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イザナギさんの家に連れて行ってもらって、差し伸べられたイザナギさんの手を取ろうとした。そのとき、急に視界が暗くなって、気付いたら知らない女の人と真っ黒な空間で二人っきり…。彼女の相談を受けていたら、突然抱きしめられた。
しばらく彼女の抱擁を受け入れていた。優しくて、あたたかい抱擁。
もう満足したのか、彼女は離れた。
「お主は本当に優しい娘じゃな。お陰で妾はいい気分じゃ! と言うことで。お主に1つ、プレゼントを贈ろうか」
ぷれぜんと…?
「何か欲しいものはあるか?」
欲しいものか。今まで何かを求めたとしても、それが叶う事自体あまりなかったせいか、最近は凛音からも欲を出せとよく言われる。
なんとか出そうとしてしばらく考えたけど…
「ごめんなさい。特にありません」
「おや、欲がないのぉ」
「わかった!ならば妾が決めよう。うーむ、何がいいかのぉ…」
女の人はうめき声をあげながら、ずっと考えてくれていた。でも私…そんなに大層なことできてないのに…。
「よし、決めた!!」
彼女の楽しそうな声が響いた。
私もこの暗い空間に長いこといるせいか、少しずつ目が慣れてきている。
彼女は私の胸の前に手をかざし、
「戻れ」
そう呟いた。
そのとき、あたたかいようで冷たい、明るいようで暗い、不思議だけど、それでも綺麗な光が彼女の手から私の胸の中に入っていった。
思わず、感嘆の声が漏れる。
「これは元々お主のものだったんじゃ。それをお主に返しておるだけ。もう無くすんじゃないぞ?」
女の人がそう言うと、眩しい光が当たりを包んだ。それと同時に女の人はいなくなってしまったけど、一瞬だけ、彼女の顔が見えた。本当に一瞬だったからよく見えなかったけど、傷だらけだった。その点で言えば確かに酷い顔と言えるかもしれないけど、そんなものより、あたたかくて、幸せそうで、とても綺麗な笑顔が印象的で忘れられない。
…あれ?
目を開けると、また知らない場所にいた。私はふかふかなベットで寝ている。でも、知らない場所でも、今回は違うらしい。
「お?目が覚めたか?」
すぐそばには凛音がいる。でも知らない場所には変わりない。
「ここはどこ?」
当然聞きたくなる。
「ここはイザナギの家で、俺らが自由に使ってもいい部屋だとよ」
俺らが自由に使っていい部屋?ってことはつまり…
「私たちのー?!」
言いかけたのと同時に、部屋のドアが勢いよく開いた。
「琳寧ちゃん!!目が覚めたんだってね!!」
元気よくイザナギさんが入ってきた。
「おいイザナギ…。琳寧の言葉を遮るんじゃねぇ!!」
「あ、それはすまん…」
私の目覚めを素直に喜んでくれるイザナギさん、うるさいと怒る凛音。怒られてシュンとなるイザナギさん…。
「ふふっ」
思わず口角が上がって、笑みが溢れた。
あれ、私、久しぶりに笑った?自分自身でも驚いてるけど、目の前の二人は驚きすぎて固まってしまったみたい。
「お、おま、今、わら…?へ??」
俺は今、すごく混乱している。あの琳寧が笑ったからだ。あの琳寧がだぞ??
「おい凛音、落ち着け」
落ち着けるわけないだろ馬鹿か?今まで全く笑わなかった琳寧だぞ?しかも見たかあの顔。可愛すぎるだろ。もうこいつが正真正銘の神だろ。全人類、いや。全生物琳寧にひれ伏せ。いや、この顔は俺しか見てはいけないものだ。他のやつなんかに見せるもんか。
「あー無理。オレ、シンジャウ」
悶える俺にゴミを見るような視線を送りながら
「うっわぁ、マジかこいつ…」
とイザナギは言う。黙れじじいと言いたいが、可愛い琳寧の前だ。暴言はやめよう。とりあえず深呼吸だ。
「それにしてもお前、この3日間のうちに何があったんだ?」
「え?3日?」
そう。琳寧は天界に来てから倒れたが、今日はその日から3日後の朝だ。まぁ琳寧は寝てただけだもんな。知る由もないに決まってるか。
「うーんとね」
といい、琳寧は顔が傷だらけの女に会ったと話してくれた。いや待て待て。
「そいつって…」
「あぁ。恐らくそうだね。琳寧ちゃん、その人の正体は聞いた?」
イザナギが琳寧に尋ねる。
「いいえ。秘密と言われて、教えてくれませんでした」
なるほど。秘密か。なら、余計なことはしない方が身のためだろう。
それと、琳寧はそいつから「光」を貰ったと言っていたが、恐らくそれは「感情」だろう。ほんと、いいものを貰ったな。
「なるほどね…ところで琳寧ちゃん、起きて早々で申し訳ないんだけどね、これからの事について説明してもいいかな?」
「はい、大丈夫です」
それから、イザナギは説明を始めた。
琳寧は人間。人間が神に勝つなんてことは到底無理だから、琳寧を鍛えるということ。鍛え終わったらイザナミがいる土地である【黄泉の国】へ行き、イザナミに戻るよう説得をする。それで戻ってくるなら良し。もし戻らないようであれば…
「決闘をおこなってもらうよ!」
「決闘…?」
「正直この世界は強い者が正義!って考え方が強いんだよね。決闘を行えば、それに勝った者の命令には絶対に従わないといけない」
と、イザナギは【決闘】について説明し始めた。
決闘には戦う者が二人以上(何人でも可)と【管理者】と呼ばれる者が必要。【管理者】は決闘の規則に従わなかった者に罰を与える者であり、その決闘の責任者のことである。見守る者のことを【管理者】と言うだけなので資格などは必要ない。
また、決闘にはいくつかのルールがある
・相手を殺すことは禁止
・どちらかが降参した時点で決闘は終了
・管理者が認識していない者の介入は禁止
・管理者への反抗は禁止
・管理者は絶対に平等でなければならない
これらのルールを破った時点で、その者は失格になる。
と、イザナギは説明しているが、寝起きの琳寧はまだよく分かっていなさそうだが…
「管理者がルールを破った場合はどうなるんですか?」
おぉ、ちゃんと理解できてるじゃないか。さすが琳寧だ。
「んーそうだな…。大体の決闘には観客がいるから、観客から大ブーイングを受ける…とか?」
「なんだその曖昧な回答は」
思わずツッコんでしまった。
「だって普通はそんなこと起きないんだもん!!」
「気を取り直して…。その決闘に琳寧ちゃんが勝って、イザナミを説得して欲しいんだ。できそうかい?」
ま、正直なところ不可能だろう。イザナミは創造神だが、黄泉の国の長であり、破壊神でもある。しかもイザナミは…“アイツ”には劣るが、いい勝負をする程の強さを持つ。そんな奴に挑むのは無謀な挑戦だ。でも琳寧なら…
「やらせてください!」
…ま、そう言うだろうな。
「ですが、それならイザナギさん自身やった方が成功率は高いんじゃ…?」
おっと琳寧。痛いところを突く。
「だってこいつ、イザナミと思いっ切り喧嘩したからな!!琳寧も知ってるだろ?」
「…あぁ、そっか。気まずいし、断られるからか。あれ、決闘は?」
「残念だが、こいつはイザナミより弱い」
「あ…なるほど…」
おい琳寧、その反応はイザナギ泣くぞ。
「まぁとにかく!君にはイザナミとの仲直りを手伝って欲しい!お願いできるかい…?」
「元々やると決めていたことです。任せてください!」
琳寧らしいな。ほんと、“アイツ”にそっくりだ。
「頼もしいね!君に声をかけて本当によかったよ。…それじゃ、特訓は明日から始めるから、今日はゆっくり休んでね」
そう言ってイザナギは部屋から出ていった。