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🐃side
祥 )……今日、飲みに行かない?
そう言った瞬間、勇馬は一瞬だけ目を瞬かせた。
ほんの数秒。それからいつもの少し素っ気ない声で、
勇 )……別に。祥が行きたいなら
って肩をすくめる。
ああ、出た。
これだ。
俺の彼氏、野瀬勇馬。
内心ちょっと嬉しいくせに絶対に自分からは言わない。
付き合って半年経つけどこのスタンスは一切崩れない。
(……今日は崩したいんだよな)
特に理由はない。
仕事がひと段落したとか、最近忙しかったとか、表向きはいくらでも理由はつく。
でも本音は単純で。
勇馬が酔ったところ、ちゃんと見たことがなかった。
飲み会ではそこそこ飲むけどいつも理性ラインを越えない。
俺の前でもそう。
だから今日は俺から誘った。
祥 )じゃあ、軽くね。無理しなくていいし
勇 )それ、毎回言うよね
ふっと鼻で笑う勇馬。
その横顔が既にずるい。
店は静かめな個室の居酒屋だった。
勇馬は最初、いつも通りのペースで飲んでいた。
一杯目。
二杯目。
祥 )……顔赤いけど大丈夫?
勇 )別に。酔ってないし
はいはい。
その割に俺のグラスに勝手に手伸ばしてきたり距離近かったりするのは何?
三杯目。
……ここからだった。
勇 )しょお
祥 )ん?
勇 )……しょーさぁ
名前の呼び方がもう違う。
伸びてる。やたら柔らかい。
勇 )ぼくさぁ……
祥 )うん?
勇 )今日しょーが誘ってきたのちょっと嬉しかった
——は?
祥 )……え、勇馬?
勇 )だってさぁ……ぼくから誘うと“どうしたの?”って顔するじゃん
いや、そんな顔してない……はず。
たぶん。
勇 )だからしょーが言ってくれるのいいなって……
そこで俺の袖をきゅっと掴む。
(ちょ、待て)
祥 )勇馬?
勇 )……んー……
完全にべろべろの入口に立ってる。
それからはもう、崩壊が早かった。
勇 )しょー近い
祥 )いや、勇馬が近い
勇 )それしょーが引けばいいじゃん
そう言いながら俺の肩に頭を預けてくる。
完全に体重かけてくる。
ねこか?
勇 )……重い?
祥 )全然重くないよ
やばい。かわいすぎる。
勇 )ねぇしょお?
祥 )んー?
勇 )ぼくさ……しょーのこと、好きだよ
爆弾発言。
しかもさらっと。
照れも躊躇もなく。
祥 )……それ、酔ってるからでしょ?笑
勇 )えー? 酔ってなくても思ってるし
そう言って俺の胸元に額を擦りつける。
(……もうほんとに反則)
普段絶対言わないくせに。
「好き」とか年に数回レベルなのに。
勇 )しょお
祥 )はい
勇 )ぼく、他のやつにこんな顔見せてないよ
顔、見えないけどな!?
でも声が甘すぎる。
勇 )しょーの前だから
祥 )……勇馬
勇 ) ぼくのだから
——独占欲まで出てきた。
完全に俺の理性が試されている。
会計を済ませて外に出る頃には、勇馬はもう歩けなかった。
祥 )……立てる?
勇 )んーむり
祥 )即答かい
肩を貸すと迷いなく俺にしがみつく。
勇 )しょーあったかいね
祥 )それはどうも
勇 )……離れたくない
小さく、でもはっきり言う。
祥 )ほらほら、自分のおうちに帰りましょ〜ね〜
勇 )やだ
祥 )……え?
勇 )しょーの家行くの!!
もう帰る気満々。
というか、俺の家に行くのは既定路線らしい。
祥 )……はいはい
家に着いて、ソファに座らせても、勇馬は離れない。
祥 )ほら、水飲んで
勇 ) しょーが飲ませて
祥 )……はい
コップを傾けると、ちびちび飲んで満足そうに笑う。
勇 )しょー優しいね
祥 )彼氏ですから
勇 )んふふ ……好き
また言った。
いつもはない、今は俺だけのものだと思わせてくれるこの時間が愛おしすぎる。
しばらくして勇馬は俺の肩で完全に眠った。
祥 )……ほんと、ずるい
寝顔は無防備で、いつものツンも意地も全部消えている。
祥 )明日、絶対覚えてないんだろうな笑
そう思いながらそっと毛布をかけた。
翌朝。
勇 )ん……おはよ
勇馬は頭を押さえながら起きてきた。
勇 )……なんで俺、祥の家……
祥 )飲んでたから
勇 )……
しばらく沈黙。
勇 )……俺、なんか変なこと言ってないよな?
祥 ) さあ?
にやっと笑うと、勇馬は一気に顔を赤くした。
勇 )……祥
祥 )なに
勇 )……その顔やめろ
耳まで真っ赤。
祥 )でもさ
勇 )……
祥 ) 昨日の勇馬、可愛かったよ
一瞬固まる。
勇 )……忘れろ
祥 )やだ
勇 )……最低
祥 )褒めてます
勇馬はため息をついてから小さく言った。
勇 )……でも……祥にだけ、だからな
きゅん。
その一言で、全部報われた気がした。