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制服に袖を通す。採寸された覚えはないが、ちょうど良い大きさだった。
「聞いたよーお兄ー!」
千夏は僕の呼び方が安定しない。
「発現おめでとね! てか今までは良かったけどさ、髪切ったら?」
千夏は僕の長く伸びた髪を勝手に三つ編みにした。
「切らないよ。お金ないし」
「えー? まあいっか、弄るの楽しいし」
危うく全ての髪の毛を三つ編みにされるという所で、時間がせまってきた。
⋯登校中⋯
「じゃね! 私、自分のクラス行ってくる」
真っ当に能力発現を果たした千夏の能力は『泥遊び』。
自然系能力開発クラスに所属している。
一方、僕は──
コンコン、とドアを叩く。
「お邪魔します」
木製のドアを開ける。
「おっ、こんな時期に珍しいね。編入生?」
出迎えてくれたのは、声の高い、ぱっつんで橙髪のヒト。
「おれ、三田、秋良。よろしく。で、こっちは⋯⋯」
奥にいた黒髪ロングの人がヘッドフォンを外して振り向いた。
「ささみ。キミは?」
綺麗な、女の人だった。
「入間千冬⋯⋯です⋯⋯よろしくお願いします」
「でねでねーここにいないけどねー⋯⋯」
食い気味な三田の声に、ドアの開く、ガチャ、という音が重なる。
「なんだ、見ない顔だな」
えらく低いところから、声に似合わない台詞が聞こえる。
「ナディア先生! これで揃ったね」
特別能力開発初級クラス。しばらくここで能力開発と授業を受けるらしい。