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私も神様に納得しちゃいました😂 ♥️を支えてる💙💛も、本当に尊い✨
僕たちは今日、新曲の打ち合わせと練習で···珍しく現場はピリッとしていた。
若井がギターが上手くいかないと何度も何度も同じ箇所を弾き直している。
傍目に聞いていれば上手に聞こえる、ただ若井自身と元貴には違うらしく話し合って、弾いてを繰り返し、今日はここまで、と終了時間を迎えた。
若井は終始難しい顔をしているし、元貴は他の仕事へとさっさと行ってしまってなんとも重苦しい。
「お疲れ様、若井大丈夫···?」
大丈夫なんかじゃないとわかっているけどそんな言葉しか出ない自分が嫌になる。
「ありがと、涼ちゃん長い時間付き合わせてごめんね。帰って練習するしかないよね」
「僕なんかのことはいいんだけど···」
「また『僕なんか』って言ってる、涼ちゃんは大切な人なんだからそんな事言わない!ね、じゃあまた明日!」
明るく若井は帰って行ったけど、無理して練習し過ぎて追い詰めてなきゃいいけど、と不安になる、彼はいつも人のことばっかり気遣っているから。
家に帰っても若井の事が頭から離れず、かなり遅い時間になったけど若井に電話をかける、もう寝ていたらそれで安心するし···コールするとすぐに電話に出てくれた。
『もしもし、若井遅くにごめんね?ちょっと練習無理してないか気になって···』
『涼ちゃん、ありがと···今ちょうど休憩してた、帰ってずっとやってたから···ちょっと苦しいね、どうしたらいいかな』
珍しく弱気な声だった、それにずっと練習してたって?さすがにやり過ぎじゃないんだろうか。
『ご飯食べた?』
『あー、忘れてた』
『ちょっとだけ待ってて、僕持って行くからね、じゃ!』
返事なんか聞いてあげない、荷物を掴んでコンビニに寄ってあれこれと買い込みタクシーに乗って若井の家に向かう。
「お待たせ!来たよ!」
「いらっしゃい、来てくれてありがとう。荷物すごいたくさん···持って来てくれたの?」
「とりあえず食べなきゃ、元気出ないからね」
「涼ちゃん返事も聞かずに電話切るし、いつものんびりなのにこんな時はすごく行動早いし」
そう言って、若井は笑っている、思ったよりも元気そうでホッとする。
これ貰おうーっと、そう言ってゼリーに手を伸ばして食べ始めたので向かい合って僕も椅子に座った。
「ねぇ、涼ちゃん、俺ってあとどのくらいしたら元貴に追いつけるのかなぁ···」
食べかけのゼリーを机において、若井はそう呟いた。
「若井···」
「元貴のこと追いかけて、追いかけて、けどどうしたって追いつかなくて、元貴の思ってることの全部を理解してたいのにそれも難しくて···なんでかなぁ···」
苦しいよね。
若井は元貴が好きだから。
だからそんなに追いかけてるんだよね。
好きな人の事は、なんでも理解してあげたいもんね、僕も元貴の事をわかってあげたくなるみたいに。
「僕も···わかるよ、その気持ち。けど、焦ってもなにも良くならないのもわかってるんだ」
「···じゃあどうしたらいいの?」
「元貴は、神様だから」
「え?」
「元貴はね、神様なんだよ。神様の気持ちをわかろうだとか理解しようとしないでしょ?手が届かないから···だから、ただ寄り添えるようにピアノの弾いてる、捧げる気持ちで」
「考え方の一つだけどね、焦ったときはそう思ってるって話」
「神様かぁ···なんか納得しちゃった」
「でしょ」
「ありがとう、涼ちゃん。なんかめちゃくちゃスッキリした。けど俺は神様に少しでも近づきたいと思っちゃうから、出来ることをする」
「若井らしいね」
「ありがとう!じゃ、俺もうちょっとギター弾くね」
「じゃあ僕はそろそろ帰ろうかな、若井が元気になって良かった」
若井はいつもの笑顔で僕を見送ってくれた。
僕も家に帰ってピアノの練習をした。
少しでも神様に近づけるように。
翌日の若井のギターはすごく良くなってて、若井もすごく楽しそうに弾いていたから僕も嬉しくなった。
「涼ちゃん!若井のギター聴いたでしょ?めちゃくちゃ良いよね、すごいよね!」
元貴が俺と若井を抱きしめる。
「涼ちゃんと若井じゃないとこんな曲出来ないから!2人が居てくれてほんとに良かった」
どうやら僕たちは神様に少し認められたらしい。
若井と目が合い、2人で頷いた。
まだまだきっと僕らは努力し続けるだろう、大好きな元貴に近づきたいから。