──────めめさん視点──────
八幡さんに抱えられ、私の部屋へと向かう。その間にも、声を出そうと試みるが声の代わりに息が吐かれる。八幡さんは私の抱え方をおんぶへと切りかえ、小さな声で、囁くように私をあやしてくる。
「大丈夫ですよ〜。直ぐに、治りますから。今は、何も考えなくて大丈夫ですから。安心して身を委ねてください。」
そう、言われると。私は無理に声を出そうとするのを諦め、八幡さんの言う通りに何も考えず、体重をかける。…と、言っても死神なんてほぼ死んでいるようなものなのだから、体重と言ってもさほどないが。暫くぼーっとしていると、八幡さんから声がかかる。
「めめさんの部屋入っても大丈夫ですか?大丈夫なら、なにかリアクションしてください。」
前を見れば既に私の部屋の前だったらしい。私は、八幡さんにそう促され、八幡さんに軽く頭突きする。これでわかるだろう、そう思い、私は前を見れば、八幡さんは笑って「りょーかいでーす。」そう言って、ガチャリックスピンと私の部屋を開ける。鍵が掛けたような気がしたが、どうやらかけ忘れたらしい。まあ、結果八幡さんに鍵を渡す手間が省けたので結果オーライのようなところはあるが。
そう思っていると、八幡さんにベッドに丁寧に置かれる。普通に投げ飛ばされると思っていたので、こうも優しくされると不思議と喜ばしく思う気持ちがある。
「…大事な話をしたいのでドアを閉めてもいいですか?」
八幡さんが真剣な眼差しを私に向ける。…わざわざ、ベッドの上で寝ている私と視線が合うように、しゃがんで。私は、こくりと頷くと、八幡さんは安堵したかのようにドアを閉める。
──────ガチャリ。
金属のような、そうでは無いような、曖昧な音とともに、ドアの前に結界が現れ、青白い光で構成された魔法陣が、紋様のようにドアに刻まれたかと思うと、その魔法陣は拡大していき、ドアを覆い終わると、魔法陣が薄い壁のようになり私のドアをより強固にする。私なりの防犯対策で、鍵を閉めるだけで発動される。防音や、盗聴阻害などの効果もつきつつ、この部屋の強度が上がる。レイラーさんを信用はしているが、こういう個人個人の防犯対策も大切だ、と心の中で思っている。
「…めめさん。覚えていますか?」
八幡さんがそう言って、ベッドの上に座る。角度的に私のベッドからは表情を読み取ることが出来ない。何を思って言っているか、推測は不可能だった。
「あ、返事はしなくていいです。一方的に話しているだけってことにしておいて下さい。…ここからは、私の本心です。」
本心、という言葉にドキリと心臓が跳ねる。八幡さんはいつも狂人のような行いしかしないし、自身の気持ちなんて言うことはほとんどなかったのだ。これは珍しい、と胸を高鳴りさせる。
「私達が初めて出会ったのは…実は、4億年前なんですよ。」
…そんなに経っていたのか、と私はしみじみ思う。月日というのはあっという間でそんな前だったことに気づかなかった。
「…4億年前の、私めめさんに負けて。自分より強い人なんていないって思ってたからなかなかに衝撃的だったんですよ?しかも、相手は少女のような姿と来た。プライドも、メンツもズッタズタになりましたよ。…でも、あの時、手を差し伸べてくれて、嬉しかったです。差し伸べられてなかったら、今頃殺戮マシーンのごとく無差別に殺しでもしてたでしょうから。」
そう考えるとゾッとする。八幡さんのような強者が殺戮を行うなんて…。なかなかな恐怖体験になりそうだ。
「そう、そこから私は、あなたの事を尊敬して、敬愛して、信仰して…あなたの部下にもなって、時には意見が対立して…。そんなバカ騒ぎを、何千年もして、楽しいと思って。この時間以外いらないとさえ思えた。
──────のに…。」
その一言で、私の部屋の温度が何度か下がったかのような錯覚が私の体を埋め尽くす。私の頭が危険信号をだす。メキメキッバギッと異様な音と共に、八幡さんからドラゴンらしい、大きな、逞しくも、見たものを震え上がらせるような強い恐怖を抱くほどの翼をばさりと広げ、角を生やし、メキメキと成長していく。私は、素早く、ベッドから飛び降り、鎌を構える。のに、八幡さんは武器すら構えようとせず、たんたんと話を続ける。
「あなたは、『勇者』を選んだ…!!ただの食料の反逆に過ぎないのに…!!人間側に加担した!!しんっじられないッッッ!!!!私の数千年よりも、数十秒を優先した、あなたをッめめさんを許せなかったッッ!!!!」
八幡さんの長く伸びた爪が、ベッドに食い込む。ベッドからは、羽毛が舞い散り、悪魔を、天使のように彩る。
「そう…!!それで目が覚めた!!私は、龍。生きている物死んでいるもの含めて最年長の…!!欲しいものは、金を使っても、汚れた手を使っても、何を使ってでも手に入れる…!!!神に創られ、神に捨てられた私は、闇に、深淵に落ちるしかなかった…!!!」
八幡さんは、この部屋に来て、初めて私に顔を見せる。目を閉じて、全てを諦めたかのように笑った後に、その、右目を、左目を、瞳を開眼させる。──────闘志に燃え上がるらんらんとした輝きを持つ金色の瞳には、私しか映っていない。一瞬、私が八幡さんの瞳に閉じ込められたかのような錯覚が身を襲う。しかし、そんなことは無いはずだ。
「やっと…。やっと掴めたチャンス。大切に、大切に扱おうと思っていたのに…。無理みたい。だって、この戦争。普通にめめ村の人達が死ぬレベルの戦いなんだから。めめさんがいつ死ぬかと思うと、気が気じゃないですわ〜。だから、手に入れる。何を使ってでも…ね?嫌われるかもしれなかったから、嫌だったし、正直この方法は嫌だけれど、仕方がないですよね…。」
「……ッッ!!!」
声が出なくて、何も、意見が主張できない。しかし、八幡さんの影に悪魔が重なる。あぁ、八幡さん、あなたが──────
「私は、生き残りの古代龍。初代神に創られ、そして、捨てられた。ほかの古代龍は私より先に死に、私を置いていった。そして、めめさんには2度も捨てられた。1度目は人間のせい、2度目は戦争のせい。…失わないようにするには?何が何でも手中に収めればいい。私のものにすればいい…!!簡単だったんだ…!!!最初っからこうすればよかった…!!」
八幡さんは早口でそうまくし立てる。八幡さんは、強い。そう思っていた。メンタルだって、戦闘だって、そして、信念だって。しかし、それらはとてももろく、なんなら既に壊れていたらしい。古代龍唯一の生き残り。その神聖な称号の裏には、とんだ悪魔が潜んでいたらしい。
「私は古代龍の生き残り。ちを愛するもの。改め、強欲の龍。私が、あなたをお守りしますから。…私から、離れないように、させてもらいますね?死神様?」
八幡さは口角を不自然なほど上げ、ニヤリと笑ってみせる。どうやら狂ってしまったのは、私だけでは無いらしい。声が出ずとも、やってやる。…と、震える思考でそう思い立つ。
ここで切ります!!八幡さんの激重感情がバレてしまいしまたね…。八幡さんの罪状は『強欲』。昔、天界から追放されて下界でずっと生きてます。神から見放されたせいで、神が管理しているものに干渉されなくなってます。例えば時間とかです。だから、長い間ずっと生きられてるんですねー。ちなみに八幡さんの肩書き、『ちを愛するもの』は、『地』と、『智』と、『血』と、『知』を意味しています。全てち、と呼ぶのでこの一字に全てが込められています。なっかなかに強い肩書きですよね〜。さすが古代龍。古代龍というのは、この小説では1番最初の龍(初代神に仕えていた龍達)を指します。
ちなみに、先に言いますが、戦闘はしません。八幡さん的には、感情をぶつけているだけって言うのと、て感じですね〜。なんだかんだ長年生きてますから。感情とか愚痴聞いて欲しかったくらい程度にしか八幡さんは思ってません!
それでは!おつはる!
コメント
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これは強欲ですわ〜