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#うちはイタチ
琴葉つきね
979
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彼岸の痕跡を追い、たつまきの里を飛び出してから数日。
火の国の街道沿いにある打ち捨てられた宿場町で、私は最初の壁にぶち当たっていた。
「う〜……お腹すいた……お金も尽きた……」
原作の知識なんて何一つない私だ。旅のノウハウもなければ、どこに行けば彼岸の情報が手に入るかも分からない。ただ怒りに任せて飛び出したものの、野宿と干し肉の日々に限界を迎えていた。
その時だった。
ボカンッ!!
近くの廃屋から、激しい爆破音と煙が巻き上がった。
「ヒヒッ! 逃げられると思うなよ、抜け忍くずれが!」
「命が惜しくば、持っている巻き物と金を置いていきな!」
野良の山賊忍びたちが、誰かを囲んでいるらしい。お金や食べ物を持っているかも……! そう思った私は、身を隠しながら現場へ走った。
煙の渦の中にいたのは、二人の少年だった。
一人は、ボサボサの黒髪に目の下に酷いクマを作った、幽霊みたいな男。黒い羽織をだらしなく羽織り、今にも倒れそうな姿勢でハァ……と気怠げな溜息をついている。
もう一人は、腰まで伸びた美しい銀髪に、吸い込まれそうな紫の瞳を持った、息をのむような美少年。……だけど、その表情は怪しく歪んでいた。
「あぁん……♡ 恐ろしい顔をした男たちの怒号……鼓膜を刺すような粗暴な周波数……ゾクゾクしちゃう……! ん〜、本当、骨まで食べちゃいたい♡」
「……うわぁ、変な奴……」
物陰から見ていた私は、思わず引きかけた。なんだあいつ、顔はめちゃくちゃ綺麗なのに言ってることと顔が怖すぎる。
「おい、シズク……うるさい。声の振動が脳に響く……。面倒くさいから早く終わらせて……僕は寝たい……」
クマの男——マキナが、だるそうに袖からカチカチと音を立てる木彫りの人形を取り出した。
「ハッ! なんだそのボロ人形は! 叩き潰して……」
山賊が襲いかかった瞬間、マキナの指先から透明なチャクラ糸が伸びた。
ガキンッ!!
一瞬だった。
マキナの操る絡繰人形が不可解な動きで刃を跳ね返し、山賊たちの足首を仕込まれた鋼線で縛り上げる。
「な、なんだこの速さは!? 傀儡師(かいらいし)か!?」
「あー……縛るのめんどくさい……。ねえシズク、音で脳みそ揺らして気絶させて……」
「はぁい♡ 僕の愛の旋律(ソナタ)を聞かせてあげる……!」
銀髪の美少年——シズクが懐から金属製の笛を取り出し、軽く息を吹き込む。
瞬間、キーンと目に見えるような高周波の音波が空気を震わせた。
「ガ、ハッ……!? 頭が……!」
山賊たちは耳を押さえ、泡を吹いてその場に崩れ落ちた。「音響忍術」だ。派手さはないけれど、直接三半器官や脳に作用する、恐ろしく嫌な術……!
(すごい……! あいつら、ふたりとも強い……!)
感心した私が物陰から飛び出した、その瞬間だった。
「誰だ! 泥棒なら……あー、やっぱりいいや、面倒だし……」
マキナが死んだような目でこちらを振り返る。
だけど、私の顔——真っ赤な短い髪と、泥で汚れた顔を見た瞬間。
ズキュゥン!!
マキナの瞳に、見たこともない強烈な光が宿った。
「……ッ!!」
「えっ、何!?」
ガタガタと震え出したマキナは、フラフラとした足取りで私に近づいてくると、その場にドシャッと膝をついた。
「な、なに!? 降参!? 襲わないよ私!」
「……見つけた……」
「は?」
「僕の……運命の糸の先……。泥にまみれてもなお光り輝く、野生の太陽……。……アカネさん」
「え、なんで私の名前知っ……」
「僕と……結婚してください。毎日君のために新しい絡繰人形を作ります。だから僕を養ってください」
「はあああああ!? 何言ってんの唐突に!? 嫌だよ! ていうか誰!? キモい!!」
私が全力で拒絶すると、横からシズクが「うふふ♡」と妖しく笑いながら近づいてきた。
「無駄だよ女の子。このマキナは根暗で昼行灯の癖に、自分の『理想の乙女』に対する情熱だけは異常なんだ。……ちなみに君、僕の好み(美少年・美少女)からは程遠い絶妙なイモっぽさだから安心してね。全然食べちゃいたくないや♡」
「失礼だな!! 誰がイモよ!」
「ああっ……拒絶する顔も美しい……。アカネさん、僕の愛の傀儡になって……(ボソッ)」
「二度と話しかけるな!!」
話を聞けば、二人は旅の賞金稼ぎ(兼、シズクの『美しい音収集』とマキナの『引きこもり資材集め』)らしく、各国を渡り歩いているという。
「彼岸……? ああ、あの危険な抜け忍集団か。……興味ないな。面倒だし……」
「僕は興味あるよ〜♡ 彼岸の重力使い(イワド)や水蒸気使い(蒸月)の放つ音……きっと失禁するほど美しい音波なんだろうなぁ……♡ ああ、想像しただけで食べちゃいたい♡」
「シズク、お前……変態すぎる……」
マキナが呆れた顔をするが、私が「私は家族の仇を討つために彼岸を追ってるんだ!」と叫ぶと、マキナの目が再びギラリと光った。
「……アカネさんが行くなら、僕も行きます。君が死んだら、僕の心が死んでしまう……。僕の命は君のものだ、アカネさん……(ボソボソ)」
「声が小さくて重い!!」
「いーじゃん行こうよ〜♡ 僕も刺激的な音が聞きたいし! 君みたいな猪突猛進な子、見てて飽きないしね!」
こうして、愛が重すぎる根暗な傀儡師・絡繰マキナと、美形だが言動がアウトな音響使い・響シズクという、頭の痛くなるような二人が私のお供(?)になることが決まったのだった。
「……ハァ。父ちゃん、私、なんだか彼岸と戦う前に胃が痛くなりそうだよ……」
夕暮れの街道。
「アカネさん、今日の夕飯の野うさぎ、僕が解体しました。僕の愛だと思って食べて」「いらない!!」というやり取りを繰り広げながら、私たちの妙な三人旅が本格的に始まった。
コメント
1件
第3話読みました〜!! お腹すいてピンチのところに現れたのが、イケメン二人組だと思ったら……「結婚してください。僕を養ってください」って、マキナさんいきなりすぎて笑った😂 しかも「野うさぎは僕の愛だと思って食べて」はちょっと怖いけど憎めない。シズクさんの「食べちゃいたい」発言も悍ましくて好きです。胃が痛くなる三人旅、続き気になる〜!!