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加茂憲紀と伏黒恵がお付き合いしている設定です。
俺得。
展開が謎。
読み切り。
ボーイズラブ。
ちょっとしたスキンシップ、匂わせ表現が含まれますのでセンシティブ設定をさせていただきます。
夕暮れ時。呪術高専の寮の一室。
窓から差し込む茜色の光が、加茂憲紀と伏黒恵の影を長く伸ばしていた。
「……やはり、私は次期当主として、
まだ未熟なのだろうな。」
ぽつり、と。
隣に座る加茂憲紀は、膝の上で拳を握りしめて呟いた。
生真面目で、不器用で、いつも「加茂家嫡流」としての責任を背負い込んでいる男。
他人が聞けば「また考えすぎだ」と呆れるようなネガティブな本音を彼は今、目の前の自分にだけ零している。
伏黒恵は手元にある呪具の手入れを止め、静かに隣を見た。
少し下がった眉。ぎゅっと結ばれた薄く、ほんのりと赤い唇。
世間から見れば面倒くさくて、堅物すぎるその姿が、今の自分にはどうしようもなく愛おしく映っていた。
「……また、その話ですか。」
「すまない。君にこんな格好のつかない話をすべきではないと分かってはいるのだか……。」
本当に申し訳なさそうに視線を彷徨わせる加茂。
その器の小ささも、自信のなさも、伏黒にとっては彼の誠実さそのものだった。
他人の欠点すら美点に見えてしまう状態を、
世間では「痘痕も靨」と言うらしい。
今の自分は………まさにそれであるのだろう。
伏黒は小さくため息をつくと、手に持っていた布を置き、加茂の方へ身体を向けた。
「…加茂さん。」
名前を呼ぶと加茂の肩がびくりと跳ねる。
伏黒は躊躇することなく手を伸ばし、加茂の少し冷えた頬に指先を触れさせた。
「っ、…伏黒…くん、…?」
「……あんたが未熟だろうが、俺には関係ないです。」
「…だが、私は君に相応しい男では………、」
「あんたのそういう面倒くさいところも、
全部含めて俺は選んだんです。
これ以上、自分を安売りすんのは止めてください。」
真っ直ぐ見つめる伏黒の瞳。
そこに一切の嘘がないと悟った瞬間、加茂の肌がみるみるうちに紅に染まった。
「……ッ、……君は、本当に……ずるいな。」
恥ずかしそうに視線を逸らそうとする加茂、
その顎を、伏黒は細い自身の指先でそっと固定した。
ゆっくり顔が近づく。
「……………ん、」
唇が重なる、…そう思った加茂がそっと目を閉じた。
小さなリップ音が響いた。
しかし触れたのは、唇ではなく、加茂の額だった。
額に軽く落とされただけ、だが酷く甘いスキンシップ。
「………んな…っ、!? 。」
期待を裏切られ、さらに顔を真っ赤にして目を見開く加茂に、伏黒は意地悪く、けれど酷く優しく唇を綻ばせた。
「……やっぱり、…まだ、しません 。」
そう言って立ち上がる伏黒の耳の裏も実は仄か赤く染まっていることを、加茂はまだ、……いや、きっと一生知らないままなのだった。
コメント
5件
**リオン:** ああ、良かった……夕暮れの空気感から、ふたりの呼吸の距離までが繊細に切り取られていて、すごく好きな景色だった。加茂の自己卑下と、それを受け止めて「全部含めて選んだ」と言い切る伏黒の強さが対照的で、でも最後は伏黒の耳の裏が赤いっていうオチが人間らしくて甘酸っぱい。額にキス、という“まだしない”距離感の演出が大人っぽくて、これからも積み重ねていく関係を感じさせてくれたな。大事に読ませてもらいました、素敵な話をありがとう。