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「……え?」
修太郎さんの言葉が信じられなくて、反射的に彼のお顔を見ると、
「……神崎健二」
修太郎さんは、私を真っ直ぐに見据えて健二さんのフルネームを告げられた。
「……何故……修太郎さんが健二さんのお名前を?」
余りに驚いて、言下にそう問いかけると、刹那修太郎さんは少し困ったようなお顔をなさってから、
「少なからぬご縁があって、僕は彼のことを存じ上げています。日織さんのことも……実は健二から頼まれていました」
とおっしゃった。
修太郎さんの言葉の意味が分からなくて、私はベッドの上ですくまってしまう。
健二さんと修太郎さんがお知り合い?
私のことを……頼まれて?
「……それは……どういう……」
意味ですか?と聞きたいのに言葉がうまく続けられなくて、私はベッドに腰掛けたまま小さく身体を震わせた。
何故だか分からないけれど……。いや、そうじゃない。たぶん、分からないことが多過ぎて怖いんだ、私……。
思いながら、ギュッと腿の上で組んだ両手に力を込めて握りしめてみても、震えはおさまらなくて。
「日織さんは健二の父親の職業をご存知ですか?」
ベッドに座り、縮こまってうつむく私の前にしゃがみ込むと、修太郎さんは小刻みに震える私の両手をそっと包み込んでいらした。
修太郎さんの温かくて大きな手の感触に、私は少しずつ気持ちが落ち着いてくる。
「政界の……方だとうかがっています……」
私を優しく見つめてくださる修太郎さんに恐る恐る視線を合わせると、そう答える。
そして、健二さんはそんなお父様を支えるお仕事をなさっておられるのだと、父から聞かされたことがある。
いずれは健二くんも父君にならって、政界に打って出ることになるだろう、とも。
だからそんな健二さんの奥さんになる日織には、夫を支えられる内助の功が求められているのよ、と母から言われて、そんな大役が自分なんかに務まるのかしら?と思ったのだ。
だから、今のままの自分では嫁として受け入れられないと先方さまが仰っておられるとうかがったとき、妙に納得したりもして。
「私、健二さんの奥さんになるのが怖いんです、……とても」
私と健二さんとの結婚を望んでくれている両親には、申し訳なくて言えなかった言葉。
それを、私は修太郎さんに吐露してしまっていた。大好きな修太郎さんに、何とかしてこの境遇から助けて欲しいと思ってしまったからかもしれない。
私一人では、この柵を断ち切れる力がない気がしたから。
「大丈夫。僕が絶対に……そんなことにはさせませんから」
ぎゅっと私を抱きしめると、修太郎さんがぽつんとつぶやく。
鷹槻れん

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#契約結婚
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私が欲しい言葉が、どうして修太郎さんには分かってしまうんだろう。
修太郎さんの腕の中で、私は嬉しくて泣いてしまいそうになる。
「僕に貴女のことを頼むということが、どういうことになるのか、考えられなかった彼らが悪い」
修太郎さんは私を抱く腕に力を込めると、まるでご自身に言い聞かせていらっしゃるかのようにそうおっしゃった。
「……いや、考えがないのは一人だけか」
何かに思いをはせるようにそうつぶやくと、そこで私の頭を優しく撫でながら、修太郎さんが微笑まれる。
「日織さん、お願いがあります」
私の顔をじっと見ながら修太郎さんが声の調子を変える。
私は彼を見上げて「どんなことでしょうか?」と問いかけた。それは、私に出来ることだろうか?と不安に思いながら。
「近いうちに、どうにかして健二と二人きりで会う約束を取り付けてください。彼と話して……全ての片がついたら……その時こそキスのその先に進みましょう」
コメント
2件
塚田さんとけんじさんの関係が知りたい!
今回の話、すごく重くて切なかったです…。日織さんの「健二さんの奥さんになるのが怖い」って言葉に胸がギュッと締め付けられました。そんな中で修太郎さんが「僕が絶対にさせませんから」って言ってくれたシーン、あそこ本当に救いでしたね。それに「彼らが悪い」って言い切る修太郎さんの覚悟、ゾクッとしました。キスのその先に進むための条件も気になるし、続きが待ち遠しいです…!