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「見えてきたのよ、アリクルリバーなのよ」


朝になり、シュクルシティを出発した一行は、少し高い位置を進み、アリクルリバーへと差し掛かっていた。

高所からなので、広範囲に川を見る事が出来る。


「工事が再開しているようですね。というより、ようやく測量が始まったという感じですが」

「酔ってそれどころじゃなかったのよ。泥酔していたのを見たのよ。ミューゼ達は大丈夫なのよ?」


酒気だけで酔うミューゼとアリエッタに、パフィは心配そうに問いかける。


「ちょっとお酒臭いかな~って思うけど、なんともないよ。アリエッタは……大丈夫かな?」

(?)

「この分なら、サッと通り過ぎれば大丈夫なのよ」

「ヤクソクどおり、もとのアリクルリバーにもどっているようだな」


悪魔達は交渉の後、すぐに濃度を上げるのを止めていた。その結果、2日かけて濃かった川は流れ、すっかりほぼ元に戻っていたのだ。


「これでようやく普通にムーファンタウンと行き来できるし。迷惑な悪魔達だし」

「……そうだな」


川の濃度を上げていた理由は、ラスィーテと他リージョンの行き来を絶つ為であった。ミューゼとパフィは、ロンデルからその事だけは教えてもらったが、その行動の理由までは教えてもらえなかった。理由を知っているのは、現状ピアーニャとロンデルだけである。


「さて、ずっとみていても、ふたりがヨってしまうからな。さっさとムーファンにむかうとするか」

「はーい」


ピアーニャはチラリとアリエッタを見て、川の向こうにあるムーファンタウンへと進めて行った。

ちなみにアリエッタは、今はミューゼの隣にくっついて座っている。街を出てから…どころか、先日から5人のうちの誰か1人に、必ずピッタリくっついている。本人に自覚こそないが、絶対に捨てられたくないという固い意志が、行動に現れていた。

そんな行動に、もちろん大人達はうすうす気づいている。ただし……


「今はミューゼにくっついてるし。なんだかとんでもなく可愛いし」

「えへへ、ついに本格的に懐かれちゃったかも?」

「わちだけソッコーで、てをつながれるのはなんでだ……」

「これまでは少し遠慮しがちだったのですが、私にまで寄ってくるようになりましたね」

「見てるだけで可愛いから、ミューゼみたいに私までおかしくなりそうなのよ」

「あたしおかしくないよ!?」

『え?』

「えっ……」


全員ただ懐かれたと思っているだけで、アリエッタの胸の内など分かるはずもない。

逆にみんなの会話が分からないアリエッタはというと、真剣な顔でみんなの会話を聴いていた。


「ほらー、アリエッタもミューゼがおかしいって言ってるし」

「言ってないよ! あたしおかしくないよね!?」

(? な、なに?)

「首を傾げましたね」

「ミューゼがおかしくないとか言うからなのよ」

「違うからっ! 言ってる事が分かんなかっただけだからっ!」

(うぅ……よく聴いても名前しか分からない。何故かみゅーぜは早口だし、どこが単語なのかもさっぱり分からないし……いつになったらお話できるんだろ)


早く会話が出来るようにと、何もしていない時は人の会話を聴いて覚えようとしているが、物の単語を覚えるのとは違い、異界の文法を覚えるのは困難を極めていた。

おまけにファナリアやラスィーテには絵を発展させた文化が無い。それはつまり、前世にあった絵本などの教材が存在しない事を意味している。アリエッタが会話できる程の言葉を覚えるのは、まだまだ当分先になりそうである。

一方、言葉は日常の中で自然と覚えるという常識で生きてきた大人達はというと、そんな少女の悩みなど気づく筈もなく、今日も楽しそうにアリエッタを可愛がっている。


「なんだか困った顔をしているのよ。まだ町も見えないから、少しおやつでもあげるのよ」

「今度はボクがあげるし。ほら、あ~んするし~♪」


しかし保護対象や家族というより、ペットのような扱いだった。




しばらく空中を進み、日が暮れてきた頃、前方に建物が見えてきた。


「おーいおきろー。ムーファンタウンがみえたぞー」

「ほら3人とも起きるのよ。……いまのうちにアリエッタいただきなのよ」

「むぇ?」(あれ、寝てた?)


パフィに抱き上げられて目を覚ますアリエッタ。そのままミューゼとクリムを起こしている間に、町の近くへと到着した。


「着いたのよー! 久しぶりなのよ!」

「久しぶりに来たけど、変わってないし」


町に入り、パフィの家に向かう道すがら、パフィとクリムの話で盛り上がる一行。アリエッタは興味深そうに、街並みをキョロキョロと見渡している。


「そういえばきいてなかったが、おまえたちフタリとも、このマチしゅっしんなのか?」

「ボクは違うし。隣のポンドタウンに住んでたし」

「昔から時々会う事があって、4年前にシーカーになる時に一緒にファナリアに行ったのよ。その時に、まだ小さかったミューゼと出会ったのよ」


のんびりと歩きながら、2人は昔話を始めた。

当時15歳だった幼馴染同士のパフィとクリムは、得意の料理を他リージョンで広める為に、勢い半分でファナリアのニーニルへと転移。小さい頃にほんの数回だけ、他リージョンに出かけた経験があるだけだった2人は、特に何か計画があったわけでもなく、簡単に路頭に迷ってしまった。

そんな時にシーカーに憧れる、当時11歳だったミューゼと出会ったと言う。


「あの頃のミューゼは可愛かったし……」

「そうなのよ……」

「何その残念な何かを見るような目は……」


2人は同時にため息をついた。その様子を見たアリエッタは、なんだか落ち込んでいると思い、パフィとクリムを引っ張って屈んでもらい、頭を撫でてみた。


(よく分からないけど元気になるかな?)

「ありがとうなのよ。アリエッタもこの気持ち分かってくれるのよ?」

「ちょっと!?」


必死に雰囲気を察知し、頑張って好かれようとするアリエッタ。


(ミューゼが怒ってる! 機嫌を取らないと!)「みゅーぜ! みゅーぜ!」

「な、なに?」


急いでミューゼに駆け寄り……そこで固まってしまう。


(ええと…なんで怒ってるんだろう! 理由分からないからどうしたら良いのか分からない!)


そのまま無言で、ひたすらアワアワと慌てている。

ミューゼもどうしたら良いか分からないまま、アリエッタを困った顔で見つめる。

そんな光景を、横から冷静に見ている人物2人は、なんとなく冷静に分析していた。


「こいつら、ぜんいんザンネンだな」

「アリエッタさんに妙な親近感が沸き上がるのは、何故なんでしょう……」


子供の頃からピアーニャのご機嫌取りをしていたロンデルだけが、アリエッタの行動の意味をなんとなく感じ取っていたのだった。

そんなやり取りを時々しながら、一行は目的の場所にたどり着いた。


「ここが私の実家なのよ。えーっと、総長達は流石に予定してなかったから、泊まれるか聞いてみるのよ」

「きにするな。アイサツしてから、そのへんのヤドにでもとまるさ」

「一番近い宿を教えてもらえますか?」


パフィは一度謝り、路地の先を指差して、


「あそこに見えるのよ。まだやってるみたいで良かったのよ」


目視できる宿を教えると、ロンデルが確認と部屋の確保へと向かった。

そして残ったメンバーは、パフィに促され、家へと入る事となった。


「ただい──」

「パフィィィィィ!! 大変なのぉぉぉぉ!!」

「ま゛どぇっ!?」


家に入るなり、突然抱き着いてきた、頭がふんわりとした女性。

その人物はもちろん……


「あ、パフィのママだし。こんばんわだしー」

「え? この人が?」

「いきなりテンションたかいな……」


パフィにすがりつく母親の勢いに驚きつつ、とりあえずドアの外から観察する4人。


(ぱひーに似てる……お姉さんかな?)


1人だけ正される事の無い勘違いをするが、そんな事はお構いなしに、パフィの母親は娘にまくしたてる!


「あのねあのねもう何日も前になるの起きたらあの人がマルクがいなくなってて町中さがしてもみつからないの!きっと悪魔に攫われたのよあの人まるまる太っちゃってたの!どうしよう私1人でシャービット育てる自身ないの!パフィお願いしばらくでいいから帰ってきてほしいの!」

「ちょっとママ……」

「そういえば晩御飯食べたの?後ろの人達はお友達なの?クリムちゃんもいるの?すぐに何か作るの?マルクがいないから食材が沢山あまってるの!せっかくだから今日はフルコースを作るから食べて行ってほしいの!もしマルクが悪魔に攫われたんだったらパフィのお仕事でなんとかならないの?シーカーっていろんなところにいくの?そういえば最近橋が壊れたって聞いたの!どうやって帰ってこれたの?もう橋は直ったの?これでシュクルに──」


聞くだけで息継ぎを忘れるほどのマシンガントークが、パフィと一行を襲う。

呆気に取られている間も、パフィの母親は一切の途切れもなくしゃべり続けるのだった。

からふるシーカーズ

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