度差がたまらんわ🔥 次話も楽しみにしてる!