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俺はアドラスへ強烈な一撃を叩き込むことで大きく吹き飛ばし、一時的に嵐のように激しく続いた攻撃を一時中断した。
「ドウシタ、モウスタミナ切レカ?」
体の大部分を損傷し、本来であれば致命傷であろう傷を何事もなく回復させながら余裕そうに話しかけてくる。
「いや、もうそろそろ決着をつけないと…と思ってな」
そう言って俺はゴーレムに内在する魔力の性質変化を行い、体中に特異な魔力を付与していった。その様子を見たアドラスは不敵な笑みを浮かべ、未だに余裕層に立ち振る舞う。
「ドンナ小細工ヲシタトコロデ無駄ダ。オレヲ倒スコトハ出来ナイ!」
「さて、それはどうかな」
俺は体中に性質変化させた魔力を纏って再び攻撃を仕掛ける。性懲りもなくといった感じにアドラスは先ほどまでと同様に戦おうとしていた。
「グァッ?!」
すると俺の攻撃を受けたアドラスが苦しそうな声を上げて俺から距離を取る。攻撃を受けた上左腕を痛そうに抑えながらこちらを見つめる。
「ナ、ナニヲシタ?!コノ攻撃ハ、一体…!?」
「物理的に攻撃していては埒が明かないのでな、お前の本体…つまり魂に直接ダメージを与えさせてもらった」
「タ、魂ダト…?!アリエナイ…タダノ下等生物ゴトキガ…!!!」
どうやらようやく目の前の相手が自身を殺しうる存在であると認識し、先ほどまでの余裕が一気に恐怖へと変わっていったようだ。
俺の行った魔力の性質変化は魔力を魂の波長と近しいエネルギーへと変質させることである。俺はこれを魔力のアストラル形態と呼んでいるがその状態の魔力であれば魂に干渉することが可能になるのだ。
俺の開発したこのゴーレムに自身の魂の一部を付与させてリモートワークを行う魔法もそのアストラル形態の魔力を用いて発動させるものである。
今回はその魔力をゴーレムの体に纏うことによって攻撃すべてに魂への干渉作用を付与させ、アドラスの本体に回復不可能なダメージを与えることに成功したのだ。
「さあ、これで全ての計画を潰させてもらうぞ!第一王子!!」
そして俺は先ほどまでと同じように超高速でアドラスに対して攻撃を仕掛ける。先ほどまでと違うのは俺の攻撃全てが奴に対して特攻効果を持っているということだ。
「グォオオオオ!!!!!!!ヤ、ヤメロ!!!!!!!!!!!」
「はあああああああ!!!!!!!」
俺の攻撃はアドラスの体には致命的なダメージは与えず、その代わり奴の魂に対してダメージを確実に与えていった。そのため次第にアドラスから発せられている不気味な魔力は小さくなっていった。
「クソッ!!クソッ!!!クソッ!!!!コノママ終ワッテタマルカ!!!!!」
するとアドラスは満身創痍の体に鞭を打って大きく急上昇を始めた。そして王都を掌サイズに一望できる俺が展開した結界の最高高度に到達したところでその体から残った魔力をすべて一点に集め始めた。
「ドウセ死ヌナラ、オマエタチモ…ミチヅレダ!!!!」
アドラスが作り出した大きな禍々しい気配を漂わせた魔力球はその特異な魔力の影響で次第に辺りに暗雲を立ち込めさせた。太陽の光が遮られ、辺りが真っ暗闇に包まれるのと同時に強烈な雨や風、それに雷まで鳴り響き始めた。
さながら天変地異を絵に描いたような風景に王都中が様変わりした。
「あれが直撃すれば王都の人たちはもちろんだが、この辺り一帯の土地が死の土地と化してしまうな。ならば…あれごと奴を消滅させるまで!」
俺はアドラスと同じく魔力を一点に集中させ始めた。その魔力はすべてアストラル形態へ変化させたものであり、文字通り一撃必殺の魔力砲だ。ただ問題は奴の魔力に押し勝って、かつ奴を消滅させるに至れるかだ。
今のアドラスは自身の依り代となった二人の魔力を存分にフル活用し、その上で自身の魂を魔力変換している。まさに決死の一撃を放とうとしているのだ。
俺は撃ち負ける可能性を極めて0へと近づけるために最終手段を使うことにした。
「能力上限、オーバーライド!!!」
俺はゴーレムの機体性能を本来定義されている上限値を一時的に150%にまで引き上げて使用できる魔力量を大幅に増加させた。
頼む、この体しばらく耐えてくれ!!
「死ネエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!!!!」
「はああああああ!!!!!」
そうして俺とアドラスはほぼ同時にお互いの攻撃を放った。するとその直後、アドラスの黒球と俺の白球がちょうど中間地点である王都の上空でぶつかり合う。
その衝突の衝撃波は途轍もないもので俺の張っていた結界に次第にひびが入り始め、一部が崩壊し始める。それはアイリスやルナがいる庭園も同じで俺の張った結界がすでに限界を迎えていた。
「「はあ!!!」」
するとルナからポーションをもらって回復したのかアイリスとルナが二人で強力な結界を展開させ始めた。だが二人がかりでもかなりきつそうで長くは保ちそうになかった。
周囲の状況も、そして俺の体もそろそろ本格的にやばそうだ。
これ以上、時間をかけるわけにはいかない!!!
「これで終わりだ!!!」
そしてさらに勢いを増した俺の白球はアドラスの黒球を徐々に押し返していき、ついにアドラスの元まで辿り着いた。
「クソォォォォオオオオオ!!!!カ、下等生物ゴトキガ!!!!!!」
そうしてアドラスは白い魔力球に飲み込まれ、王都の上空にド派手な爆発が広がった。その影響で先ほどまで立ち込めていた暗雲の一部が消え去って空にぽっかりと穴が開き、そこから綺麗な青空と陽の光が差し込んできた。
「「や、やった!!!!!!!」」
地上ではアイリスやルナを始めとした庭園に集まっている人たちがすべてが終わったことに対する安堵と化け物に勝ったことに対する高揚感でとても賑やかになっていた。
互いに抱き合って無事を噛みしめる者、俺とアドラスの戦いを見て興奮冷めやらぬ者、いろんな感情が入り乱れていた。
そして俺はすぐにアドラスがいた付近に探知魔法を発動させて目的のものを探し出す。急いでそれらが地面に落下する前に回収し、それらを持って庭園へと向かっていいった。
「オルタナさんっ!!」
「先輩っ!!!」
地上へと降りるや否やすぐにルナとアイリスが俺の元へと駆け寄ってきた。二人とも先ほどの衝撃からみんなを守るために結界を張り続けてかなり魔力を消耗していたにもかかわらず、真っ先に俺の心配をし始めた。
「オルタナさん!!大丈夫ですか?!」
「もちろん、問題ない。と言いたいが少し無茶をしすぎたので体が限界ギリギリだ」
「今すぐ修理が必要…とか?」
「いや、さっきみたいな戦いは流石に厳しいが普通に動くぐらいならしばらくは問題ないだろう。それよりもこれを」
俺はそういって先ほど回収してきた者を地面へと置いた。
するとアイリスは驚きの表情で彼らを覗き込んだ。
「まさか兄上とベルトリア魔法士団長?!生きているのですか?」
「ああ、依り代となってほぼ魔力は残っていないだろうが命に別状はないと思う」
「お、オルタナさん。どうしてこの人たちを助けたのですか?確か第一王子殿下には過去に…」
するとルナが心配そうな表情でこちらを見つめてきた。
確かに彼女の考えていることは疑問に思うだろう。
「ああ、俺にはこの第一王子を助ける気も義理もない。だがどうせなら怪物として殺されるよりもちゃんと人として罰を受けて終わって欲しい、そう思ったんだ。これだけのことをしたんだ、国家反逆罪で死刑は免れないだろうからな」
「そうですね。先輩、兄上のことに関しては私が責任をもって罪を償わせます。そしてそのような機会をいただけたことに感謝します」
「こちらこそありがとう、アイリス。あとのことは任せるよ」
「私が絶対に先輩の屈辱を晴らして見せます!!」
そうして俺たちは互いに笑顔で笑い合った。
ついに俺とお母さまの心の重りもなくなりそうだ。
騒動が落ち着いた後、国王陛下が王令によって王国騎士団が総動員して今回の件に関わった魔導士団たちや貴族たちを次々と拘束していった。
そうして第一王子一派による王国の大反乱は終結した。