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クッキー
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学校が終わった。
みんなと別れて、俺は一人で家に帰る。
玄関を開ける。
すち「ただいま帰りました」
返事はない。
母さんは朝から仕事に出ている。
帰ってくるのは、俺が寝たあとになることが多い。
俺は靴を揃えて、鞄を置く。
制服から部屋着に着替える。
時計を見る。
父さんが帰ってくるまで、まだ少し時間がある。
その間に、やることを終わらせる。
洗濯物を取り込む。
畳む。
掃除をする。
夕飯を作る。
テーブルを拭く。
父さんが使うものを出しておく。
一つずつ終わらせていく。
これがいつもの夜だった。
父さんは俺を息子としてみていない俺を奴隷としてみている。
玄関が開く。
父「帰ったぞ」
俺はすぐにリビングへ向かう。
すち「おかえりなさい」
父「飯」
すち「はい。できています」
料理を並べる。
父さんが椅子に座る。
父「水」
すち「はい」
水を出す。
父「箸」
すち「はい」
箸を置く。
父「醤油」
すち「はい」
醤油を渡す。
父さんは礼を言わない。
俺も気にしない。
それが普通だから。
父さんが食べ始める。
俺は少し離れたところに立っている。
父「お前、飯は」
すち「あとでいただきます」
父「そうしろ」
すち「はい」
父さんがテレビを見る。
俺は台所に戻る。
洗い物を始める。
しばらくして、父さんから声が飛んでくる。
父「すち」
すち「はい」
父「風呂」
すち「沸いています」
父「タオル出しとけ」
すち「はい」
タオルを用意する。
父「着替えも」
すち「分かりました」
着替えを脱衣所に置く。
父「あと、明日の朝は六時」
すち「はい。六時に起こします」
父「新聞取ってくるの忘れるなよ」
すち「はい」
父「ゴミも」
すち「はい」
父「洗濯は朝までに終わらせとけ」
すち「分かりました」
次々に言われる。
でも、俺は一つずつ覚えている。
言われたことを忘れない。
忘れたら、また言われるから。
父さんが風呂に入っている間に、洗濯機を回す。
ゴミをまとめる。
新聞を確認する。
明日の朝に必要なものを並べる。
それから、やっと自分の夕飯を食べる。
冷めたご飯を一人で食べる。
(今日も普通だな)
特別なことは何もない。
毎日こんな感じだ。
父さんが風呂から出てくる。
父「すち」
すち「はい」
父「ドライヤー」
すち「はい」
ドライヤーを渡す。
父「そこ置いとけ」
すち「分かりました」
父さんが自分の部屋へ戻る。
俺は洗濯物を干す。
時計を見る。
もう遅い。
スマホを見ると、らんからメッセージが届いていた。
『明日、朝一緒に行こ!』
俺は少しだけ笑う。
(明日も学校では、いつもの俺)
スマホを伏せる。
父「すち」
すち「はい」
父「まだ洗濯やってんのか」
すち「はい。もう終わります」
父「終わったら水飲んで寝る。明日六時だからな」
すち「はい」
父さんの部屋のドアが閉まる。
俺は最後の洗濯物を干す。
(六時に起こす)
(朝ごはんを作る)
(ゴミを出す)
(洗濯物を片付ける)
頭の中で明日の予定を確認する。
そして、電気を消した。
明日の朝になれば、またいつもの俺に戻る。
学校では、ちゃんと笑える。
それでいい。
コメント
1件
うわあ…読み終わってしばらく言葉が出なかった。この「普通」の積み重ねが、じわじわと胸に刺さるね。父さんの一声一声に返る「はい」の連続が、まるで呪文みたいで、すちくんの日常の重さを感じたよ。特に「俺は少しだけ笑う」のところが切なくて、学校で“ちゃんと笑える”自分でいるしかないんだなって…。続きがすごく気になるよ。