テラーノベル
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崩れた事務所の中で、火花が雨みたいに散っていた。
配線の焼ける臭い
コンクリートの粉塵
遠くから聞こえるバグの咆哮
その全部を掻き消すように、
リョーカのハンマーが唸る
ガァンッ!!!!!!
白い仮面の敵が吹き飛び、
壁を三枚ぶち抜いた。
だが
『損傷率12%。戦闘続行』
瓦礫の中から、
“それ”は平然と立ち上がる
人間じゃない
サイボーグとも違う
白い装甲の隙間から覗く黒い肉が、
脈動していた。
「……キモ」
ヒロトが吐き捨てる
再生した腕を握り直し、
短剣を逆手に構えた
「モトキ、援護」
「分かってる」
モトキは血の流れる額を押さえながら、
銃を構える
照準
呼吸
引き金
パンッ!!
弾丸が敵の膝を撃ち抜く
一瞬だけ、
体勢が崩れた
「ヒロト!!」
「おせぇ!!」
ヒロトが消える
強化された脚力が床を砕き、
一直線に敵へ突っ込む
ガギンッ!!
短剣と白い腕がぶつかる
火花
「硬ッッッた?!」
普通の金属ではありえない硬さに 短剣が軋んでいた
『強化人間識別。排除優先度上昇』
「うわ最悪」
敵の腕が変形する
刃
いや、
骨そのものが伸びている
ヒロトは咄嗟に後退するが、
避けきれない
ザシュッ!!
鮮血
脇腹が裂けた。
「ッ……!!」
「ヒロト!!」
モトキが叫ぶ
だがその瞬間
敵が、
モトキを見た
『脅威判定更新』
『対象:人間』
空気が変わる
殺気
次の瞬間、
白い影が目の前にいた
速すぎる
モトキの反応を超えている
「……ッ!!」
死ぬ
そう思った瞬間
ドゴォン!!!!
横から巨大な衝撃
リョーカのハンマーが、
敵を叩き潰した。
床が陥没する
地下階層全体が揺れた
「モトキくん、大丈夫?」
「あ、あぁ……」
リョーカが振り返る
その顔は笑っていた。
でも
どこか無理をしているようにも見えた。
「リョーカ……」
モトキは気付いてしまう
リョーカの腕
金属部分が、
黒く侵食されていた。
まるでバグみたいに
「それ……」
「あー、これ?」
リョーカは軽く腕を見る
「たぶん限界近いのかも」
「限界?」
「ボク、元々ね」
リョーカは少し困ったように笑った
「“バグを制御するための器”なんだって」
沈黙
ヒロトの表情も消える
「……は?」
「ヴェルトラウムは、人間を滅ぼしたいわけじゃないんだよ」
リョーカは静かに言う
「人間を、“次の生き物”に変えたいんだって」
その瞬間
敵が瓦礫を吹き飛ばして立ち上がる
『RX-00』
『不完全覚醒を確認』
『処分対象へ移行』
リョーカの目が細まる
「……あ、やば」
その時だった。
リョーカの胸から、
黒い光が漏れた
ドクン
空間が脈打つ
次の瞬間
外にいた大量のバグが、
一斉に静止した
まるで
“命令を待つ兵士”みたいに
モトキの背筋が凍る
「……お前、まさか」
リョーカが俯く
長い三つ編みの隙間から、
青白い光が漏れていた。
「ごめんね」
その声は震えていた。
「ボク、抑えきれなくなってきてる」
遠くで、
何百という咆哮が重なる
地下都市全体が揺れていた。
ヒロトが舌打ちした
「最悪のタイミングで告白してんじゃねぇよ……!」
それでも、
彼は前に出る
モトキの横に立つ
「モトキ」
「……あぁ」
二人とも、
銃も短剣も構えていた
敵にではない
リョーカに向けてでもない
その“未来”に向けて
モトキは静かに言う
「リョーカ」
リョーカが顔を上げる
不安そうな目
壊れそうな顔
モトキは銃を下ろした。
「お前が何だろうと、関係ない」
ヒロトも笑う
「今さらだろ。お前、元から意味わかんねぇし」
「……ふふ」
リョーカが少しだけ笑った。
でも次の瞬間
その笑顔が凍る
「……え?」
ガコン
小さな音
リョーカの胸に、
白い腕が突き刺さっていた。
後ろから
白い仮面の敵
いつの間にか、
立っていた。
『RX-00捕獲完了』
「リョーカァァァ!!!」
モトキが叫ぶ
瞬間
リョーカの身体から、
黒い光が暴走した
都市全体の電力が落ちる
暗闇
赤い非常灯だけが点滅する
そして
闇の中で
“何か”が目を開いた