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カチッカチッカチッ
月明かりが照らすもの静かな部屋に時計の音だけが鳴り響く。
暫くして、そこに一人の艶の入ったストレートの長い、美しい黒髪をなびかせた女が入ってきた。
「今日は満月ね。」
窓越しに見える美しく輝く満月を見て、女は言った。
「まるで、彼のよう」
『好きだよ――――麗』
コンコン
「失礼します。お嬢様、そろそろお時間です。」
またも、ドア越しから男の声が聞こえる。
「ええ。今行くわ。」
――――――そう、彼女はいかなければならない。彼らとの約束を果たすために。
暗闇の中一人の少女が光に向かって手を伸ばす。
『僕と君は一生闇の中でくらすんだ。』
『やめて私は、そんなこと望んでない!!』
『おまえもあの女みたいになりたいのか!!』
『私は―――――――――!!』
バサッ
真っ白なシーツのベットで目を覚ますと、シャツにあせがっべっとりとついていて、気持ち悪い。
ハァハァハァハァハァ
息が乱れる身体を無理に動かして起き上がる。
ほんと、朝から嫌な夢。
思い出しただけで、吐き気がする。
考えるのやめよ。
お風呂を入りにいくために、浴室に向かう。
浴室を開けると、とてもいいバラの香りが漂ってきた。
バスルームには、真っ赤な薔薇が入れてある。
「今日はローズバスなのね。」
薔薇を掬い上げ、呟く。
私は、この花がとても好き。 なぜかというと、亡くなったお母さまを思い出すから。
暫くしてお風呂から上がり、髪を乾かすために自分の部屋に向かう。
この時間帯は、まだ、起きている人間は少ないだろう。
誰もいない廊下には金の額縁の絵や、金の仏像、手入れされた真っ白な胡蝶蘭などが
飾られてある。
ただひたすら長いろうかを歩くと、真っ白なアンティークな造りの、金の薔薇の模様
で縁取られた扉を見つける。
部屋にはいり、真っ白なドライヤーを見つけると、スイッチをいれ髪を乾かす
無駄に長い髪を乾かし終わり、朝食まで暇なので、読書をしていると扉にノックがかかった。
その人物にだいたい、予想ははつく。 それは昔からで、いつものことだから。
コンコン
「失礼します。おはようございます。お嬢様。お茶をお持ちいたしました。」
暫くして、神条の家で私に使える世話係兼護衛役のアレクが入ってきた。
アレクは、端正な顔立ちでダークブラウンのストレートでサンタマリアのような美し
い水色の瞳をしており、それに加え筋肉質だから、とても色気があり、神条は、もち
ろんのこと、財閥同士の会食パーティーなどで、顔を合わせるためとてもモテる。当
の本人は仕事内などでは、営業スマイルでニコニコしているもの、極度の女嫌いで、
私とプライベートでは、だいぶ性格が違ったりする。
そんなアレクは、私が信頼している数少ない人物だ。
アレクは、紅茶をカップにそそぐと、私に差しだしてきた。
「ありがとう。」
それを受け取って一言、礼を告げる。
アレクが入れる爽やかなオレンジの風味が香るアールグレイは、とても美味しい。私
が、今まで飲んだ紅茶のなかで一番美味しいと断言できるほどに。
「やっぱり、アレクの紅茶は、美味しいわね。」
そのまま思ったことを口にした。
「ありがとうございます。」
アレクがふっと時計を見ると
「お嬢様、そろそろ、朝食のお時間です。」
といった。
私はいつもリビングへ、階段を下りている途中、今日の予定を聞く。
「それと、旦那様が昨日お帰りになられました。」
私の父は仕事へイギリスに行っていたのをそれが、昨日帰ってきたそうだ。
「お嬢様にお話があると、おうかがいしております。」
話? お父様から、何か重要なことでもあるのかしら。
「そう。それで、今日の予定は?」
私が、そう尋ねると、
「8時30分~3時30分に桜蘭(おうらん)学園、18時~21時に高梨(たかなし)財閥主催
の会食パーティーです。」
え? いつもなら、もっと沢山予定があるのに。
「旦那様が、紹介したい方がいるそうです。」
私の心を読んだかのように、返事がかえってきた。
リビングにつき、アランが、ドアをあけると、メイドや使用人たちが、
「「「「「「「美麗お嬢様、おはようございます。お食事の準備が、整いました。」」」」」」」
と、言いお辞儀をしている。
それにそろって、アランも、優雅にお辞儀をする。
これも、昔からで、違和感などない。
そう、ここは、世界No.1の神条財閥の本堤で、私は、次期神条グループの社長でもある。
「お父様、お母様、おはようございます。」
「ああ。おはよう」
「おはよう。美麗ちゃん」
私は、お父様と、義理の母である、お母様に挨拶をしたら、二人とも、挨拶を返して
くれた。義理の母といっても、私を本当の娘のように、愛してくれ、私はこの二人の
両親を尊敬もしているし、感謝もしている。二人ともとても大切な家族だ。
「旦那様、すぐにお食事になさいますか?」
メイドたちの中でも真ん中に立っていたメイド長のアイラが、お父様に問いかける。
アイラは、アランの双子の姉で、この二人は性格も容姿もとても似ている。
アイラに限っては、冷血鬼メイド長と神条財閥内では、有名な話だ。
それに、二人ともとても仲がいいわけで、お互い考えていることが、手に取るように
わかるという。
私は、そんな彼らのことをとても信用しているし信頼もしている。
「ああ。頼むよ。」
お父様は、柔らかく微笑んだ後アイラに頼んだが、アイラの表情は微動だにしない。
お父様は、世にいう、イケメンという部類にはいる容姿をしており、大体のメイドは
頬を赤く染めたりだの、いろいろな反応が、返ってくるが、アイラは、どんな時でも無表情だ。
アランとアイラの違いといえば、これだけだろう。
私も、アイラが笑ったところは、指で数えられるくらいしか、見たことがない。
昔、「アランはいつも、ニコニコしてるのに、アイラはどうして、笑わないの?」と
聞いたことがある。
その時は、「笑おうとすると、反射的に表情筋が固くなってしまうんですよ。」とされた。
それで、一時期、「意地になっても絶対笑わせてやる」とアイラにつきっきりで、笑わせようとしたことを今でも覚えてる。
今覚えば、あの頃が一番楽しかっただろう。
お父様が、ふと私に目を向けるとこう言った。
「美麗、大事な話があるんだ。朝食を食べながらでいいから、聞いてくれかい?」
それにこたえるように頷く。
少し緊張して、身構えていると、お父様がとんでもない爆弾発言をした。
「今日の高梨財閥の主催のパーティーで美麗の婚約者を紹介しようと思ってる。もう、美麗も、16になるしね。」
え?・・・・・・・・・・・・・・・・
いきなり?
私には、生まれる前から決まっていた婚約者がいる。
されに私はまだ、その婚約者の顔も名前も家柄も知らせられていない。世界No1の
財閥のお嬢様の婚約者となると、相当な家柄なのだろうけれど・・・ 勿論、会った
こともない。
ただ、昔から「婚約者がいる。」とだけしか言われていない。
そんな婚約者に会う日がまさか今日だったとは・・・・・
あまり興味がなかったから、忘れてた。
私は、それなりにしっかりして、真面目な人なら問題ないと思っている。
神条の家に傷がついたら困るから。
そんなことを思っていると、お父様が口を開いた。
「ちょうど、彼は高梨グループの社長の息子さんでね。この前、イギリスで、再開したんだよ。それで、高梨グループの社長
就任祝いが、あるから来ないかって誘われたんだ。」
え? ちょっとまって・・・ 再開したってお父様、高梨グループの社長と面識があ
ったのね。高梨財閥も世界トップ3に入る、神条の家にふさわしい家柄だ。
そうこう考えていたら、時間はあっという間にたっていた。
「お嬢様、そろそろ、学校に行くお時間です。」
アランがそう声をかけてきたのだ。
「ええ。そろそろ行きましょう。お父様、お母さま、行ってまいります。」
「「いってらっしゃい」」
いつものように一言声をかけると、優しく返してくれた。
「アラン、ディランも行くわよ。」
ディランとは、私の護衛だ。アランの場合は、つきっきりだけど、ディランは外出す
るときだけ。
ディランもこれまた容姿が整っていて、とても綺麗な金髪にベニトアイトのような深
い藍色の瞳をしている。ディランもイギリス人だ。ちなみに、ディランはアランとア
イラと幼馴染。
三人ともとてもかが良く、昔から三人でいるとこをよく見かける。
「は~い」
ディランが軽く返事を返してきた。
ディランは顔はとても整っているのだが、性格が軽いせいか、女遊びが激しく、たく
さんの女を泣かせてきた。
アランとディランとあと、ほか数名黒いスーツを着た護衛をつれて、家を出た。
家を出て、アランが黒のベンツに手をかけて言った。
「お嬢様、どうぞお手を。」
私に向かって黒い手袋をした、しなやかな手を差し出してくる。
「ありがとう。」
手を受け取り礼を言った。
ディランも後から車に入ったのを確認すると運転手に声をかける。
「出して。」
すぐに車が動いた。
「そういえば、麗、今日、編入生が来るらしいよ。」
かと思うと、ディランが声をかけてきた。
編入生? にしても、珍しい。
「あり得ない話ですね。」
アランが言うとおり、うちの学園は編入不可能と言われる程の実力のある学園だ。
だから、今までに編入してきたという前例がないのだ。
面白いわ。 どれほどの実力があるお方なのか、はっきりこの目で見なければ。
「今回の期末テスト、楽しみね。」
そう言うと、ディランの顔が段々と青ざめる。
「やば俺、追試かも。」
はあ、そういえば ディラン勉強苦手だったわね。
この前の中間試験は相当悪かったのを覚えている。
アランとディランは同じ、桜蘭学園に通っている。
ディランは、普通の学生と比べれば、頭はいいほうなのだけれど、護衛をするため
に必死に勉強して、受かったのだ。
だから、だいぶ自分の実力と学園とじゃ、かけ離れている。
記憶力もいいほうだし、頭の回転は速いほうだから、しっかり授業を受けて、真面
目に勉強すれば、学年ベスト5くらいなら簡単に入れるだろう。
「ディランなら大丈夫よ。もしよかったら、私が教えるわ。」
このまま放っておけば、本当に追試になりかねないし。
そんなのは、私のほうが困る。
ディランには、十八歳を過ぎたら、本格的に家に使えると生まれる前からきまって
いたのだ。今からでもしっかりしてもらわなければならない。
将来に傷がつく。彼にそんなことを望んでも無駄なのかもしれないけれど・・・
「ありがとな~麗 やっぱり、麗って優しい~」
ディランが涙目でそんなことを言ってきた。
私が優しいだと?
意味が分からない。
いつも家のことしか考えていない。
家の地位や名誉のことばっか。正直言ってつまらない人生を送っている。
幸せか。と聞かれて正直に首を縦に振れない自分がいる。
私はただ何をしたいのだろうか。
このまま家の指示に従って自由のない人生を送るのか。
私だってディランやアランの自由を奪っているようなものだ。
これは、どうしようもないことなのだけれど。
そんなことを今更考えても意味がない。
そう。私は家に従う人形。
昔かそう言い聞かせてきた。
私には―――――――――――――自由などいらない。
「お嬢様、到着いたしました。」
暫くして、学校に到着していたようで、運転手の榊が声をかけてきた。
「ええ。」
軽く返事をして、アランの手を取って、車から降りる。
それと同時に女たちの叫び声が聞こえた。
「キャーーー!!」
「美麗様とアラン様よ!!」
「今日も美麗ちゃんかわいい~」
「ディラン様もいるわ!!」
「俺の彼女になってくれないかな~」
「ばかね。美麗様があんたなんか相手にしてくれるわけないじゃない」
「それもそうだな。」
「今日も三人とも美しいですこと!!」
「目の保養になる~」
「やっぱりアラン様と美麗様お似合いねえ。」
「ほんと素敵!!」
「おこがましくて近づけないわ!!」
これが、私たちの日常だ。
はっきり言って野次馬共が煩い。
そんなこと言わないけど。
特に女。いつも美麗様、美麗様と・・・
アランもディランもとてもと言っていいほど顔が整っているから、街中を歩くだけ
でとても目立つ。彼らは学園のアイドル的存在だ。
何を勘違いしているのかは、知らないけど、この学園の人間はアランと私が付き合っ
てると思っている。
面倒くさいし、はっきり否定してはいない。
アランもそうみたいだし。
彼女たちは、家の地位や名誉そんなもので、群がってくる。
私は、そんな女たちしか知らない。
見た目で判断して、その人のことを本当に知ろうとしない。
醜い女たち。
そう思ってるのは私だけではないようで、アランとディランは顔には出さないが、
相当不機嫌だ。
何年も一緒にいたんだ空気でわかる。
さっきも言ったとおり、アランは普段女どもには優しいもの、裏では罵って、毒舌を
かましている。
ディランは女遊びが激しく、女共を性欲処理の道具だとしか思っていない。
そんな彼らをみたら彼女たちはどんな反応をするか見てみたいわ。