日が変わって午前7時を少し過ぎた時間。
私は昨日と同様、冒険者ギルドのギルドマスター執務室にいる。当然、マコトも一緒だ。
彼は昨日と同様本来の姿をしている。私と2人で会話をする際には正体を隠すつもりは無いのだろう。
昨日図書館で読書をしている最中に、予め『通話《コール》』用いて今日の予定を聞いておいたのだ。その際に、色々と報告したいことや聞きたいことがある旨を伝えている。
ヘシュトナー侯爵の村に対する振る舞い、巡回騎士マックスとのやり取り、そしてこのギルドに勤めているオリヴィエについてだ。
ヘシュトナー侯爵の振る舞いは私の知る貴族としては責務を全うしているようには思えないし、マックスと昨日交わした約束は私だけでなくマコトにとっても大きな厄介事だ。
オリヴィエについてはマコトも承知の上で受付嬢をやらせているかもしれないが、仮に彼女がこの国の物流の流れを読み取り”楽園”からの資源だけでは採算が合わないことに気付いていた場合、人工採取場に辿り着く可能性が無いとは言い切れない。
人工採取場のことが他国に知れ渡ってしまった場合、その資源を巡って最悪戦争になりかねない。
私の思い過ごしでなければ良いが、下手をしたらマックスの願い以上に厄介事に進展しかねないのだ。
ただでさえこの国の最高戦力は私が間接的に潰してしまったからな。攻め入るのなら絶好の機会と言えるだろう。
後悔するつもりも行動方針を変えるつもりも無いが、面倒なことをしてしまったものである。
さて、まず何から話そうか。
まぁ、それよりもまず先に昨日の打ち合わせの話からだな。
昨日私が作った本の購入者に印をつける魔術と、本の所有権を手放そうとすると本が消失する効果を持った魔術の検証だ。
マコトも律儀な性格なようで、今日のために3時間も時間を取ってくれたと言うのだ。
多分だが、検証自体はそう時間は掛からないと思う。それにギルドの入り口に警備魔術を設置するのも時間は掛からないし、今日はマコトへの昨日の報告とオリヴィエについての確認がメインになりそうかな?
『収納』から転売対策のための2つの魔術を施した本を取り出す。
「それじゃあマコト、早速検証を始めよう。言いたいことはあるかもしれないけど、昨日の要件を片付けてからにしよう」
「ええ、そうですね…。幸い、検証もトラップの設置もそう時間のかかることではなさそうですし…。それで、どうやって検証しますか?」
だからトラップでは無く警備用なんだってば。
その辺りハッキリさせておきたいところだが、多分無駄な時間を消費するだけだから我慢して話を進めよう。流石にこんなことで話を引き延ばしたとしたら、時間の無駄が過ぎる。
「検証は手っ取り早く私達だけで済ませてしまおう。マコト、コレを手に取ってもらえるかな?」
「コレは…昨日言っていた、2つの魔術を施した本ですか?」
マコトが右手で本を受け取る。この時には特に何も起きていない。
だが、正常に魔術が機能していれば、同じ魔術を施した別の本を手に取った時に変化が起きるようになっている。
「そう。まずは第一段階の印をつける魔術。術を施した者以外が触れると予め術に仕込まれていた印が、最初に手に取った者に張り付けられる」
「?…特に印が付いているようには見えないのですが…」
マコトが自分の体の隅々を確認する。そのしぐさは体を変な方向へとひねったりしているため少々奇妙な大勢だ。
確認のためか着ている服を大きくはだけながら確認し始めている。
私は別に何とも思わないのだが、異性の目の前で衣服をはだける行為は人間社会ではあまりよろしくない行為では無かったのか?それとも、私ならば問題無いと判断しての行動なのだろうか?
だとしたら、なかなか図太い神経を持っているな。まぁ、そうでなくてはこの国の、王都のギルドマスターは務まらないのかもしれないが。
いつまでもマコトに奇妙な姿勢を取らせるわけにもいかない。そろそろ説明を続けよう。
『収納』から同じ魔術を施した同じ本をマコトに手渡す。
「印が付けられると言っても内密に、だよ。今度はコレを手に取ってみて」
「ああ、そう言うことですか。で、この本は…さっきと同じ本…?うんっ!?手に印が!それに音もっ!?」
マコトが本を手に取ろうと手を知被けると、一般的な中年男性のクシャミと同じぐらいの大きさの良く通る音が部屋中に響き渡ると同時に、マコトの右手の甲に眩しく発光しながら、やや複雑な形状をした紋章が現れた。
良し良し、ちゃんと機能しているようだ。第一段階はこれで問題無いだろう。
「そっちの本にも同じ魔術を施してあるんだ。つまり、同じ魔術を施された違う媒体が近づいた時にのみ、最初の媒体を触れた部分に音を立てて印が発光しながら現れるのさ。これなら隠そうにも隠せないだろう?」
「これはまた、凄いですね…。よくこれだけの機能を持たせた魔術をあんな短時間で…」
まぁ、事前にヒントはあったからね。マコトは知らず知らずのうちに私にも面白いアイディアを与えてくれていたのだ。
「ほら、『通話』の魔術を改良した時に[音で知らせ]るという前例があったからね。それを参考にさせてもらったのさ」
「素晴らしいですねこれは!これならどこからどう見たって一度購入したことがあるって丸分かりですよっ!」
喜ぶのは良いのだが、今のマコトのは表情は本来の若い姿よりも年若く、というか幼く見えるな。まるで騎士ごっこをしている子供のようだ。
彼は光り輝く右手の紋章を見ながら、とても目を輝かせているのだが、マコトにとってはカッコいいのだろうか?
少々形にこだわり過ぎてしまったか?
「それ、一応悪さをしようとしている事を知らせる紋章だよ?眺めて喜ぶようなものではないんだけど…」
「ハッ!?ああ、いや、すいません…。はははっ…いやはや、お恥ずかしい…。実は故郷で子供の頃に夢中になっていた物語の主人公が、こんな感じに拳に光る紋章を浮かばせる場面がありまして…」
ああ、なるほど。昔を思い出して童心に帰っていたのか。
子供の頃に憧れていた主人公と同じような状態になったと言うのなら、まぁ、分からなくも無いかな?
少し彼の夢中になっていたという物語にも興味はあるが…。まぁ、知ることなどできないだろうな。それこそ、彼の故郷にでも往けない限りは。
「思い出に浸るのも悪くないかもしれないけど、もう1つの検証も終らせてしまおう。他にも話したいことがあるからね」
「分かりました。それで、所有権を放棄したら発動するとのことですが、具体的にどうすればいいんですか?」
「こっちの場合は第三者の協力が必要になるね。マコト、誰でもいいから、今手にしている本を売って来てもらっていいかな?値段は銅貨一枚で」
「コレを、ですか?それにしても、銅貨一枚とは…」
「この魔術がうまく機能しているのなら、売ろうとした時点で本が消失するはずだから、値段を気にする必要は無いよ」
この第二段階での魔術は、実を言うと第一段階の魔術と連動している。印をつけた本の所有権を手放そうと考えた時点で効果が表れるようになるのだ。
「分かりました。…んじゃ、ちょっくら行って来るぜ」
変装魔術を用いて自分の姿と口調を普段の物に切り替えてからマコトが執務室を後にする。
私は一応、ここで待機しておこう。
5分後、マコトが楽しげな表情をして執務室に帰って来た。
変装魔術を説いた途端に、再び本来の口調ではしゃぎだした。
「いっや、この魔術本っ当に凄いですねっ!自分でも実際に本が消失するところを見たら唖然としてしまいましたよっ!転売なんぞで儲けようとか考えてるゴミ野郎共の唖然とした顔が、今にも目に浮かぶってものですっ!ざまあみやがれですよっ!あっはっはっはっはっ!」
「そう…。嬉しそうだね、マコト…」
マコトは転売という行為を行う者達に対して非常に敵意を抱いているようだな。敵意というか、憎悪と言っても良いかもしれない。本来の口調だと言うのに、非常に口汚くなっている。
彼にとってとても大切な物が、転売行為が原因で手に入れられなかったのだろうか?
まぁ、私が気にするところでは無いな。第二段階の魔術もうまく機能しているようだし、魔術の検証はこれで良いだろう。
問題があればその都度対応する、ということで。
「それじゃあ魔術の検証はこのぐらいにして、ギルドの入り口に警備用魔術を設置しに行こうか。もう、ロビーにはあまり人がいない時間だろう?」
「ええ、そうですね!サクッとトラップ魔術を設置しに行きましょう!いやぁー、久しぶりに景気の良い話が続きますねぇっ!」
何故、ユージェンもマコトも警備用魔術を頑なにトラップ魔術と呼ぶんだ?
コレは罠では無いんだってば…。
少なくとも、この魔術に悪意はこれっぽっちも無いんだからな。
ギルドのロビーに来てみれば、早朝の時とは打って変わってガラリとした状況だ。冒険者は両手で数える程度しかいない。
当然の話だが、マコトは普段の壮年の姿に変装している。それなら、さっき変装魔術を解除する必要なかったんじゃないだろうか?
後で聞いてみたら、役作りをし過ぎてあの姿の時は本来の口調でしゃべれなくなってしまったそうなのだ。
私と1対1で会話をする時はなるべく丁寧な口調で話そうと思って本来の姿に戻っている、とのことだ。
別に口調が荒いぐらいで私の不興を買うわけでは無いので普段通りで良いと伝えたのだが、マコト自身が落ち着かないらしい。難儀なものだ。
ギルドマスターと一緒にいるからか、ロビーに残っている冒険者達から視線が集まる。彼等は皆、汚れなどは無く、体臭も臭わない。
本当に、イスティエスタの連中は王都の冒険者のこういうところを見習ってもらいたいものだ。他は見習わなくて良いけど。
だが、それでもマコト曰く、不衛生な連中はいるらしい。清潔な冒険者に慣れている分、不衛生な者がギルドに訪れると被害も大きくなるそうだ。その日は冒険者もギルド職員も不平不満の嵐になると言う。
そうまで言われているのに直そうとしないのだな。意地なのだろうか?
そんな意地などネズミの餌にもなりはしないだろうに。分からないものだ。
とにかく、入り口に警備用魔術を施しておく。この魔術は少し練習すれば熟練の魔術師ならば容易に使用できるようになる。仮にこの魔術が解除されてしまったとしても、追々設置し直すことは容易な筈だ。
多分エネミネアがこの街の魔術師ギルドにも伝えているとは思うが、そうでないのなら時間がある時に私が魔術書にして持って行くとしよう。
「トラップって、こんなに簡単に張れるモンなんだな…。まったく、勉強になるぜ…」
「問題があるとすれば、ここにいる者達だと検証のしようがない、というところかな?イスティエスタと違って、不衛生な者はそう多くはないようだし、これもマコトが頑張って流行らせた風呂のおかげかもね」
「流行らせたのはカンディーさ。俺はあくまでアイツに…ダチに協力しただけに過ぎねぇよ。だがまぁ、アンタの言う通り、風呂のおかげで冒険者が清潔なのはその通りかもな」
あれだけのことをしておいて良く言うよ。それとも、照れているのかな?
なんにせよ、マコトの努力が無ければ風呂もこうまで流行らなかった筈だ。彼は否定しているが、間違いなくマコトのおかげでもあるだろう。
計算用の魔術具と言い、間違いなく他にも色々あるだろうな。マコトのおかげで人々の暮らしが向上した要因は。
まぁ、その結果がギルドマスターとしての多忙な日々というのは、正直自業自得が過ぎる話だが。
そんなことを考えていると、衣服に着いた油を数日間放置し続けたような不愉快な臭いがこの場所に近づいて来た。
足音からして間違いなく冒険者だろう。
「おっ?ノア、アンタついてるな。早速魔術の検証が出来そうだぜ?」
「ああ、そのようだね。まったく、何でこの臭いで平然と街を出歩けるんだか…。理解に苦しむ。庸人《ヒュムス》はともかくとして獣人《ビースター》には拷問だろうが、この臭いは」
「いや、流石にアレは庸人にとっても拷問だろ」
臭いの元がギルドの扉の前に到着する前に、私達は外からは見えない位置に移動する。イスティエスタで機能は確認してあるので結果は分かっているのだが、マコトが効果を直接確認してみたいらしい。
少しして、臭いの元がギルドに入ろうとした時だ。
「んっふふっふ~ん、ふんふんふ~ふぶぇぁっ!?」
その結果はイスティエスタの時と変わらない。同じ魔術を施したから当然だ。
鼻から軽快な音を鳴らしながらギルドに入ろうとした臭いの元は、無防備な状態で私の尻尾とよく似た形をしたナニカによって思いっきり顔面をはたかれてギルドの外へと吹き飛ばされてしまった。
「っ!?っ!?っ!?!?」
「ぐっ……ふっ……!」
何が起こったのか理解できないまま、はたかれた顔を抑えて臭いの元は周囲を見渡す。だが、周囲の状況は何の変わりもない。変わりがあるとすれば、吹き飛ばされた臭いの元を不審そうな目で見る人々の視線ぐらいだ。
それはそれとしてマコトが腹と口元を抑えて蹲り、必死に笑いを堪えている。
そんなに面白い内容だっただろうか?
私としては想定通りの結果に過ぎないから、特に何も言うことは無いのだが。
あっ、また臭いの元がギルドに入ろうと足を動かし始めたな。そしてそのまま先程と一切変わらない流れでギルドの外へと吹き飛ばされている。
「な、何でぇーっ!?」
「っ…!がっ…!はっ…!」
そんなに堪えるのなら一度執務室に行って、思いっきり笑って来ればいいのに。
マコトはこの一部始終を見続けたいようだ。
だが、子供の悪戯ではないのだ。
困惑している様を見て笑い続けると言う行為は、あまり趣味が良いとは思えない。
まぁ、それだけあの臭いの元に苦労させられたからではあるのだろうが、そろそろ原因を教えてやっても良いだろう。
「も、もう行っちまうのか…?もう一回ぐらい見てからでも…」
「マコト。私があの魔術を施したのは、不衛生な者を困惑させてその有様を笑い飛ばすためじゃないんだ」
「お、おう…。その、調子に乗っちまったみてぇだ…。すまん」
分かってくれれば良い。それじゃあ、事情を説明しに行こう。
で、臭いの元に近づいたのだが、やはり臭いな。それに衣服や装備も非常に汚れていて不衛生極まりない。鼻、摘まんどこ。
「酷い臭いだな。何とかしようと思わないのか?」
「な、何だよアンタ?出会い頭開口一番に罵倒かよ!?つーか鼻ぁっ!?」
「いや、だって凄く臭いからな、お前。私は庸人よりも嗅覚が良いんだ。鼻も摘まむに決まっているだろう」
酷い臭いと言われ、あまつさえ面と向かって鼻を摘まんだ状態で応対している事に憤慨しているようだが、彼は私がギルドから出てきたことに対して、何も思わないのだろうか?
「こ、このぐらいだったら慣れれば気にならないんだって!」
「周りにいる者達は慣れる前にちゃんと綺麗にしているんだよ。綺麗にできる施設があるんだから、綺麗にしてくるべきだろう」
「いや、だって…」
「面倒か?なら良い事を教えてやる。今のお前ではギルドに入れないぞ?」
「そ、そうだよっ!な、何でなんだっ!?ギルドに入ろうとしても何かにベチーンって叩かれてギルドの外に吹っ飛ばされるんだよっ!?あ、アンタはどうやってギルドに入ったんだっ!?」
ようやくギルドに入れないことを思いだしたらしい。ギルドから出てきた私に必死の形相で訊ねてくる。
「別に何も。だが、私とお前の違いを見れば一目瞭然だろう。ああ、ほら、他にもお前と違ってギルドに入れる人が来たぞ」
「へっ?」
「ほら、ここに居たら邪魔で入り辛いだろう?少し入り口から離れるぞ」
「お、おおっ!?」
間違っても触りたくはなかったので、『我地也《ガジヤ》』で臭いの元の地面だけを動かして扉の前から移動させる。
いやぁ、本当に便利だな『我地也』は。この魔術を教えてくれたゴドファンスには心から感謝だ。
少ししてギルドに依頼を受注しに来たであろう冒険者のパーティがギルド前まで訪れる。
一昨日、私が稽古という名の仕置きをした者達だ。私を見て少々委縮しているようだが、過度な怯えは無いようだ。
それどころか、彼等は私に軽い挨拶をしてくれた。
「おっ、姐さん、チ~ッス。今日は依頼、受けないんスか?」
「ギルドマスターと色々と話すことがあってね。活動するのは10時過ぎからになりそうだよ」
「マジっすかっ!?流石っすねー!姐さん、近い内にちゃんとした稽古をつけてくれるんすよね!?絶対受けるんで、ヨロシクオナシャーッス!」
「「「「オナシャーッス!!」」」」
何処か言葉遣いが変な連中ではあるが、気兼ねは十分。きっと良い冒険者になるだろう。
その思いにしっかりと応えないとな。
「ああ、間違っても一昨日みたいな無茶な内容にはしないから、その点は安心すると良い。しっかりと鍛えるから、期待していてくれ」
「アザーッス!!んじゃ、俺らこれで失礼シャッス!」
「「「「失礼シャッス!!」」」」
なかなか面白いノリをした冒険者達は何事も無くギルドの中へと入って行く。当然、臭いの元もその様を見ている。
その表情はかなり驚愕に満ちているな。だが、理由が分からず困惑もしている。
何でそんな表情をするんだ。明確に違う部分があるだろうが。
「あ、アイツ等は普通に入れるのか!?じゃあ、俺もっ!」
「いや、だからお前では……言わんこっちゃない…」
「何でだぁあーー!?!?」
「本気で言っているのか…?」
コイツは自分の臭いが慣れれば気にならないと言っていたが、まさか、臭いが気にならないからと言って、今の姿が気にならないとでも言うつもりなのか?
都合が良すぎだろう、その考えは。
自分を見る周りの視線が気にならないのかコイツは。
「あ、アンタは俺が入れない理由が分かるのかっ!?そう言えばさっきも入れないって言ってたよなっ!?」
「私も、さっきギルドに入って行った連中も、お前とは明確に違う部分があるだろうが」
「…?………?」
おい、何で首を傾げる?首を傾げたいのはコッチの方だ!
何で違いが分からない!?理解しようとしていないのか!?
「埒が明かないからもう答えを言うが、汚れと匂いが原因だ。今冒険者ギルドの扉、入り口にはギルドマスターの許可の元、汚れが酷かったり悪臭を放つ者はギルドに入れないように仕掛けが施してある。お前がギルドに入れないということは、汚れていて悪臭を放つと判断されているということだ」
「そ、そんなっ!?だって俺は気にならないんだぞっ!?」
「あのなぁ、お前の基準じゃなくてギルド側の基準で物を言っているんだよ。例えお前が気にならなくても、他の者達は気にしているんだ。現に私はこうして鼻を摘まんでお前と話をしているんだからな。少しは周りに気を使え」
「ひ、ヒデェッ!?」
何でそんな台詞が心の底から言えるんだコイツは。多少改善しようと思ったのなら一度だけ『清浄《ピュアリッシング》』を掛けようかとも思ったが、その気は失せた。
少々魔力を開放して語気を強めて追い払うことにする。
「酷いのはお前の臭いと衣服の汚れだっ!とにかく!ギルドに入りたかったら身綺麗にして出直して来いっ!」
「ヒ、ヒィーっ!さ、さいなら―っ!」
ちょっと脅かし過ぎてしまっただろうか?
だが、こうでもしないと多分あの男はずっと自分の汚れを落とそうとしないだろうからな。
必要なことだと思っておこう。
さて、これで昨日マコトと話していたことはやり終えたかな?少々気が重いが、今日の主な目的はこれからの会話の内容だ。
とにもかくにも、まずはマコトに大きな負担をかけることを謝っておこう。
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