カチャリと鍵の開く音がすると、銀河が取っ手をつかんで扉を両側へと引き開けた。
「ようこそ、理沙。超イケメンホストクラブへ」
手が差し伸べられ、お店の中に誘われる。
「あ、ありがとう……」
目の前に差し出された彼の手に、おずおずと自分の手を添えると、エントランスからフロアへ広がる大階段を、銀河が私の歩調に合わせてゆっくりと一段ずつ降りて行った。
下へ行くにつれて末広がりに大きくなる大理石の階段を降り切ると、柔らかなぺールオレンジ色のダウンライトに照らされたフロアには、横長の大きなソファーが据え置かれていた。
銀河が私の手を取り、その真っ白な革張りのソファーの真ん中へ座らせると、
「いらっしゃい!」
「来てくれて、ありがとうー」
「ようこそ、いらっしゃいませ」
フロアからは、トーンや喋り方の違う三人の男性らの声が聞こえてきた──。
「おう、よく来たな!」
声の雰囲気から察するに、どうやら最初に「いらっしゃい!」と声をかけてきた男の人らしかった。
「俺じゃあなく、銀河のお客っていうのが残念だが、今夜は楽しんでいけよな?」
どことなくエゴが強そうにも聞こえる口ぶりに、どんな顔をしているんだろうと思って見やると、短髪のアッシュブロンドカラーで、やや吊り上がった眼差しと傲慢そうに薄く笑った口元が人目を惹き付ける、一見して俺様風にも感じられる男の人がいた。
「俺は、流れる星で、流星。あんたの名前は?」
「理沙……。理科の理にさんずいに少ないで沙」
(銀河だか流星だか知らないけど、”おまえ”の次は、”あんた”なの?)と、ちょっとムッとしてしまう。
「……ああ、流星。あんたとか呼ぶのやめとけよ? 理沙は、おまえとかあんたとか呼ばれるの、嫌いみたいだからな」
私の心の声を読んだのか、銀河がそう横から口を挟んで、
「……私じゃなくても、そんな風に言われるのなんて、誰でも嫌いだから……」
あっさりと本音を見抜かれたことに、なんとなくバツの悪さを感じて、口先でぼそぼそと言い返した。
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