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「――いっつも不思議に思うのだけれど……。――雷さんの身体ってどうなってるの? ――アタシ、確かに細身とは言われるけれど、だからって、云うほど軽くはないはずなのに……、よく軽々と持ち上げられるわよね……」
雷に軽々と抱き上げられてはベッドに運ばれ、その身をシーツに降ろされてから、存分に互いの熱を貪り合って過ごした、その後――。
ようやっと眠気を覚えるほどの気怠さに身を浸しながら、法雨は問うた。
雷は――、そんな法雨のしっとりとした前髪を優しく避けるようにしてやると、ほんの寸分前まで味わっていた熱の余韻を楽しみながら、穏やかに紡いだ。
― Drop.030『 The SUN:U〈Ⅲ〉』―
「そうだなぁ。――仕事柄、人並みよりは鍛えてあるけれど……、身体自体は人並みのはずだよ。――だから、それでも、軽く感じるという事は、――やっぱり、法雨さんが軽いんじゃないのかな?」
そんな雷に、法雨はやはり納得がいかない様子で言う。
「ううん。――でも、雷さん。――言っておくけど、“身体が人並み”の人は、――“あんな分厚い鉄扉”、蹴破れないと思うのよ。――ちゃんと鍵だってかかってたのに……」
その法雨に、非常時とは云え、大分と荒っぽい事をした――と自覚している過去の行いを思い起こした雷は、苦笑して言う。
「あぁ。ははは。そうだな……。――まぁ、“アレ”は俺も、火事場の馬鹿力だったと思っているよ……」
そんな雷に、法雨はさらに追及を続ける。
「そうは言っても、その“火事場の馬鹿力”も、――元々“剛腕”でない人は、その馬鹿力も出せないと思うわよ? ――まぁ、この立派な腕一本でも、“人並みじゃない”のは、分かるけれど」
そうして、何としても“人並み”と云い張る雷に反論を紡ぐと、法雨は眼前のその太い腕をつつとなぞる様にして続ける。
「――まぁ、アタシは、そんな超人的で不思議いっぱいな雷さんが、とっても魅力的だとは思うから、――全然いいんだけれどね」
雷は、それに目を細めて笑むと――、腕をなぞる法雨の手を、その大きな手でやんわりと包む様にして言う。
「それなら良かったよ。――まぁ、経験豊富な法雨さんの事だし、そのくらい非凡の方が飽きなくていいんじゃないかい?」
法雨は、それに艶やかな笑みを浮かべて言う。
「ふふ。そうね……。――雷さんには一生、“飽きてあげられない”と思うわ」
雷は、そんな法雨に笑んでは、愛しげに口付けて言った。
「それは嬉しいな」
法雨は、それに応じる様にして啄み返すと、人差し指で雷の口元をそっと封じる様にして言った。
「――はぁ……。それにしても……。結局また我儘しちゃったわ……。――アタシも、雷さんみたいにちゃんとした大人なら、きっと、“お風呂で楽しんだ分”だけでおしまいにできるのよね。――でも、今夜も“大人”にはなれなかったみたい。――そろそろ“大人”にならなきゃって思うのに……。――雷さんにはつい甘えちゃうわ……」
雷は、そんな法雨の愛らしさに微笑むと、口元を封じているその手と指を絡めるようにし、やんわりと封を解いては言う。
「いいんだよ。君はそのままで。――俺は、そんな君を愛しているし、――そんな君が、俺に我儘を言ってくれる事が、俺の幸せなんだから。――それに、せっかくのクリスマスだったんだ。――いつも以上に我儘を叶えさせてもらわないと、俺も“物足りない”よ。――とは云っても……、――日付としてはもう終わってしまっているけれど」
そして、そう紡ぎ終えた雷が、艶やかなレモン色にもそっと口付けると、その腕の中、法雨は嬉しそうに零した。
「ふふ。――大丈夫よ。雷さん。――アタシのクリスマスはね、眠るまで終わらないの。――まぁ……、だからってあまりに熱く甘やかされると、いつか本当に溶けちゃうかもしれないから、――甘やかし過ぎは厳禁だけど」
そんな法雨の髪を優しく撫でながら、雷は言う。
「おや。――そうなのかい?」
法雨はそれに、上目遣いに小首をかしげては言う。
「えぇ。そうよ」
すると雷は、
「そうか。そうか。――それは良い事を聞いたよ」
と言うなり、法雨を撫でる手を離しては、しばし身を起こした。
そして――、何やら半身を背後のサイドテーブルに向けると、引き出しを開けるなり、何かを取り出しながら言う。
「――それじゃあ……、――君のクリスマスに間に合うよう、――今、渡しておこうかな」
「アラ、なぁに? ――何かあるの?」
そんな雷に、心なしかわくわくとした様子の法雨が、その長い尾をシーツの上で泳がせて問うと――、隠すようにして自身の背の後ろに何かを置いた雷は、体勢を戻して言う。
「うん。――はじめは、昨晩渡せたらと思っていたんだけどね。――でも、“これ”は流石に、忙しなくしている時に贈るものでもないなと思ったから、――クリスマスは過ぎるが、遅れてでも、お互いに落ち着ける時に渡そうと思っていたんだ」
そんな――わくわくとした様子の法雨であったが、続いて紡がれた雷の言葉を受けると、しばし動揺して言った。
「えっ。な、何かしら……。――“落ち着ける時に”って……、――そんなにしっかりした贈り物なの? ――クリスマスプレゼントなら、昨日、あんな素敵なネックレスを贈ってくれたでしょう?」
もちろん、法雨は、先ほどの雷の言葉や様子から、何やら嬉しいサプライズがあるらしい事までは察していた――のだが、昨晩に“しっかりとした”贈り物を受け取っていただけに、それは、“可愛らしい”サプライズであろうと思っていたのだ。
しかし、雷が続けた言葉から再考すれば、どうやらそれは、“可愛らしい”贈り物ではないようである。
「何だと思う?」
雷は――、そうして、そのサプライズの予感だけでも十分に動揺している法雨に悪戯っぽく笑むと、焦らすように問う。
法雨はそれに、眉根を寄せては一生懸命に考えながら言う。
「ううん。何かしら……。――もう。――たっぷり愛してもらった後だから、頭が回らないわ……」
雷は、その一生懸命な様子を愛おしげに眺めながら、
「頑張って」
と言っては、法雨の髪をやんわりと撫で、回答を待った。
そんな雷に見守られていた法雨は、しばらく悩み続けた結果――、諦めた様に脱力すると、言った。
「――はぁ。駄目。――今のアタシの推理力じゃ、お花の冠しか出てこないわ……。――ごめんなさい。雷さん。――降参させて」
雷は、そんな法雨の回答に楽しげに笑うと、言った。
「ははは。お花の冠か。――それでも良かったかもしれないね。それも、美人さんの君にはよく似合うよ。――でも、残念……。――“冠よりは少し小さめ”なんだ」
「え……?」
そして、そんな雷は、法雨に寄り添うようにすると、背後に控えさせていたサプライズをすっと手に取り、法雨の目の前に据えては、言った。
「メリークリスマス。法雨さん。――どうか、この先もずっと、俺の傍に居てほしい。――だから、良かったら“これ”も、受け取ってくれないか」
「――え……、あ……、雷さん……。――その……、――これって……」
そうして、雷が法雨に贈ったのは、美しい装飾が施された、小さくも上品な翠色のジュエリーケースであった。
「――開けてみて」
そんな、凛とした佇まいに思わず身を起こした法雨は、その贈り物を両手で受け取ると、雷に促されるまま、ケースの淵に手をかけた。
そんな法雨の鼓動は、たちまち壊れそうなほどに高鳴り始めると、主人を急かすようにした。
その高鳴りに急かされる中、法雨の指は、小さく震えながらも、ゆっくりと翠色のケースを開いては、雷からの想いを、揺れる金色の瞳に映していった。
「――………………」
そうして、その瞳に映されたのは――、透明の小さな煌めきたちと共に、天に向けその翠色を輝かせる銀輪であった。
その銀輪の頂きを気高く彩るのは、数々の小さなダイヤモンドたちと共に天で輝く翠玉――エメラルドであった。
そんなエメラルドは――、法雨の誕生石でもある。
「――こんな素敵な贈り物……、――アタシが受け取って……いいの……」
その金色に、愛で美しく輝く銀輪を映しながら、法雨は、声を震わせて紡ぐ。
雷は、そんな法雨の肩を優しく抱き寄せるようにして贈る。
「もちろん。――この贈り物を受け取れるのは、君だけだから」
その雷の言葉に、喜びの雫で艶めく法雨の金色は、艶やかな輝きをさらに増してゆく。
「嬉しい……。――雷さん。本当に有難う。――もう、アタシ……、――こんな幸せ続きで……、この先大丈夫かしら……」
そんな法雨が、赤らんだ頬を一筋の雫で濡らすと、その身を優しく抱き包むようにして、雷は紡ぐ。
「大丈夫さ。何も心配は要らない。――この先の君も、――この先の君の幸せも、――そのすべてを、俺が永遠に護るから」
法雨は、その雷の腕の中、深く大きな愛に笑んでは、幸せを零す。
「ふふ。心強いわね……。それなら、安心だわ……。――……雷さん。――本当に……、――本当に有難う……。――アタシ……、――今……、すっごく幸せよ……」
雷は、その法雨のレモン色を愛でては、胸を満たす幸福感に浸る。
「こちらこそ、受け取ってくれて有難う。――俺も、すごく幸せだ」
そして――、その愛しきレモン色にひとつ口付けては、法雨の顔を伺う様にしてやんわりと身を離すと、眼前で美しく煌めく金色とその海色を交え、最愛の彼へと紡ぐ。
「――愛してるよ。――法雨さん」
その愛に、また一筋と頬を濡らした法雨は、両の手をそっと雷の頬に添えると、最愛のオオカミに微笑む。
「アタシも……、――アタシも、心から愛してるわ。――雷さん。――こんなアタシを、こんなにも愛してくれて……、――本当に有難う……」
そして、共に愛を贈り合った二人は――、そのすべての想いを注ぎ合う様にして、互いを引き寄せ合った。
💎
「――ふふ。――もう……。――せっかく眠れそうだったのに、――あまりに幸せすぎて、また目が醒めちゃったわ」
「ははは。――それは悪い事をしてしまったな」
その最愛の人を二度と手放すまいとするかの様に、強く強く抱きしめ合いながら、幸せを贈り合った二人は、その後――。
ようやっとその身をシーツの中で休めると――、身を寄せ合っては、そのかけがえのないひと時の中、くつくつと笑い合う。
「――ねぇ。雷さん」
「ん?」
その中、微笑む雷の胸元に手を添え、輝く金色で見つめると、法雨は続ける。
「アタシのクリスマスはね、眠るまで終わらないの。――だから、雷さん……。――今日は、もう少しだけ、こうしてお話ししていて……。――この幸せを、もっと強く、この身に刻み込んでおきたいの……」
その法雨に、雷は、目を細める様にして愛おしげに笑むと、その――低くも、酷く酷く優しい声で、彼の願いを包み込む。
「君が望むなら、ぜひそうしよう。――そうだな……、それじゃあ……、――今から……、――俺たちのこれからの事について、話そうか……」
法雨は、そんな雷に、愛を込め――、
「とっても素敵ね……。――えぇ。――ぜひ」
と――、陽光煌めく笑顔を贈った――。
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