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第十九話
一歩
「クロスボウっていっても……色んな種類、あるんだね」
「せやなぁ……あ。これはシャルと同型やな」
「見せて……あれ? でも、所々違う……気が、する」
「そりゃシャルは、うちのクセもついとるし。うちの使いやすいようカスタムしてるからなぁ……」
「へぇ……」
――ピンクだけじゃなかったんだ……カスタム。
「これなんか、どや? シャルよりは少し大きいけど。大きさ的に馴染むんとちゃうか?」
「……」
皇刃くんは手に取ったクロスボウを見つめました。
手には馴染む。
けれど――これを使っている自分の姿が、どうしても想像できない…皇刃くんは、そっと棚に戻しました。
「……ちょ、っと……違うかも……」
「そうか……」
椥辻さんは少し考えると、皇刃くんに尋ねます。
「なぁ、可威はどんな局面でシャルを使うたん?」
その言葉に、皇刃くんの肩がぴくっと震えました。
あの時は、ただ夢中だった。
みんなが死んでしまう。
そう思ったから。
「……ただ夢中だったから……呪蠍の身体、を痺れさせなきゃ……とか……早乙女さ、んに早く……薬を渡さなきゃ、とか……」
「そうか……」
椥辻さんは何かを考えるように呟きます。
「……うちとは使用目的が異なる……なら……」
それから椥辻さんは、ブツブツと呟きながらクロスボウを見ては手に取り、また棚に戻すことを繰り返していました。
「な、椥辻さん……?」
「……!! これ、どやろうか」
そう言って差し出されたのは、木製のクロスボウです。
椥辻さんのものより少し大きい。
皇刃くんはそれを受け取ります。
そして――
「……」
不思議と、違和感がありませんでした。
手にしっくりと馴染む。
これを使っている自分の姿も、容易に想像できました。
「椥辻さん! コレ、すごいよ……違和感ないし。すごく手に馴染む!!」
皇刃くんの表情が、初めて明るくなりました。
「僕、この子と……長期討伐、行くよ」
「そうか!」
椥辻さんも嬉しそうに笑っています。
「なら、コレはうちからプレゼントさせてーな」
「え!? そんな、貰う理由なん……て……ないよ……?」
「ええねん。うちの感謝の気持ちやから……な?」
にっこりと笑うと、椥辻さんは皇刃くんの背中を押した。
「ほな、ここで待ってて。うち、会計するよってから」
「え、あ……」
パタン。
店のドアが閉じる。
皇刃くんは店の外に出されてしまいました。
その一方で、椥辻さんは店主のところへ戻ります。
「これ、ラッピング頼むわ……それから……カスタム。頼みたいねんけど……」
「……はぁ……」
皇刃くんは、緊張しながら椥辻さんを待っていました。
今まで、自分が自分の意思で避けていた武器。
それを――
今度は、自分の意思で手にすることを選んだ。
それは、皇刃くんにとって、とても大きな一歩だった。
「僕、にも……出来る、ことはある……逃げな、い……!!」
「お待たせ、可威。ほな、行こうか、可威」
ラッピングされたクロスボウを手渡され、皇刃くんはそれを強く抱き抱えた。
そして、椥辻さんの後を追います。
「待ってよ、椥辻さん!」
長期討伐で、新たに手にした武器。
その武器と共に戦う皇刃くんの姿が、今から楽しみです。
コメント
1件
皇刃くんが自分の意志で武器を選ぶシーン、すごくじーんときたよ…!😭✨ 椥辻さんが「プレゼントさせてーな」って優しく背中押すのも、カスタムってシャルだけのピンク色じゃなかったんだって気づくのも、全部がエモすぎる…。手に馴染むクロスボウ見つけて「この子と長期討伐行く」って言えた皇刃くん、確かに大きな一歩だね。これからの戦いが楽しみすぎるよ!🔥💕