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───あれから、先輩が執拗に話しかけてくることも無くなり。
「ねぇ、ヤバいかも」
「急に何よ。何がヤバいのよ」
職場の昼休憩中、同僚と昼食をとっている。
「好きな人、できたかも」
「・・・マジで?」
「マジで」
いや本当、自分が一番驚いている。
「もしかして、例の居候くん?」
「なんでわかったの」
「女の勘」
ドヤァ、と言わんばかりの顔でカフェオレを飲む彼女。
「ついに○○もフリー卒業なのね」
「待って。そこまで行ってないし、言ってない」
「あんたが本気でアプローチすれば彼氏の一人や二人くらいすぐできるわよ」
「いや二人いちゃダメだから」
もうめちゃくちゃだ、この人。
───それに。
「そんな人じゃないんだよねぇ・・・」
「どういうこと?」
「色恋沙汰に無縁というか、色気より食い気というか・・・」
とにかく、いろいろと規格外なのだ。
「今どきそんな男いるの?」
「まー、色恋沙汰に興味が無いかどうかは、わからないけどね」
「だって二人暮らしでしょ。
手は出されないわけ?」
「ないないない。寝る部屋別々だし」
「ワンナイトラブ的なのも?」
「それこそ絶対にない」
いや、単純に私に興味ないだけなのかも・・・と少し落ち込む。
「○○みたいな子が一緒に暮らしてたら、私が男なら絶対夜這いするけどね」
「やめて」
昼間からなんてこと言うんだ。
「少しくらい意識させるのも、悪くないんじゃない?」
「・・・たとえば?」
「一緒に寝る、とか」
「いやハードル高くない?」
「バイクの後ろ乗っけてんのに?」
( うわ、本当だ・・・ )
今まで何も考えてなかったけど。
よくよく考えれば、とんでもない密着度だ。
「・・・え、もしかして何も考えてなかったの?」
「・・・はい」
「ハァァ~・・・」
「でも一緒に寝るとか無理!」
「じゃあ、暑くなってきたし露出増やす・・・とか」
「えぇ・・・」
そんなに自分の体型に自信ないんだけど・・・。
「毎日腹筋してるって言ってたじゃない。
それにほっそい足してんだから大丈夫よ」
「毎日はキツいから1日置きにシフトチェンジ。あと1週間で1.3キロ太りました」
「大して変わらんわ!」
とにかく、と腕時計に目をやり、彼女は私に念を押した。
「まずは部屋着からね」
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