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それから八カ月が過ぎた。いつものように子供たちと共に学校から帰り、その足で食材の買い物を済ませる。今日は子供たちのクラブ活動があり少し遅くなった。もう宙は茜色に染まっていた。

「早く帰ろうか。」

「賛成!」

「急ごう!」

この日は私も少し油断していたのかもしれない。子供たちと曲がり角を曲がろうとした次の瞬間。

キキーッ!

左からまっすぐ車が突っ込んできた。

「うわあっ!」

「大丈夫!?」

幸いコウタが尻もちをついて、手がかすり傷を負ったくらいだ。だが問題は突っ込んできた車のほうで。

「奇病持ちだ!連れていけ!」

コウタの手に赤い結晶が出ていることで奇病持ちだとバレてしまった。しかし、狂獣病はたいして金にもならないし、狙われにくい奇病のはずなのに、なぜ誘拐しようとするのか。相手は二人。この曲がり角を曲がればすぐ家だ。家に入ればセキュリティシステムが作動して奴らは入ってこられない。

「皆、今すぐ走って!」

「うわあああっ!」

子供たちは叫びながら家まで必死に走った。すぐ近くが家で本当に助かった。三人を家に入れ、すぐにセキュリティシステムを作動させる。

「お姉さんも早く!」

私も家に入ろうとした瞬間、銃で肩を撃たれた。

「っ!」

「残念、奇病の子はセキュリティシステムの中ですか。」

「あんたは……!」

糸目の男がにやりと笑い、片手に拳銃を持っている。奴が私を撃ったのだ。

「須藤幸喜!」

「ご明察。久しぶりですね、玲子。」

「あなたなら私が二十五まで死ねないことは知っているでしょう?」

「えぇ。もちろん知っていますよ。ですが、無力化させることはできると思いましてねぇ。」

彼がぱちんと指をはじくと周りから一斉に敵が現れ、あっという間に囲まれる。

「あなたに敵に回られて一緒に戦われちゃ厄介なのでね。ここで捉えさせてもらいますよ。」

「……っ!」

本当にまずい。後ろが壁だから全方位を囲まれたわけではないが、このままでは助けを呼べない。だが、この壁が私の家の壁でなければ絶体絶命というわけではない。私は壁をよじ登り、家の敷地に飛び込んだ。すると警報音が鳴り響く。

「なるほど、さすが玲子ですね。」

「家のセキュリティシステムを把握していない家主がどこにいまして!?」

この警報音で警察はすぐに来る。奴らは逃げるしかないというわけだ。

「仕方ない、引きあげますよ。」

奴等は車で退散していった。家の中では警報システムが鳴り響いている。その音で住宅街に住む人たちが顔を出し、警察も到着した。

「お姉さん、大丈夫!?」

「え、えぇ、大丈夫。すぐに警察が来るからね。」

そして警察の事情聴取が終わると、私たちは優香の車で凪街にある事務所へ向かった。

「怪我はないかい?」

「大丈夫。この子もかすり傷程度。」

そのとき、事務所の扉が思いっきり開き、獅子合が入ってきた。

「お前たち、大丈夫か!?」

「獅子合お兄さん!」

獅子合は私たちに怪我がないことを確かめると、ほっと胸をなでおろした。

「それで、なにがあった?」

「秋葉組にいた須藤幸喜が私たちを誘拐しようとしたの。家が近くて助かったけど…」

「須藤幸喜だって!?」

獅子合は驚いてすぐにどこかに電話をかけた。

「もしもし、カシラですか!? 秋葉組のカシラの右腕が裏切りました!」

どうやら春川組のカシラに電話しているようだ。この事実が、この都市にいる極道たちに衝撃を与えることになるだろうと、私はぼんやり思いつつ、お茶を飲んだ。

「これでよし……しかし……まさかあいつが裏切るとは…」

獅子合も驚きのあまり、顔が青くなっていた。

「で、そっちはこれからどうするのよ。」

「……雨宮家に手を出したんだ……近々、冬木組にも何かしら動きがあるだろう……」

久利組がある場所は、冬木組の縄張りに近い香里街だ。何か動きがあれば、まず冬木組が動くはずだ。一気に凪街にまで来ることはないだろうが、それでも気をつけなければならない。

「久利組のやつらは八カ月前からマークしている。お前たちはしばらくこの事務所で過ごすんだ。」

「獅子合、私も戦う。」

「馬鹿! 下手したら戦争になるかもしれないんだぞ!」

「相手は少なくともそれをご所望よ。」

雨宮家に手を出し、わざわざ戦いを挑んでいる時点で、奴らは戦争を望んでいる。それなら、私はその望みを叶えてやる。

「久利組がどういう組織なのかは知らないけれど、うちのシマに手を出した時点で容赦はできない。安心して。私は二十五の誕生日まで死ぬことはないから。」

獅子合は私の言葉に反応し、一瞬言葉を失う。それでも、彼は口を開く。

「お前はいつもそうだ。そうやって危険を顧みず飛び込んで……」

「ごめんね、でも、これが私のやりたいことだからさ。」

獅子合は大きなため息をつき、佐山さんに電話をかけた。電話中も獅子合はずっと考えていただろう。

「佐山の兄貴と相談した。兄貴は必ず奴を討つようにと言っていた。」

「えぇ、命に代えても。」

獅子合はてきぱきとLUNEで弟分たちに命令を送る。

「誕生日の前日までに奴の居場所を抑えさせる。いつ討ちに行くかはお前が決めていい。」

「了解。」

「だが、決して無理はするな。」

私は微笑んで言った。

「善処するよ。」

ヒーローは夜空に散る

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