コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
︎ ︎︎︎
「待った?」
「全然?待ってないさ。」
何食わぬ顔でそう答えては手元の本に目線を戻す。
「…君のその態度、怒ってるのかどうか全然分からないよ。」
「他人に感情を読まれるのはあまり好きじゃないんだ。」
「レジリメンスでも使おうか?」
「丁重にお断りするさ。」
ケラケラと笑いながら此方に近付いてくる茶色のくせっ毛を一瞥すれば丸眼鏡のレンズに自分のプラチナブロンドが反射した。
「ドラコ、」
「……」
真剣に自分の名前を呼んだ彼に目を向ける。
「…タイピン、変えたのか?」
「まぁね、そう言うドラコこそ香水変えた?」
「……まぁな。」
「ドラコらしくない匂いだね?」
「君こそ君らしくないタイピンだな。」
「…貰ったんだ」
「……そうか。」
「君は?」
「………同じく、かな。」
「じゃあ…お互いに話したいことって言うのはそういうことって事でいい?」
「…らしいな。」
そう、今日静かなパブでポッターと待ち合わせをしたのは互いに大事な話があるからだった。…と言うのも、2人して同じことを伝えようとして居てたらしく思わず2人して吹き出した。
「何処まで同じなんだろう」
「ほんとだ。全く、君とは合うのか合わないのか…」
「合うよ。合うからここまで引き摺ってきたんだ。」
「……ダンブルドアの気持ちがわかるかもな。」
「…ほんとだよ。」
「君はイケてる男だった。」
「君は可愛らしい天使だったよ。まるで月の女神のように…」
「小洒落たナンパはお断りだ。」
「ちょっと、僕にもキメさせてよ。」
「ところで…相手は?」
「ジニー。ジニー・ウィーズリー。」
「…ほう、呉々も泣かせるなよ。」
「僕のことなんだと思ってるの?…で、君は?」
「……アストリア。アストリア・グリーングラス。」
「…あの子か。」
「そう。彼女との婚約も考えている。」
「……つまんない。」
「…は?」
「…………何も無い。」
訝しげにポッターを見詰めるも当の本人は肩を竦めて知らん振りをするだけで。埒が明かないことを悟った自分は重い溜息を吐き出して目線を下げる。
「おめでとう。ドラコ。」
「……君から祝福を頂くとはな。」
「待って、君さっきから僕のことなんだと思ってるの?」
「…さぁな、死喰い人と好んで密会する英雄…とかか?」
「ウワ、随分と最高な肩書きだね。」
「どうも。」
「褒めてない。」
「…君は婚約するのか?」
「結婚した。」
「……こりゃ驚いた。」
「そこで…だ。」
「……嫌がったのか?」
「…まぁ、そう。」
「だろうな、ウィーズリー家自体マルフォイ家を憎んでいるのに死喰い人と来たら尚更だろう。」
「でも僕はちゃんと説明したんだ。君は死喰い人だとしても悪に染まりきってないって。」
「…へぇ、そりゃ有難い。」
「でも…誰であっても密会は少し…って言われて終わった。」
「……同性。」
「No」
「……学友。」
「No」
「…………犬猿の仲。」
「…No」
「清々しいコンプリートだな。」
「まぁ、そういうことなんだ。」
「結局はそういうことだったんだな。」
「…まぁ…ね。」
「楽しかったよ、君との日々は。」
「僕も楽しかった。」
「……はぁ、まぁ此方も婚約が決まったから密会は控えようとは思っていたし、丁度いいって事でお開きだな。」
「…ドラコ。」
席を立った自分に焦るように立ち上がったポッターはその流れのまま手首を引いた。
「ぅわっ、!」
音を立ててテーブルに手を付けば前のめりになったのをいい事にポッターは唇を合わせた。深く…甘く……。蕩けそうなくらい愛を届けてくるそのキスに目尻に涙が溜まった。生理的と言い聞かすのには無理があるその涙の理由を理解したくはなかった。
「…好きだったよ。」
「……そう、か」
肩で息をしながらそう返せばポッターは顎を掬い頬に手を添えては親指の腹で涙を拭った。
「さよなら、マルフォイ。」
「……さようなら。憎き英雄殿。」