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※この部分に書くネタがなくなってきた
「カーくん、おかえり!」
「あ、三人とも、ただいま!すっかり夕方になっちゃったね…」
「もう…どこまで行ってたの?」
「分かんない!」
呆れかえるほど清々しい返事が返ってきて逆に安心した。全くいつものカービィさんらしいというか何というか…
「泳ぎ疲れてるとは思うけど、ここで寝るのは駄目だからね?」
「分かってるよ!…でも、ちょっとだけなら…」
「駄目だってば」
仲睦まじいやり取りを遠い目で見つめながら、わたしはそっと深呼吸した。
(…ドキドキしてきた)
『――いい?リボンちゃん』
アドレーヌさんの言葉を思い出す。
『連れ出すときは、自然な感じでね。でも、ちょっと緊張した感じを出してもいいと思う。これから大事な話をしたい、そう感じとってもらえればちゃんと聞いてくれると思うから』
(…よし…)
「…あ、あのっ、カービィさん!」
「ん?どうしたの?」
純粋無垢な瞳が向けられる。星を宿したかのような明るさに、また少しだけ見惚れてしまう。ここから紡がれるであろう話題への興味が薄れていくまえに、わたしは重たい口を開く。
「ちょっと、その…大事な話があるんです!だから…少し来てもらってもいいですか?」
「そういうことだったら、全然いいよ!…いちおう先に聞いておくけど、二人にはあんまり聞かれたくないこと?」
「あっ、それは…」
焦って振り向くと、二人はカービィさんに気づかれないようにうなずいた。
「…まあ、そう…ですね」
「おっけ!じゃあ、あっちの方行こっか。二人はここで待ってて!」
「わかった!」
自然に手をとってカービィさんは駈けていく。引っ張られるようにしてわたしも慌てて羽を動かした。
(今…ナチュラルに手を繋がれてる…!?)
二人の姿が逆光で見えなくなってしまう頃には、緊張と微妙な嬉しさで心がごちゃついてしまっていた。
「…結局はストレートに言っちゃったかぁ…まあ結果オーライだけど」
「にしてもカーくんも大胆だよね!あんな風に手を繋がれたら絶対ドキドキしちゃう!」
「…ねえ、アドレーヌはさ、ああいう相手って居るの?」
「さあ。どうだろうね?」
そんな会話を繰り広げる、残された二人の少し後ろ。
そこでは、一人の少女が波打ち際に佇んでいた。
(…みんな…大丈夫かな)
毛先が海のように青い少女は物思いにふけっていた。耳の奥に波の往来する音が響いている。
(…動かなくちゃ、状況は何も変わらないよね)
誰かを捜しに、少女は温かい砂から足を動かした。
「よし…ここら辺なら大丈夫かな。
…それで、話ってなに?」
いい具合に日が傾いたころ、カービィさんは足を止めて振り向いた。手はもう離されていたけど、温もりはまだ残っている。
「…今、こんな状況で言うようなことではないのは分かってるんです。…でも、決心のついているうちに言わなきゃ、そう思って…」
心臓の音がどんどん上がっている。たくさんの意味合いを含んだ緊張が、わたしの内を満たしていた。
「…5年前、カービィさんと出会って、旅をして…あの旅の終わり、何が起こったか憶えてますか?」
「…うん。今でも、鮮明に思い出せるよ」
憶えててくれたんだ。恥ずかしいけど、少し嬉しい。
「…あの時からずっと、わたしの気持ちは変わってないんです。ポップスターで出会って、一緒に旅をして…」
次の言葉を紡ぐまえに、もう一度深呼吸する。微妙な時間が、わたしたちの間に流れた。
「いつしかそのうちに、仲間とか友達とかとは違う気持ちに気づいたんです。隣にいるだけでドキドキして、変な感じになるんです。」
「リボンちゃん…」
カービィさんの反応を気にする余裕は、既になかった。口からこぼれだした言葉はもう止まらない。
「あの旅が終わって、カービィさんと会えなくなってから…自分のどこかに、穴が開いてしまったみたいでした。そうなってからようやく、わたしは自分の気持ちをちゃんと伝えなかったことを後悔しました。 …だから、今度はちゃんと伝えたいんです。わたしの気持ちを、正直に、ストレートに」
日が傾いていく。夕焼けが二人の横顔を照らす。波の音が、僅かな静寂に響く。
「…わたしはずっと、カービィさんのことが――」
「キャーーーーーーーー!!!!」
「…っ!?」
言葉を遮るようなタイミングで、聞き慣れた絶叫が海辺に響きわたった。
「今の…アドレーヌさんの声!」
「何かあったのかも!急ごう、リボンちゃん!」
「は、はいっ!」
カービィさんの一声で、ムードに浸ったままのわたしの気持ちは正気を取り戻し、代わりに危機感を強く自覚させた。告白できなかった残念さを塗りつぶすかのように、親友の安否を心配する念が広がっていく。
(…どうか…無事でいて…!)
再び鳴り始めた心臓の音は、今度は何かを強く警告してくるような緊張感に満ちていた。
行きの時よりも早く羽を動かして、ようやく二人の影が見えてきた。
「アドレーヌさん、カエデさん!大丈夫で――」
「あ、リボンちゃん!おかえりー!」
「…へ?」
予想に反する明るい声色に、呆気にとられる。よく見てみれば、二人のそばに、見たことのない少女が楽しそうな表情で佇んでいた。
「二人を待ってる間に、後ろから驚かせてきたんだよね。それでびっくりして、アドレーヌが大声あげちゃったみたいで…」
「無駄に心配させたみたいでごめん…でも、みんな大丈夫だよ!」
「は、はあ…」
安心感にどっと襲われたが、同時にさっきの告白を邪魔されてしまった事への念が湧いてくる。せっかくいい感じだったのに、あんなにも中途半端に終わってしまっては、これからどうすればいいのやら…
「…で、この子がカエデの友達?」
「うん。偶然、この星に逃げてきてたみたいで…あ、忘れないうちに、自己紹介お願い!」
「はいはーい。あたしはイズ。得意な属性は水。腕には自信あるから、いつでも頼っていいわよ!」
明るく快活で好印象なひとだ。これなら、いきなりアドレーヌさんたちを驚かしたのにも納得だ。
「よかった…イズさんも、無事だったんですね」
「うん。…カエデから聞いたけど、リリルも見つけてくれたのよね?本当にありがとう!なんか戦ったりもしたみたいだけど、大丈夫だった?」
「うん!中々強かったけど、何とかね」
「そっか。…じゃあ、一旦顔を合わせに行きたいんだけど、今からいい?」
「えっ、それはもちろんだけど…イズは戦わないの?」
「だって、カエデとリリルが認めたんでしょ?なら、あたしは異論ナシよ!」
「ほっ…」
戦闘にはならなさそうで安心した。あとはカエデさんのワープスター酔いに気をつけて戻るだけ――
(…!?)
突然、背中に冷や汗が垂れた気がした。
とてつもなく、嫌な予感がする。
急いでクリスタルを取り出し、様子を見る。日の光を通して輝く水晶の色は、うっすらと曇りはじめていた。
(…まさか…)
「カエデさん、アドレーヌさん!今すぐイズさんから離れてっ!」
「え、どうしたの、急に…?」
「いいから!早くっ!」
二人の服の袖を掴み、強引に引き寄せる。力が足りないかと思っていたが、二人の体重が軽めだったおかげで、倒してしまったとはいえ無事に引き離せた。
「…え…イズ…!?」
カエデさんの声で顔をあげると、イズさんの体は黒い靄に覆われていた。ぐるぐると巻き付くようにして離れない靄は、じわじわと体内へ入り込んでいく。
(ぜんぜん、無事なんかじゃなかった。…また、奴らに騙されてしまうところだった)
クリスタルを強く握りしめる。光は徐々に弱くなる。反対に、イズさんを包む闇は濃くなっていく。
黒い影と対峙したわたしたちは、まだ覚悟を決めきれずにいた。
あとがき
爆速で書き終えたフジミヤです!まさかの3000文字超えして驚いております…前回に短くなりそうとか書いておいて前回の文字数を抜かしてないか…?
…まあいいか☆(読み応え重視)
さて、次回はお待ちかねの戦闘シーンです!なんかタイトルに「VS」ってつくと伸びてる印象…まあむやみやたらにはつけませんがね(たぶんこれからは章ボスだけに付けることになるかも)
…さて、第3章ももう気づけば終盤、あと2話で終わる予定です!…てことはまたグレゾを書かなければ…
…安心してください、次回のグレゾは(比較的)ほのぼの回です!
次回のゆめまよはがっつり戦闘シーン書くぞ!うおー!!
(挿し絵も描きたいけど…やる気が…)
では次回のあとがきでお会いしましょう!