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今夜は一緒に?
部屋の明かりは落とされ、
カーテン越しに地獄の赤い月明かりが差し込んでいる。
レロはベッドの横で腕を組み、
猫耳をぴくりと動かしながら唸った。
「……だからさ。
俺、今これだよ?」
尻尾が落ち着きなく揺れる。
「耳も尻尾も敏感だし、
寝返り打っただけで変な反応するし。
一緒に寝るとか、無理に決まってるだろ」
『……』
メロは何も言わず、少しだけ俯いたまま近づいてくる。
「いや、だから近づくなって……」
次の瞬間。
ぐいっ。
「うわっ!?」
レロはそのままベッドに押し倒され、
マットが小さく沈んだ。
猫耳が驚いて伏せ、
尻尾がびくっと跳ねる。
『お兄様?』
覆いかぶさるように、
メロは顔を近づける。
『妹が……これだけお願いしても、
寝てくれませんの?』
声が、ほんの少し震える。
潤んだ瞳が、真っ直ぐこちらを見つめていた。
『……一人で眠るのは、寂しいですわ』
今にも泣き出しそうな表情。
「……っ」
レロは一瞬、完全に固まった。
「……それは……」
視線を逸らし、
額を押さえる。
「……ずるいんだよ、そういう顔」
猫耳が、しゅんと伏せたまま。
「分かった。
一緒に寝ればいいんだろ……」
ため息混じりに、ぽつり。
「……仕方ない」
『……』
数秒の沈黙。
そして。
『ふふ』
一瞬で、表情が変わる。
さっきまでの泣きそうな顔はどこへやら、
いつもの余裕たっぷりの笑み。
『やはり、お兄様は騙しやすいですわね』
「……」
レロは、じっとメロを見つめて――
「……嘘泣きかよ」
猫耳がぴくっと立つ。
「最初からそうだと思ったわ。
思ったけど……」
布団の端を掴み、
小さく息を吐く。
「……分かってても、断れないのがムカつく」
『ふふ。愛ですわね』
「違う!!」
即座に否定しつつも、
突き飛ばすことはしなかった。
メロは何事もなかったかのように布団に潜り込み、
当然の顔で隣に収まる。
『では、おやすみなさい』
「……勝手すぎるだろ」
そう言いながらも、
レロは布団を引き寄せる。
猫耳が、ゆっくりと落ち着き、
尻尾の揺れも静かになる。
「……ほんと、最悪な妹」
『褒め言葉として受け取っておきますわ』
「……もういい。
仕方ないなぁ……」
小さく呟いて、目を閉じる。
――騙されたと分かっていても、
結局は受け入れてしまう。
その距離が当たり前のように近いことを、
レロはもう諦め始めていた。
静かな寝息が重なるまで、
戯魔の妹は満足そうに微笑んでいた。