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芥川が堕ちた日___________________________
13歳の芥川龍之介は
生きる理由を知らずに 街を彷徨っていた
妹を守るために 拳を振るい
飢えに耐え 歯を食いしばるしかなかった日々
ある日 路地裏で 倒れていた自分に
そっと手を差し伸べてきた奴がいた
「……生きてる?」
その声は ひどく静かで ひどく温かかった
「手を……」
「いや 別に助けたいとかじゃないよ ただそこにいたから声かけただけ」
「……なんだ それは」
「でもおまえが死んだら 気分が悪い だから 生きろよ」
その一言が 芥川の心に深く 刺さった
後日
その少年――陽塚治と再会したのは 偶然だった
ポートマフィアの拠点に呼び出された芥川
太宰と共にいた陽塚を見て 一瞬 言葉を失った
「……あの時の……」
「あぁ 路地裏の子か」
「……名前は……?」
「陽塚 治」
その日から 芥川は
ただひたすらに “陽塚”という存在を目で追い始めた
最初は“恩”だった
次第にそれが“憧れ”に変わり
そのうちにそれが“執着”へと昇華していった
「……陽塚さん 僕は あなたに追いつきたい」
「俺に?」
「あなたのように静かで……鋭くて……でもどこまでも優しい あなたのように」
「……おまえ 俺のこと 美化しすぎ」
「いいえ それでも 構わない」
芥川にとって
陽塚の存在は 救いであり 絶望だった
他の誰かと話しているだけで 心が軋んだ
自分の名前を呼ばれたくて
自分の姿を見てほしくて
それだけで 一心に生きていた
「……芥川ってさ おかしいよね」
「どういう意味ですか」
「俺のこと好きなくせに 認めてくれって目で見るのおかしいだろ」
「……そうです 僕は あなたに 認めてほしい 好かれたい 俺だけを見てほしい」
「欲張りすぎ」
「……でも 叶えたいんです どうしても」
その目はまっすぐで 純粋で どこまでも危うかった
陽塚は そんな芥川に
ほんの少しだけ 微笑んでみせた
その笑みを見た芥川は
生まれて初めて
“このために生きてた”と
心から思った