テラーノベル
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ダイニングで篤久様が運んでくれたバスケットにお菓子を入れながら、廊下の気配を窺う。
あ、来た……
「渡辺さん」
そう呼びながら廊下に出ると、紙袋を両手に持った渡辺さんが立ち止まって振り向いた。
「荷物、すみません…ありがとうございます」
「いえ。もっとあっても大丈夫ですが、これで終わりです」
「…ありがとうございます。あの…ケーキ、篤久様が買ってくださって……このあとご一緒にいかがでしょうか?と…」
「篤久様もお休みでゆっくりとなさっていますね。私も一緒にいただきます」
良かった…じゃあ、飲み物を用意しよう。
買って帰るなら、と篤久様は渡辺さんも一緒にと言った。
そういうところが、私は好き…だと思う……と、キッチンでお湯を沸かしながらネックレスに触れた。
予想もしたことのない3人でダイニングテーブルを囲むと
「30分後に設計デザイン担当者が来ます」
と渡辺さんが私たちに言う。
「2階で今のミシンの部屋を見てもらってから、相談だね。真奈美さんの立会いが必要だからお願いします」
「あ…はい。何も分かりませんけど」
そう頷いてから、マスカットのショートケーキを口に入れる。
ンン…なんと……これは美味しい…
「今、唸った?」
と、篤久様は笑いながらキャラメルムースケーキを食べた。
「唸ってないです…美味しい」
「このチーズケーキも美味しいです。ケーキは久しぶりです」
「私もです」
「よかった。で、池田、あれからすぐに帰りましたか?」
ああ、さすが篤久様。
私はすっかり忘れていたよ。
「プライベートなトラブルをビジネスに持ち込まないで欲しいと、もっともらしい主張を繰り返していましたけれど、それ以前に犯罪行為があったことをお忘れですか?と私は繰り返しておきました」
「お疲れ様でした。西郷先生は?」
「真奈美さんが被害届を出す必要があるので、明日か明後日、時間を見つけて来てくださいます。被害届を出す準備を整えてから、一度池田に連絡をするつもりのようですが」
「示談にするか、ですね」
「その通りです、篤久様。真奈美さんの気持ち次第というところでもありますから、西郷先生の話をよく聞いてください」
渡辺さんが最後に私を見たので、曖昧に頷いておいた。
もう目的達成したあとなのよ……
池田は、きっと今までのように自由に出歩けないだろうし、会社の中でも非難轟々で居場所がないはず。
どこへ行っても後ろ指さされる気分を味わっているのだろう。
家族からもだとしたら…誰一人として分かってくれる人がいないなら、私よりも過酷な状況だわ。
「それから……」
そう言ってフォークを置いた渡辺さんが、薄笑いを浮かべたようで、私と篤久様は渡辺さんをじっと見ながらコーヒーカップを持った。
「遥香様…が…ブッ……ッ……失礼いたしました…」
え、何?ナニゴト?
渡辺さんが吹き出して笑いをこらえているんだけど…
やだ……それを見るだけで可笑しい……私はコーヒーを飲まないまま、揺れるカップをソーサーに置く。
「……昨日、SNS更新……ぶっ…はっ……なんでそんなことするんだか……して………」
渡辺さんは我慢できないという風に、両手で目から下を覆って体を揺らして笑った。
私と篤久様は、わけがわからないまま…でもレアな光景に笑いが伝染する。
コメント
7件
レアな渡辺さん〰😂あれはナニをやらかしたのかしら🤩 またまた眠れないよーーー
ちょっと渡辺さんどうしちゃったの〜😆きっとこれが本来の姿なんだろうね!あーんここに広瀬さんがいない、お休みだということが残念でしょうがない〜ザンネーン😂広瀬さんが明日ガッカリする様子を想像すると笑っちゃう😂 っんであれはなにしでかしてるのかしら?わっくわくぅ〜っ(๑ ˃̵͈́∀˂̵͈̀ )ィヒヒ
ヤダ〜ッなになに?教えてよぉー、渡辺さんっ‼️(笑)ꉂ🤭 楽しそうだワ‼️気になって寝れないよぉーꉂ🤭 しかし、3人でケーキ🍰☕😋真奈美ちゃんが来る前も こんな平和な時間は全く無かったんだろうね。 渡辺さん、ご苦労さまです。。。🥹 …あっくんの気持ち、渡辺さんはいつからわかっていたのかなー❓ꉂ🤭❤