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光影が眉を顰(しか)めて呟く。


「それにしても…… 王水や他の水溶液も無いのに、イオン化か…… 奇怪だな」


丹波晃が頷きつつ言葉を重ねた。


「それにこの毒性の強さも異常ですね…… 恐らく、これまで確認されている金とは全く別物なんじゃないかな?」


「だな…… こいつも持ち帰って調べてみるとしよう」


「ですね、僕も少し持って帰って母校の研究室で調べますね」


専門外のメンバーは誰一人二人の会話に割って入る気配が無い中、バアルが震える声で言ったのである。


「しゅ、終末の黄金(こがね)……」


全員が振り返ってバアルを見つめ、善悪が代表して確認の声を上げたのである。


「バアル、何やら不穏(ふおん)な言葉でござるな、それ! 一体何なのでござる? 週末の子亀って」


バアルはまだ放心したような表情のまま全員を見廻しながら答える、小刻みに体を震わせつつ……


「『終末の黄金』だよ…… 前にルキフェル兄様、いや兄様の偽物、サタンに聞いた事があるんだ…… アスタを復活させてサタンと妾、三魔神が力を合わせて新たな飛来神、小惑星の衝突を回避しなければ、地球は終りだって…… 生命力がこの星のリミッターを越えるとか言っていた…… その後、僅かな月日で地球は金、海も大地も空も、黄金色の死の世界に変わってしまう、それだけは何としてでも避けなければ、そういつに無く大声で言っていたんだよ…… その話に出て来たのがあらゆる生命を傷付け、生命の入れ物を減らし続ける鉱物の名を『終末の黄金』、そう偽サタン、奴は言っていたんだけどさ…… ねえ、これってそれじゃないのかな? なんで、小惑星が衝突するのってまだ二十年以上先の筈なのに……」


トシ子が反応良く応えた。


「サタンの想像以上のスピードで魔力、生命力が増えちまってるって事なんじゃろうよ、いやはや、困ったのぉ」


考え込む一同に対して復活したコユキがいつも通りの感じで言った。


「何よ皆、アタシ達は今出来る事を一所懸命にやるしか無いでしょう? その上で最善を尽くすだけしか出来ないじゃないのよ! 今は一人でも多くの人にエスディージーズと『水撒き』を伝える事! そうでしょう? ビビってないで頑張るわよ! オケイ? 新生『聖女と愉快な仲間たち』『六道(りくどう)の守護者』『オニギリ友の会』!」


『お、オケイ』


声を揃える一同に満足そうに頷いたコユキは再びバアルに視線を戻して聞くのであった。


「そんでバアルちゃん、その二十何年後に突っ込んでくる隕石ってどんな奴なの? 分かるのん?」


「う、うん、サタンが言っていた事が真実なら名前は『デイモス』、火星の月の一つだそうだよ、意味は……」


「ギリシャ語で『恐慌』でござるか…… おっかないのでござるよ」


「ね、っぽい奴が来るのね…… 身が引き締まる思いだわっ!」


そう言ったコユキはいつも通り、だらけ捲ったその身をブルっと震わせて、周囲に強烈な臭いの汗を振り撒くのであった。

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