テラーノベル
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また遅くなってしまった。
また三神先生に送ってもらった。
また徹さんに振り回されている。
またいろいろと考えてしまう。
―― 疲れているのに眠くない
プラスチックの裁縫箱の蓋を開ける。夏にドラッグストアの抽選で当たったレース柄のハンカチをここに入れていた。好みでない柄だけど、シュシュにすればいい、と。
黙々と手を動かしながら、昼休みに20万円出金しなきゃ、と考える。
―― 三神先生が好きって……知らなかった
チクッ……
「……ッ……」
指先にぷくっと血が盛り上がってくる。
ハァ……
徹さんは私のどこを見ていたのだろう。でも、それは私にも言えること……結婚していたことにも気づかないだなんて。
「おはようございます」
翌朝いつも通り出勤すると
「……おはようございます」
周囲が一瞬の間を置いて私の様子を窺う。包帯が目につかないように、広範囲に薬を塗らなかった。そしていつものカーディガンよりも少し袖の長いⅤネックニットを着て来た。
「おはよう、石川さん。どうだった?」
「ありがとうございました、西口さん。打ち身のようなもので、大丈夫です」
「ちゃんと診断書はもらった?」
「はい。即日発行はしてもらえなかったけど、お願いしてきました」
近くの人たちが聞き耳を立てている気配に、一旦口を閉じて座る。そして西口さんに顔を近づけて
「全治2週間の診断書だそうですけど、仕事にも支障はないので」
と小さく伝える。
「そんなの不幸中の幸いとも言えないけどね」
西口さんは、私の小声を振り払う勢いで言いながら、周りを見渡した。
「この野次馬視線だけでも迷惑でしょ?」
「ちょ、っと……西口さん!」
わざわざ立ち上がらないで、と、私は彼女のベストの裾を引っ張る。
「どうして石川さんが小さくなってるの?あなたは被害者。分かる?個人的なことを個々に説明する必要もないけど、周囲からおかしな目で見られることもない。分かった?」
―― 西口さん、ありがとう
彼女の差した指が、私の目に刺さるかと思ったけど、怖さより感謝しかなかった。少なくとも、この総務の中で私の居心地が悪くないように先手を打ってくれたんだ。
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コメント
3件
そうよ樋代ちゃん、堂々とね!!西口さん感謝です〜😊
西口さん😭うう… なんて感謝したらいいのか… この総務だけじゃなく、社内全体にも広がると思うよ〜。 戸倉課長だって先手を打ってくれる。ううんすでに打ってくれてるかも! 樋代ちゃん!堂々としてようね💪 そそシュシュ少し欲しいなぁ🤭
西口さ〜ん、ありがとう😊