side天嶺
「先輩、俺と付き合って。」
部活生の元気な声が聞こえる放課後の屋上で強い日差しを浴びながら初めてかけられた言葉。
私、李白 天嶺 17才。たった今、生まれて初めて告白されました。
相手は特に知人というわけではないが、学校では有名人の彼。黒澤 夏夜。
学校一の不良と呼ばれているが、芸能人かと思うほどの顔立ちで、
女の子たちの中には隠れファンがいるほど。
女癖も悪いとか、やばいクスリヤッてるとかいろんな噂が立っており、
生徒会の耳にまで伝わってくるので正直迷惑な存在。
そんな彼が生徒会長の私に告白…?
私は顔が優れているわけでもないしモデルのような体型をしているわけでもない。
これってもしかして嘘告というやつ…?
黒澤夏夜の周りを見ると木陰でチラチラと私達を見ている男が一人。
あぁ、罰ゲームかなんかなんだな。
即座に理解し黒澤夏夜に目線を向け直す
「ごめんなさい。あなたとは付き合えない。」
黒澤夏夜の顔が少し歪んだ気がした。
嘘告で振られるなんて屈辱的だもんね。でも嘘告された身も考えてほしい。
呼び出されて少しでも舞い上がってしまった自分をぶん殴ってしまいたいぐらい。
「なんで。」
なんで…なんで…!?
そんなこと分かりきってるじゃない嘘告なんだから
でも嘘告だからって振るのはなんか嘘告じゃなければ付き合うみたいな…
なんて言えばいいの……
「あなたのことが好きじゃないから。好きでもない人と付き合うわけ無いでしょ?」
「じゃあ先輩が俺のこと好きになればいいの?」
「ま、まぁそうだけど…」
「わかった。」
そう言って颯爽と去っていく黒澤夏夜。
え…なんだったの本当に…
意味もわからずトボトボと教室に戻ると、私めがけて一人の女子生徒が
近づいてくる。
次の日、学校に行き、自分の席についた途端
「天嶺!黒澤夏夜に告られたってホント!?」
情報がホント早いなぁ…
すごい形相で私の目の前に座った彼女は 涼風 響。
中学校で知り合ってからずっと一緒にいる私の大親友
「あー、、まぁ、うん…」
あれが本当になんだったのかもわからず曖昧な返事をする
一応告白だったよね…?嘘だしなんか消えてったけど…
「それで!?オッケーしたの!?」
興奮しすぎている響は私に質問攻めをしてくる。
「するわけないでしょ。木陰でチラチラ見てる人いたし、嘘告に決まってる。」
「天嶺こんなかわいいのに?」
「可愛いのは響でしょ」
そう言うと響は照れながらも笑顔で私を見る。……かわいい…
こんな私のことを可愛いなんて言ってくれるのは多分これまでもこれからも
響だけ。
「ふへへ…って天嶺、黒澤夏夜と接点あったっけ?」
「いや…初めて喋ったと思う…」
「うーん…学校一のヤンキーが高嶺の生徒会長様に告白ねぇ…面白いことになりそう」
高嶺って…勝手にハードル上げないでよ…
「まーうちは断然秋穂くんのほうが好みだなぁ」
「秋穂くんって?」
なんか聞いたことあるようなないような…
「おいおい生徒会長さんよ…秋穂くんっていうのは黒澤夏夜の幼馴染で親友の秋穂颯くん!爽やかイケメンって感じでいいのよねぇ…」
「そーなんだ…あれ、でも響って彼氏いたよね?」
「いやいやいや…それはそれ、あれはあれ!推しと彼氏ってぜんぜん違うから!」
弁明を続けようとする響を遮るようにチャイムが鳴る。
チャイム音が聞こえると響は渋々と自席に戻った。
授業が始まり頬杖をついて外を見る。
私の席は窓際の後ろから二番目の席で、周りの男子の背が高いということもあり、教卓からは死角になっている。
グラウンドにはサッカーをしている男子生徒たちが見える。
あれは…ジャージの色的に一年生かな?私達の学校は学年ごとにジャージのラインの色が違う。あ、あの黒髪は…黒澤夏夜だ。
うーん、それにしても嘘告なんで私にしたんだろ…
私関わったこともないよね?生徒会長だから…?
まぁ珍しい体験をしたってことで。もう気にすることもないか。
───
午前中の授業が全て終わり昼休みになる。
「おなかすいたぁー!」
そう言いながら響が私の席にやって来る
慣れたように私の席と私の前の席をくっつけて座る。
「今日のおべんとーなに?」
首をこてん、と傾げながら聞いてくる響
「今日はオムライス弁当!」
「やったぁ!」
喜んでる姿もかわいいなぁ
響と私のお弁当はいつも私が作っている。
料理が好きな私がお弁当を作ったとき羨ましがる響が可愛すぎて私が作ってあげると言ってからずっと作り続けてる。
弁当箱を開け、食べようとした瞬間…
──ガラガラガラ
「李白センパイいますか」
く、黒澤夏夜……!?
え、名指しされたし…なんの用が…あ、、昨日の敵返してやる的な……!?
一瞬で顔が青ざめるのがわかる
終わった…もう逃げ場がない…
「李白さんが黒澤くんに…!?やっぱ昨日の噂ホントだったんだ…」
「生徒会長とヤンキーって漫画かよ…」
「黒澤くんやっぱかっこいい〜」
クラス中がざわつき始める
やばいあることないこといろんな噂立てられるぞこれ…
早急に帰ってもらわないと…
「ナンノヨウデスカ…」
「なんでそんなカタコト…ってメシまだすか?」
「え…今から食べるけど…」
なんでそんなこと聞いてくるの…?
早く帰ってほしいんですけど…
「一緒に食べたい…です」
うん。だれ?
目の前にいる人は昨日渡しに右側をしてきたようには思えないぐらい態度が大人しくなっている。
敬語なんかしらないみたいな感じだったくせに…一回〆られた?
「えっと…友だちと食べてるので…」
「その友達に許可取ればいいんすか」
食い気味で答える黒澤夏夜に少し戸惑う。
「え、えぇ…まぁ?」
「あの人っすよね。ちょっとしつれーします。」
ほんとは他学年の人は教室に入れちゃいけないんだけど…
黒澤夏夜だからなのかみんな黙っている。
「さーせん、李白センパイと昼飯食いたいんすけど一緒に食べてもいいですか」
「…っえ?うちに聞いてる?全然いーけど男1人って気まずくない?」
響…秋穂くんて人とお昼食べたいだけでしょそれ……
「あーじゃあ俺の幼馴染も呼びます」
「なら全然おっけー!いつから一緒に食べる?」
すごい元気になるじゃん…
「じゃあ明日から一緒に食べたいです」
「どこで食べるー?教室じゃみんな落ち着かないと思うし…」
今は10月上旬。外で食べるでもいいと思うけど……あ、
「私視聴覚室の鍵持ってるけど…」
『サボりたいとき使っていいよ』って前生徒会長からもらったんだった
この鍵私しか持ってないし、そもそもこの部屋年に一回ぐらいしか使わないし
「うわぁ、職権乱用ってやつだ。生徒会長様が友達だとこういうことできるからいいね…」
なんてことを言うんだこの子は…
「じゃあ明日の昼休み視聴覚室集合ってことで」
そういうと教室から出ていった黒澤夏夜…何だったんだいまのは…
「嘘告であそこまでするかな」
響がニヤニヤとこっちを見ながら言ってくる
いや、だって…うーーん…
悶々と悩む私に
「まぁ明日会うことになったんだし明日聞いてみれば?」
嘘告でしたよね?って無理無理無理。
言いたくもないし向こうも言われたくないでしょ。
あぁー……明日休もうかな……
第一話end.
コメント
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