【虚無の貴方も愛してる】
※長編シリーズ
※小湊奏(オリ主)×小湊圭一
※二次創作・妄想・行為的表現等を含みます
※苦手な方はスクロールをお願いします
※通報しないでください
人気のない裏路地で、
小湊奏「え、兄さん…?」
小湊圭一「____」
兄を拾った
僕の名前は小湊奏
死んだはずの兄を裏路地で見かけ、戸惑っている元殺し屋兼半グレ、兼ケーキ屋だ
今僕が背負っているこの着流し姿の男は、僕の義兄である小湊圭一だ
彼は元々、半グレ組織「羅威刃」の幹部で
裏社会では「隻腕の処刑人」という異名を持つ殺し屋だった
何故僕が彼がここにいることに驚いているのかというと、
彼は既に、裏社会の厄災と呼ばれる拷問師 伊集院茂雄によって葬られている
だからここに居ること自体ありえないのだ
小湊奏「兄さん、聞こえますか?もうすぐ病院なのでしっかり…っ」
僕は混乱しながらも兄に声をかける、だが兄からは返事がなく指一本さえ動かない
そうこうしていると、目的の医者がすぐ目前に見えてきた
小湊奏「急ですまない、この人を診てくれないか?俺の兄なんだ、」
闇医者「分かった、すぐ診察室へ」
僕は兄を背負ったまま診察室のドアを通った
診断は思っていたよりも短く、数分程度で終わった
僕が診察室に入ると兄は俯いたまま椅子腰掛け、動かない
小湊奏「それで、兄はどうなんだ先生」
闇医者「うぅーん…実に説明しづらい状態でな、俺は彼のこの状態は心神喪失か一時的な植物状態だと思っている…」
医者が告げたことは僕の想像を超えることで、話を聞いても殆ど理解不能だった
そもそも、一時的な植物状態なんてあるのかが疑問だ
そう考えていると、医者は話を続けこういった
闇医者「今の状態彼の意識は朦朧としている。加えて自律神経が切れているのか自分の意識では体を動かせないときた、」
「誰かがしばらく引き取り面倒を見てやらないといけない状態だ」
小湊奏「面倒って…それなら俺が見るよ、回復する可能性はあるんだろ?なら俺はそっちにかけるよ」
闇医者「あぁ…それなら君に頼もう、君ならいろいろと安心だ」
「家族が近くにいてやれば心の支えにもなるだろうしな、」
そうして、僕と虚無(から)になった兄の不可解な生活がスタートした
それにしても…“家族” か…いうようになったなあのアホ医者
僕は家につくと、兄をベットへ座らせた
椅子は荷物や資料がおいてあり埋まっていて、
まともに座れるのは、この狭い部屋ではベットだけだった
座った、と思い僕が手を離すと、兄は力なくそのまま後ろへと引かれるように倒れた
小湊奏「兄さん…座るぐらいはなんとかしてくださいよ…」
僕は寂しい気持ちを抑え込み、兄の手を引っ張る
その時感じたのは兄の体温と鼓動、脈を伝う心臓の動きが僕の指先に伝わり
たまらない気持ちになった、僕は兄を引く手を逆におし、横になった状態で兄を抱きしめた
顔と顔の距離が近くなったことで、兄の呼吸や心臓の音が感じ取れた
ドクン…ドクンと、ゆっくり正常に動く兄の心臓、息を吸い、胸の膨らむ動きを体で感じ取る
僕は鼻の奥と目頭にジーンッとくるものを感じながら
溢れんばかりの思いを飲み込み、兄を抱く腕に力を加えた
小湊奏「ねえ、兄さん…こうしてくっついていると懐かしいね」
小湊圭一「……」
僕が話しかけるも、兄からの返答はない…
それでも悲しくはなかった
またこうして兄と居られるなら、離れなくてすむのなら、離さずにすむのなら…
無視されようが何をされようが関係ない、殴られようが蹴られようが今の僕なら耐えられる
小湊奏「兄さん兄さん…ふふ、大好きな兄さん、僕強くなりましたよ」
「兄さんみたいに頑張って修行して、毎日鍛錬を欠かさず行っていました」
「褒めてください、抱きしめてください…また名前を、呼んでください…」
僕は話しかけ続けた、でも返答はない…
小湊奏「ふふっ……兄さん兄さん、兄さんっ、兄さんっ♪…ふふ…おやすみなさい」
そしてその日は眠りについた、誰かと並んで眠るのは久しぶりで…本当によく眠れた
それからが大変だった
朝起きて着替える、兄を座らせる
朝食をとる、兄にも食べさせる
飲み込むことも自分でできないからすりおろした林檎なども用意してあげる…
一人で居させるわけにもいかないため、背負って仕事はに向かう
光夜兄さんには訳を説明しているため、兄さんは休憩室に居させる
たまに椅子から転げ落ちたりしていて、怪我をしたら困るので座布団を敷いておく
仕事が終わり家に帰る、お風呂は二人で入らないといけない
そして夜食、昼食の時も朝食の時と同様に僕が食べさせる
歯を磨き、髪を乾かしてとかす…そう繰り返し続け早く数ヶ月が過ぎた
そうしてすごしているうちに、僕にある衝動が見えだした
横になり無防備な格好で動こうとしない兄、心にモヤモヤとした黒い気持ちが溢れてくる
触れたくて触れたくて仕方がない
抑えることもできず口付けたことも何度かある…でも、兄は何も感じてくれない…
小湊奏「寂しいのは変わらないな…」
僕は兄さんの手を恋人のように握り、抱き寄せる…
何もできない感覚って、どんなのだろうとも考えた
好き勝手されても声一つでない、手を出して、突き放すこともできず受け入れ続け
身を開き続ける…どれだけ自分の尊厳が踏み躙られても関係なし
そう思うと、僕の衝動は一時的だが止められた
だが今日は少し違った
いつも以上に胸がモヤつく、なんならそれは苛立ちにも感じられる
怒り、悲しみ、寂しさ、愛おしさ、全ての混ざった変な感情…顔で表現もできない
気が付けば僕は、兄を押し倒したような体制で兄を眺めていた
自分を見つめる黒い瞳、あの時の青さを感じさせないほどに黒くそこの見えない沼のよう
唇をなぞる指を、口の中へいれる
前は拒絶反応を見せていた、なのに今はピクリとも動かない
口の中は暖かく、唾液もしっかり出ている、呼吸の流れや血の巡りも感じ取れる
僕は指を抜くと兄の下半身に手を当てた、白く滑らかな肌だ
あの時触れた感触そのもの、生きた温もりだ
そのまま僕は圭一を抱いた、軋むベットの音だけが部屋にこだまする
兄は声の一つもあげすただされるがままだ…
僕はずっと呼び続けた 「兄さん、兄さん」と
戻ってきて欲しかったんだ、ずっと寂しかったんだ
一人になるのは辛いし怖い、みんながそばに居てくれても、心だけはいつも孤独だった
贅沢な願いだというのはしっている、でも、それでも僕の心は空いたまま塞がろうとしない
大切なものを得ては失い、得ては失いを繰り返しているうちに何が大切で何がくだらないか
見当がつかないままとなった…
僕は動くことをやめた、兄は少しだけ呼吸が荒くなっていた
僕は…もう快楽どころでは無かった、顔は涙でぐしょぐしょだ
兄さんの頬までも濡らしてしまうほどにだ、僕は兄さんを抱き起こしそのまま動かなくなった
僕は謝り続けた、返答が返ってこなくても、伝えたかったから…
小湊奏「兄さん…大好きな……ごめんなさい…兄さん、兄さん…」
「こんな、情けない弟でごめんなさい、弱いままでごめんなさい、守れなくてごめんなさい」
「せっかくこうしてまた逢えたのに…こんなのあんまりだよね…」
「ごめんなさい兄さん…ごめんなさい」
もう何度目かも分からない謝罪の言葉を並べていた
兄さんを思うと胸が詰まった、ずっと後悔があったんだ
羅威刃の幹部になった頃から?…違う
飛鳥馬先生の道場で、修行をしていた頃から…それも違う
あの村に居た頃、兄さんが母さん達と暮らして居た頃からだ
それ以上も前かもしれない…ずっと後悔し続けている
僕の人生はきっと、これからもずっと後悔をし続けていくと思う
もう何もかもがどうでもいいと感じた…
そして兄さんを寝かせてあげようと離れた時だった…
小湊圭一「…–…–~−…」
僕の耳に小さな声が届いたんだ…聞き間違いと思った、
でもそれがら聞き間違いではないことはすぐわかった
兄の方を向く、兄の顔が、心なしか僕の方に向いている
いつも俯いていたはずなにのだ、そして口を微かながら動かそうして震えている
小湊圭一「ニ……サ……?…」
小湊奏「兄さん?…」
小湊圭一「…ニイ…ニ…ッサ…ン……?…」
小湊奏「兄さん、分かる?…ねえ分かるの?…」
小湊圭一「ニィ…サん…?ァ…ワ…」「…にぃ…さ、ン??…」
小湊奏「…ッッ‼︎」
兄さんは確かに僕の言葉を繰り返すように、「兄さん」と呟いてみせたんだ
小湊奏「ッッ…兄さぁぁんッッッ‼︎」
僕は感情が爆発した、兄さんが喋ってくれた事が嬉しくて号泣した
兄さんは、久しぶり喋って疲れたのかすぐに眠ってしまったが…
その日から毎日が少し変わっていった
兄さんは朝、僕が目を覚ますと同時に目を覚ますようになったそして少しずつだが
普通の食事も取れるようになった、力はあまり強くないが、自分で噛もうとする動きをとるようになった
そして前までは転がり落ちていた椅子からと落ちなくなっていった
最終的には自力で歩くことも出来るようになった
最初の頃は、起き上がるのに精一杯ですぐに転んでいたが
今では多少遠かれども歩くようになった、足を子鹿のように震えさせながら
すむうずに歩けるようになると徘徊を始めるようになった
たまに階段から転びそうで不安だが、そこは何とか教えるようにしている
そしてここ最近、また一つ出来ることが増えたのと、僕も兄さんのことで分かったことがある
小湊奏「兄さーん、か・な・で、ですよ?いえますか?」
小湊圭一「ァ……エ……?」
兄さんは言葉を話せるようになっていった
そして兄さんが話すには、僕も沢山話しかけなければならない
兄さんは僕が話したこと復唱し覚え、僕から聞いた指示で動こうとしている
つまり繰り返し同じことをいえばその言葉が話せるのだ
小湊奏「ほら兄さーん、か、な、で、まだ難しいですかね…」
小湊圭一「カ…ッあ……か〜〜ッ…ッ…な、えぇ…?」
小湊奏「惜しいッッ」
僕はそれを利用して、兄さんに名前を呼んでもらおうと考えた
仕事が終わった後、家事も片付けも終わらせて時間があれば名前呼びの練習だ
そしてその成果か…
小湊圭一「かな、で…かなでぇ~…ン〜ン〜奏っ…!……ン?」
小湊奏「よっっしゃぁぁあッ」
名前を呼んでもらうことに成功した
ここまで来るのに随分と時間はかかったが、
それもあってか達成感と高揚感は半端じゃなかった
そして最近の兄さんは、可愛いこともしてくれるようになった
僕が帰り、ベットに座ると膝に乗っかかってキスをしてくれた
疲れた時にこれはよく聞く、特にクレーマーの対応で苛立ちがマックスの時は
ストレスが一瞬で解消されるようで、幸せな気持ちで埋まるんだ
更には、行為に関しても感覚が徐々にはっきりしてきたのだろう
声を出すのも上手くなっていったんだ
小湊奏「兄さん、声を出すならもっと舌を出した方がいいよ…」
小湊圭一「こ、う?…ッ分かんない…ッン…///」
会話も成立し始めていて、昔のあの兄さんに会うのももうすぐな気がする
本当に幸せだ、兄さんがいるだけで毎日が明るいんだ…
ずっとこんな日が続いてほしいなぁ…
でもそんな幸せな日々は長く続かなかったんだ
それはある日の晩だった、僕達はいつものように声を出すための練習をしていた
小湊奏「兄さん、ほら…もっと僕のこと見つめて、感じたら声を出したらいいんだよ?」
小湊圭一「む、無理ッ///、わかん、ない…ッ」
僕と兄さんは互いのことを再び分かり合えるような仲になっていた
兄さんの好きなことも嫌なことも分かる、愛しいるからだ
兄さんは僕の背中に爪痕をのこしていればそれでいい、好きなだけ傷つけてほしいんだ
この傷が愛の証だから…
だが、その異変は突然、なんの前触れもなく現れた
小湊圭一「ぅッ…ゲホッ…ヴァッゲホゲホッ…ッ」
小湊奏「ちょ、大丈夫?兄さん、一旦深呼吸しなよ…」
最初は咳から始まった、最初はまだ何回か咳き込んで深呼吸を挟めば治っていた
だがその症状は徐々に苛烈さを増していったんだ
ある時は体の一部が焼けるように痛み、
ある時は体の一部の機能が途絶え使えなくなってしまったり、
そしてまたある時は五感がまともに機能しなくなり、咳き込めば吐血するよつになった
僕は心配になり、兄さんを寝かせておくようになった
仕事も連休を利用して、看病したりした
でも症状は悪化し続けた、その間、兄さんは何かに気がついていたのか
以前よりも笑顔が少なくなっていった
そしてついにその日は来てしまった
僕はいつものように昼食を用意していた、今日は兄さんの好きな手作りのスパゲティ
ちゃんと目玉焼きもつけてあげないと、とおもい卵を焼く
そうしていると、後ろから兄が声をかけてきた
小湊圭一「か、なで……ねぇ、かな、で」
小湊奏「ん?…!兄さん!起きちゃダメだよ、安静にしてないと…っ」
僕が駆け寄ると、兄さんは少し微笑んで「大丈夫、」と答えた
小湊奏「大丈夫って…昨日あんなに血を吐いたんだよ?!どこか悪いんだから、寝てなよ、」
そういった瞬間だった
兄さんの足から、ガクリと力が抜けたように感じその場に崩れるように倒れ込んだ
小湊奏「兄さん‼︎‼︎ッッ」
僕は兄さんを抱き起こすと、少しために揺さぶった
兄さんは何かを察したように表情を固くして、僕の方をむいた
小湊圭一「時間…みたい…ッ…」
小湊奏「え?……時間…?何いってるの、」
小湊圭一「奏…ごめんね…」
「僕、もう此処には居られないや」
小湊奏「え…ッッッッ?…」
小湊圭一「時間が、決まってたんだよ……感覚を得て、数ヶ月…そうなる前を含めて一年」
「それだけでいいから奏のそばにいたいって、約束したの……」
小湊奏「約束って、誰とだよ‼︎」
小湊圭一「ごめん…ね…それは言えない…んだ………本当…に…ごめん…」
そういう兄さんの身体は少し透けかけて見えた
小湊圭一「奏……最後に一つ、お願いがあるんだ……」
小湊奏「最後なんて言わないで、なんでもするから行かないでよッッ‼︎」
小湊圭一「……僕がこのまま消えて、もし生まれ変われたら、また…君のお兄ちゃんになってもいい…?……」
小湊奏「ッッ…!…ッッ」
小湊圭一「またみんなで居たいんだ、家族…だから、…かな…?……」
小湊奏「に、兄さん?…ッ」
小湊圭一「……ごめんね…____ッ」
小湊奏「ヤダッ‼︎いかないで‼︎一人にしないで‼︎もう一人は嫌ッ…苦しいのも嫌だ‼︎‼︎」
「死なないで兄さん‼︎もう兄さんのこと1人にしないから、家族みんなで一緒にいるから‼︎‼︎」
「母さん達も僕もいるからッッ‼︎‼︎…お願い……!死なないで‼︎‼︎戻ってきて‼︎‼︎」
小湊圭一(その泣き顔…)
(泣いた時の僕達に、そっくりだ……っ)________
そして兄さんは光の粒となって消えていった、腕にはまだ兄さんを抱きしめていた時の温もりが残っていて、
近くには兄さんの着けていた、母さんの形見である髪飾りのようなものが落ちていた…
小湊奏「ッ兄さん…ッ兄さぁぁぁんッッッ!いやぁぁあッッ嘘だっていって‼︎
また1人にしないで‼︎‼︎名前呼んだよ‼︎奏って!‼︎ねえ‼︎‼︎兄さんッッッ兄さんッッッ…‼︎……」
その日の空は雨だったが、兄さんが光になって消えた頃、空は晴れていた
太陽はまるで、兄さんを迎えにきた母さんの笑顔のようだった…____
END
コメント
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めっちゃ切ないお話ですね...、でもめっちゃ素敵なお話✨