テラーノベル
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いつも通り早朝に舌平目拾いをして、朝食を食べた後。
魔魚カンディルー討伐に向けた道具づくりを開始する。
基本は前回と同様、サビキ釣りだ。
ただし前回と同じことをしたのでは、釣れる数は少なくなってしまうだろう。
だから今回は、より小型の魔魚カンディルーを釣りやすくするために、針が小さいサビキ仕掛けも作る。
前回釣った時に思ったのだが、魔魚カンディルーは思った以上に小さいのが多かった。
そして、あまり小さいと大きい針では釣れない。
だから釣り針は細くて小さめ、具体的には秋田狐の2号相当とした。
幅が3mm程度という極小サイズだ。
これくらい小さい仕掛けで糸も細くすると、当然絡んだり引っかかったりしやすくなる。
なので仕掛けの予備も量産しておく。
他には、釣り方を少し変えた仕掛けも作る。
具体的には投げサビキと、トリックサビキの2種類だ。
投げサビキというのは、リール付きの竿+ウキ+餌カゴ+サビキ仕掛け、という組み合わせ。
竿の下だけでなく広い範囲を狙うという釣り方だ。
一方、トリックサビキは、針に疑似餌ではなく餌をつけるという方法論。
この仕掛けには針が5本あり、針が小さいのでいちいち餌をつけるのは面倒くさい。
なので餌つけ器という道具を使う。
これに仕掛けを通すと、自動的に針に餌がつくようになっている。
ただその為には、餌を針に引っかかりやすい大きさにする必要がある。
向こうの世界でサビキに使う餌は、養殖されている小エビ※だった。
こちらの餌もそれくらいにカットしておこう。
形が整ったものをつけ餌、そうでないものを撒き餌として分けておけばいい。
さて、投げサビキならリールが必要だ。
しかし現在、リールは1つしかない。
リール用の竿も2本しかない。
つまり3人で同時に使う為には、リールを最低2つ、リール用の竿を最低1本作る必要があるわけだ。
このうち竿は簡単に作れる。
時間がかかるのはリールだ。
ただしリールは既に鉄製のものを作って、何度も使い込んでいる。
いいかげん歯車等のあたりもついた頃だろう。
ならこのリールを元にして、全部を木炭由来魔法加工物質で作ってしまうことにしよう。
まずは今のリールを分解して、部品ひとつひとつを取り出して──
◇◇◇
リール全体をカーボンで作った結果、どことなく微妙に安物感が出てしまった。
高機能かつ軽量なのだけれど、黒色というのがどうもいけない。
市販の安物は黒色が多いからだ。
ただし軽さや動きは文句ない。
もともと木炭由来魔法加工物質は素材そのものに自己潤滑性がある。
だから寸法さえ間違っていなければ、潤滑油なしでも滑らかに動くのだ。
まあ埃や水分等の侵入を防ぐ意味では、固めの潤滑油を使うのが便利だったりするけれども。
そして投げサビキの仕掛け、そして投げトリックサビキの仕掛けも予備を含めて完成した。
竿もぱぱっと作ったし、ウキも、餌カゴも、重りも、餌つけ器も、竿スタンドも……。
更にはそれ以外にも準備した。
サビキ釣りでかからない、ちょっと大きく用心深い魚用のウキ釣り仕掛けを2種類。
そして動いている餌を追いかける習性のある魚用の新兵器を、何種類か。
そこまで作ったところで時計を見る。
午後2時。思った以上に時間がかかってしまったようだ。
魔法収納から舌平目のバター焼きとパンを出して、簡単に昼食を食べながら考える。
待ち合わせは冒険者ギルドで夕方5時半だ。
移動時間を考えてもあと3時間は使える。
ならば今回作った竿とリール、そして新兵器を試してみるのがいいだろう。
新兵器の使い方に慣れておく必要もあるし。
場所はすぐそこのミシェルミー川でいいだろう。
どうせ明日行くだろう釣行──いや、魔魚討伐も同じ川の上流だ。
だから川の水深と流れのあるボトムを攻めるのに慣れておいた方がいい。
善は急げだ。
昼食をガシガシ食べて、そして俺は家を出る。
西へ向かってすぐの堤防をのぼり、そのまま川の上流方向へ向かって、そして西へ向かう橋の手前で堤防を下りて川岸へ。
これから狙う魚は、日中なら暗めの場所にいるはずだ。
それも深さがあって流れている、川の流心近くに。
本当はバチ抜けといって、イソメやゴカイ、イトメなどが産卵行動で水面に出ている時と場所が最高だったりする。
しかし今日はそんな気配はないので、基本的にいそうな場所を狙って攻めよう。
もちろん狙う魚は魔魚カンディルーではない。
ここにいるはずの魚だ。
さて、それでは新作の竿とリールを試してみよう。
290cmちょいの、今までの中では短めの竿に、やや小さめ──シマノオでいうところの2500番台くらいのスピニングリールをセット。
さて、新兵器のうちどれを使おうか……。
今回作ってみた新兵器は、金属や木材を魚に似せた形に加工して、その後ろに針をつけた代物。
そう、いわゆるルアーというやつだ。
これも種類が結構あるが、今回用意したのは前世でミノーと呼ばれる形式のもの。
これは魚の形をした本体に、水の抵抗を受けるリップという突起をつけた疑似餌だ。
放っておくと浮くものと沈むものがあるが、今回は沈む方──いわゆる『シンキングミノー』と呼ばれるタイプにした。
なお、どんな色や大きさが効果があるかわからない。
だから大きさ、形、そして色を変えて何種類か作成している。
それではまず、銀色で中くらいのものから試しに投げてみよう。
橋の高さがあるので上からではなく、横投げで仕掛けを投げる。
着水したら少し沈むのを待って、まずは一定の速度で巻いてみる。
うむ、着水した場所がいまいちだったからか、魚は寄ってこなかった。
しかしリールの使い心地はなかなか良い。及第点といっていいだろう。
今度は風魔法を併用してより遠くへと投げてやる。
更に深さも底ギリギリくらいを狙って、ひっかからない程度の速さで。
今度は魚が追ってきている。なら少しだけ速度を緩めて、そして引いて……
かかった!
思い切り引いて釣り針を口にひっかけた後、頑張って寄せる。
釣れたのは狙っていたシーバスではなく、黒鯛だった。
黒鯛は海の魚だが、割と汽水域にも入り込んでくる魚だ。
30cmと大きくはないが、食べるには悪くないサイズ。
釣り目的ならこのまま更に攻めるところ。
しかし今は道具を試す、そして慣れるという目的がある。
だから次は大きめ──5.4mほどの竿と、シマノオなら3500番台くらいの大きさのスピニングリール、そしてルアーもより大きめのもので挑戦だ。
※ 地球の場合は『養殖されている小エビ』ではなく『オキアミ』を使うのが一般的です。『小エビ』というのはエイダン君が以前いた世界における話となります。
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