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「じゃあ、一緒にしてみます?」
「うん」
それから、わたしは圭翼くんと自分磨きを始めた。彼が調べたことを聞いて、できることから実践していく。
「最近、これを始めてみたんですよ。
永野さんもやってみてはどうでしょうか?」
圭翼くんは、バッグの中から一冊のノートを取り出した。
「理想の自分をノートに書き出して、それを今後の目標にするんです」
「スマホでも大丈夫かな?」
「紙の方で。頭の中で考えるだけではなく、目標を可視化することが大事です」
「なるほど。そこまで考えたことがなかった。
圭翼くん、すごいね」
素直にそう言うと圭翼くんは顔を赤くして、片手を降って否定する。
「これくらい全然大したことは……、いや、違う。素直に受け取ることが大事だ。
ありがとうございます!」
「わたしもやってみるよ」
なりたい自分になるため、目標を書いたノートを見て日々行動していくか。
小さな声だと言われないようにする、自分に自信を持つ……。
もっとあるけど、今の自分が最も変えたいと思う部分はこのふたつだ。
改善するためには、はっきりと話す。自信を持つために成功体験を増やす。
そのためには……。
手を止めながら、理想の自分を思い描いて書き出していく。
いざ自分のことを考えてみると難しい。
でも、今になって大切なことを知る。
わたしは、現状に満足して努力さえしようとしていなかった。
そして何より、自分に向き合えていなかったんだと――
次の日も、また次の日も、圭翼くんと話しながら自分磨きに励んだ。
「外見を磨くことも自信に繋がるんだね。
わたしは、服とか興味なかったし、無関心だったなって思う」
「可愛いからそのままでもいいような」
「ううん。自信を持つために、きれいになりたい。
圭翼くんは、その長い前髪を切ったら変わるんじゃないかな」
「確かに。今まで気にしてなかったですけど、邪魔だなって思うようになりました」
ひとりになってからも、わたしは自分と向き合った。
姿勢がいいと今よりも大きな声を出せる。猫背だから気をつけてみよう。
怖いけど、相手の目を見て話す努力をしよう。なるべく笑顔で。
くせ毛が気になるから、縮毛矯正をしてみようかな。
可愛いけど自分には着こなせないと思って諦めていた服を着てみよう。
雑誌や動画を見て、メイクの仕方も勉強しよう。
自分磨きをして今まで見てきた暗い世界が変わった気がする。……青い空のように広くて輝く世界に。
休憩時間に圭翼くんとよく話すようになってから、他の人に「付き合ってるの?」と聞かれることが増えた。
否定しているけど、失恋したことがきっかけで友達のように仲良くなれた気がする。
一ヶ月経った頃には、わたしのことを名前で呼ぶようになった。
「明香里ちゃん、公園に散歩に行きません?
散歩はストレス発散にいいらしいです」