ふと目が覚めて時計を見やると、時刻は12時58分…なんとも言えへん時間やなぁ…
一度目が覚めてしまうともうダメだった。
「寝れねぇ…」
ごろごろと無意味に布団の上を転がる。
“明日お前を迎えに行く。準備をしておけ、わかったか……いいな?異論は認めない”
準備…って言われても。
時計の針がカチカチと音を立てて進む。
カチ、ゴーンゴーンゴーン…
時計の針がピッタリ0時を指すと同時に、低い鐘の音が鳴る。
…鐘の音?おかしい。この世界に鐘はない。
同じような音を出せる物も無いはずだ。
異様な音に、眼下のあちこちの建物の灯りがともり始める。
ゴーンゴーンゴーン…
鐘の音に合わせてしゃなりしゃなり、と神楽の鈴の音が鳴る。ひとつ、ふたつ…それよりももっと沢山。数えきれないくらい。
ぱっと火の粉が舞い上がる。
建物が燃えている。悲鳴が聞こえる。
ハッと慌てて窓から飛び上がり急いで消火を始める。
呆然としているうちに、らっだぁ達は来ていたのか既に妖達の非難を進めていた。
「らっだぁッ!!どうなってんねや!!」
「落ち着いてきょーさんッ!!大丈夫、外界から侵入者が来たんだ!!」
「ッ!らっだぁ!!」
「それはッ!!」
レウやコンちゃんが慌てて止めるが、もう遅い。聞こえてしまった。
外界からの、侵入者…アイツ…あのクソ親父が?…まさか……!!
怒りが込み上げた。
…連れ戻すためにここまでするか?
神楽の音の発生源に、今までに無い速さで弓を片手に向かう。殺してやる。
俺から居場所を、自由を、仲間を奪うヤツは全員ぶっ殺してやるッ……!!
神楽を舞うのは見知らぬ女達。
クソ親父の姿は見えなかった。
「…死ねよ」
ヒュンッと鋭い矢は女達の脳天を直撃………しなかった。誰かが矢の軌道を無理矢理変えたらしい。
誰かはすぐに分かった。エメラルド色の瞳が焦りでゆらゆらと揺れている。
「どりみー…どけ…」
「オ、落チ 着イテ!!」
「どけってッ!!」
胸ぐらを掴み上げると、空中でどりみの足がふらふらと揺れた。まだ体調は万全では無いはずだ。
なのに、どりみの華奢な体のどこからそんな力が出せるのか、すごい力で俺の胸ぐらを掴み返してきた。
「落ち着けって言ってんだろッ!!!」
「っ!!」
掴んでいた手を力無く手放す。
「親父かもしれへん…」
「キョーサンハ、ドウシタイノ」
「〜ッ… かえりたくないっ!!」
「ウン」
シンプルで、飾りっ気のない言葉が返ってくる…それがあまりにもどりみらしくて。
「ふ、ははっ…」
「ハ?」
「何でも、無い…ふふっ」
状況も忘れてひとしきり笑う。
どりみはフラフラしていて今にも真っ逆さまに落ちてしまいそうだった。
「どりみは戻って、らっだぁ達呼んでや」
「ヤダ」
「どりみ、俺のため思ってやってくれや」
ちょっとずるいかもしれんけど、これが1番どりみには効くんだよな…
渋々といった様子で離れていくどりみを見届けてから、もう一度矢を放つ。
今度は女達じゃなく、神楽の鈴や鐘を確実に貫き、破壊していく。
地上に降りて、慌てふためく人間をひとりひとり確実に昏倒させる。
ドサッ…
「これで…最後、やな……」
ふぅ、と一息をついてあたりを見渡す。
やはりあのクソ親父の姿はない。
一旦らっだぁ達のとこに戻るか…
「ら、だおッ!!??」
悲鳴のような絶叫が聞こえた。
嫌な予感しかなかった。
とさり、と軽い音を立てて倒れた。
地に伏すのは仲間達。
俺を認めてくれた、かけがえのない仲間。
「らっだぁ!どりみッ、レウ!!コンちゃん!!何がっ!?どしたんや!起きろ!!」
起きない仲間に縋り付いているとしゃん、と壊したはずの鈴の音が鳴った。
「っ!!誰、や…」
背後から首を絞められ、身動きが取れなくなる。何故か力も使うことができなかった。
つぅ…と涙がこぼれた。
どうも、チェシャで御座います。
運営のみんな、死んじゃったのかなぁ…
大丈夫、チェシャはハピエン厨です。
充電あと1%!!
それでは!!
また次回!!
コメント
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充電1%までこの作品を書いてくれてありがとうございます