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※ここから色々と妄想ストーリーを書いていきますので無理な方はご注意を☆
これは私が人生の中で忘れられない誕生日になったあの日の事。私の誕生日は2月22日と…まぁ…猫の日と呼ばれる日に生まれた。そして今日が誕生日なのだが…誰にもまだ伝えたことがない。まぁ…あんまり知られるのは好きじゃないからな。でも…やっぱり誕生日になるとなにか…プレゼントがあるのでは?と期待してしまう。私もまだまだ子供だな…。
「どうした?いつもより落ち着きがないじゃないか」
土方さんが少しからかうようにして私に聞いてくる。な…なんでわかるんだよ…。私は縁側にいるあんたに背を向けて座ってるというのに…。
「そんなことないと思いますよ、俺はいつもの通りです」
「そうか、ならいい。」
そう言って土方さんは手に持っている新聞に目を向ける。今は永倉さんもいないし…ましてや牛山もいない。二人だけの空間だ。……やっべぇ…気まずい…。何か話す…か…?いや、それでまた黙ってしまったら更に気まずくなっちゃう…よな。そうしてただ一人で悩んでいると牛山が帰ってきた。
「帰ったぞ〜、」
「ようやく帰ってきたか…一体いつもいつも森に入って何をやってんだ…?」
「修行…というより発散だな。」
「どーりで…山からあんたの声が大きく聞こえてくるわけだ…」
牛山は朝起きたらいつも持っている柔道着に着替えて森に入っていく。そこからがなんともまぁ…うるさいものだ。永倉さんも「近所迷惑で訴えられるぞ」と言ってたからな…。あいつは毎回遊女のところに行ったりするが、最近は森に入って遊女に会えない分森で発散してるらしい。毎回「女ぁぁぁぁ!!」と森から響いてくるのがほんと耳障りだ…。
「これ、やるよ。」
そう言って牛山は私に向かって何かを投げてきた。
「うおっ…な、何だこれ…?」
投げられたものはきれいな石だった。ただの灰色の石ではなく、私が昔アシリパというアイヌの少女に上げたあの青い石のような形と色をした物だった。
「落ちてきたから拾っただけだ。」
「いや落ちてきたならそこ置いとけよ…」
ほんっと…呆れるばかりだ…。そんなことを話していると不意に土方さんがこちらに声をかけてきた。
「お前さんは刀は使わんのか?」
「き…急だなぁ…刀は…基本は使いませんよ、俺は銃剣が数本あれば十分ですから」
「そうか、使うというのならば私がくれてやろうと思ったのだがな」
「え…?」
土方さんは戸惑っている私を先程のようなからかうような目でこちらを見てくる。
「…つ…つまり…俺に刀をくれる…という…ことですか…?」
「それ以外に何があると言うんだ?」
「いや…こ…言葉にも色々とありますし…というか高くないですか…!?刀なんて…そう…安く買えるものじゃありませんよ!?」
「ここにあるが?」
そう言ってどこかに取りに行ったかと思えば…刀を持って私の近くまで歩いてきたのだ。……いやどこから持ってきたんだよ!?
「どこからか持ってきたんですか!?」
さすがの私も動揺しすぎて心の中で思っていることと同じことを言ってしまった…。いや…本当にどこから持ってきたんだその刀…?ま…まさか…なくなった戦友の物だとか…い、言わないですよね…?やだよ!?戦友さんのものを使うだなんて!?アイヌの文化にも死人のものは使わないとかなんとか書いてあったんだけどぉ!?
「安心しろ、死んだやつらのものでは無い。私が一時的に使っていたものだ。」
「つまり…今、土方さんが持っている刀に出会うまで使っていた物…ということです…?」
「そのとおりだ。」
良かったぁぁ…。心底安心した…。死人のものを使うなんてお断りだからな…。実際的に私が持っている金以外は全て父親や母親のものだったから燃やした。アイヌにも色々とあって、その人が使っていたものに傷をつけてともに埋めてあげるというのもある。だからその習わしに合わせて燃やしてあつらのもとに届けてやったさ。まぁ…届かねぇとは思うけどな。
「というか…いいんですか…?俺なんかにこんなもの…。」
「前から使いたいと言っていただろう?」
そう言って土方さんは自信有りげに私を見てくる。
「……そんなこと…よく覚えてましたね…。」
そんなことを言ったのは土方さんと出会って…それから数日たった頃にポツリと独り言で言った言葉だ。あんな爺さんでも覚えれるものなんだな…。普通は無理だろうけど…。
「それにしても…軍人らが使うものより少し重たいですね…。」
「使っている間は手入れは欠かさずしていたからな。そこら辺のものよりかは切れ味もいいだろう」
そう言って土方さんは私の隣にあぐらをかいて座る。
「珍しいな。あんたが人に物をやるなんて。」
そう言って牛山も私の近くに座る。…いや狭いんだが!?
「なんだ、まるで私が酷いやつのような言い方をして。」
「俺に脅しをかけて仲間になれと言ってきたやつは誰だったけな、」
牛山はそう言って少し土方さんを睨むように見る。
「…ふん、それぐらいしないとお前は私のもとに来なかったはずだろう。」
鼻で少し笑った後に牛山に目線を合わせる。
「よくわかってるじゃねぇか。」
「あ…あのぉ…俺を挟んで昔話はやめてもらえますかねぇ…?」
「おっと、すまんな。ついついこうなっちまうんだよ。」
そう言って牛山が謝る。いや…は、話すときは私抜きでやってくれ…その…なんだ…両側からの圧が凄いんだよ…。不敗の牛山と鬼の副長の土方に挟まれたら私はただの人殺しになっちまうよ…。
「うぉぉ…すげぇ…まるで新品みたいだ…。」
私が試しに刀を鞘から出してみると、まるでその場で作られたような刀の刃が見える。鏡のように私の姿を映す程だ。どんだけ手入れが上手なんだよ…これなら木でも切れるんじゃないのか…?流石は刀好き…私でもここまでは磨けねぇよ…。
「こりゃすげぇな。」
牛山も私と同じように感嘆の声を漏らす。まぁ…昔の侍さんの武器は刀だけだったからな。手入れをせずに放って置いたらいざというときに使えなくなる。だからこそいつも磨いてたんだろうな…。
「気に入ってくれたか?」
そう言って土方さんが私の方に視線を移す。
「それはもちろん…!こんな素敵なものを貰って喜ばないやつなんているわけ無いですよ…!」
「そこまで言ってくれるのなら、この時まで磨き続けたかいがあったものだな。」
満足そうに土方さんは微笑む。こんな刀をもらって喜ぶのは私ぐらいしかいないだろうけど…でも、ある意味これは…誕生日プレゼントなのかもな。こんなきれいなものが誕生日プレゼントだなんて…私はなんて幸運なんだろうか…。この幸運を門倉さんにも分けてやりたいな…。ん…?あ、そうか。まだ言ってなかったな…門倉さんはもと網走監獄の看守だったんだ。んで、脱獄したときに土方さんのもとに付いたって感じだ。でもなぁ…どんくさいと言うより…何かと不幸というか…凶運なんだよなぁ。変なところで奇跡を起こすし、変なところで怪我してくるし…な…なんだか見てて悲しくなるんだよな。って、そうじゃなかった…。
「でも…どうやって仕舞ったらいいんだろう…。あまり目立ちたくないんだよなぁ…。」
「何かと目立ちたがらないよな、お前。」
そう言って不思議そうに牛山が私に向かって言ってくる。
「目立っちゃってあの第七師団の奴らに見つかったら嫌なんですよ…」
「どうしてだ?何かあるのか?」
土方さんが少し興味深そうに私に聞いてくる。
「…私の父親が第七師団にいたんですよ…それでその第七師団の中尉と昔にあった事がありまして…だから部下に見つかると厄介事になるんですよ。」
「ほぅ…」
ニヤリと土方さんは悪い顔をする。や…やめてくれよ…?第七師団の奴らに捕まって情報を聞き出せなんて言わないでくれよ?嫌だからな!?絶対に拒否するからな!?
「な…なんですか…」
「いや、なんでもない。」
「そ…そう…ですか…。あ、それと今からお茶を入れようと思ったんですけど…良かったら作りましょうか?」
「ならば貰おうか。」
「俺の分も頼む。話しすぎてのどが渇いちまった。」
「いや…牛山…あんたは大して喋ってねぇだろ…」
そんなことを思いながらも台所に立って私は湯を沸かし始める。なんだかんだと言ってこうやって人に茶を入れるときが好きなんだよなぁ…。目の前で上手いと言ってくれる人がいると…なんだかとても嬉しいんだよな。昔はなかったからな…そんなことは…。そう思いながらも黙々と完成させて湯呑みに注ぎ土方さんたちのもとについでに買ってきた煎餅をつけて持っていく。
「できましたよ〜」
「お、煎餅付きか。」
牛山はお茶よりも煎餅に先に目線を向ける。まぁ…き、今日はたまたま散歩してて…そこで菓子屋の前を通りかかった時に安かったからな…。ついつい買っちまった…。
「今日は気分がいいみたいだな。」
そう言って土方さんはお茶を飲む。え…そ、そんなに表情緩いのかな…私…。恥ずかしいんだけど…。
「た、たまたまですよ。」
そうやって誤魔化しながら私もお茶を飲む。
「お…茶柱だ。」
しかも2本立ってる。今日はいい事づくしだな。そう思っていると土方さんが少し微笑みながらこちらを見る。
「そんなに嬉しいのか?」
「え…?あ、」
今更に気づいたが…表情がすごい緩くなってしまっていた…。恥ずかしい……。
「どうした?散歩途中に遊女に遊んでもらったのかよ?」
ニヤニヤしながら私をからかうように牛山が言ってくる。
「だから違うって言ってるだろうが…!」
「そんなに言わなくていいんじゃねぇのか?」
「言いますよ!まったく…いつもの紳士らしさはどこへ行ったのやら…」
そんな感じでのほほんと夜まで過ごしたのだった。まぁ…詳しく言えば昼飯後からは刀の稽古をしてたけどな。
そしてその夜…私はなかなか眠れなくて静かに部屋を出た。そして一人静かに縁側を歩く。…こんな静かな時間もいいな。どうしても大勢といると疲れてしまうけど…一人ならいくらでも疲れない。それにしても…今日はよく月が出てる。それも…空の色のせいなのか少し青みがかったような月。…あんな月を見ると昔の頃を思い出すな…。あの…親を殺したあの日のことを…。そう思いながら歩いてると土方さんが縁側に座っていた。
「あ…土方さん…」
「眠れないのか?」
みんなの前の時よりも優しい声で私に話しかけてくる。
「え…えぇ…まぁ…なかなか寝付きが悪くて…」
「隣に来い。話を聞かせてくれ」
そう言って土方さんは手招きをする。私は手招きされるままに土方さんの隣に座る。
「話と言っても何もないですよ…?昼の稽古の時ぐらいしか…」
「それでもいいが、最近はどうなんだ?傷は痛まなくなったか?」
「…過保護ですね…最近は無くなりましたよ。家永さんのサポートのおかげでもありますし、他の皆さんのおかげでもありますからね、」
「そうか、なら安心した。」
そう言って土方さんは肩の力を抜く。そして少し冷たい夜風が吹いて土方さんの髪がなびく。…綺麗だな…。まるで風になびく土方さんの髪が空に浮かぶ星のように輝いている。…見惚れてしまうな…。
「…見惚れているのか?」
私の思考を見透かしたようにニヤリとしながら私に聞いてくる
「えっ…あ、い、いや!そ、そういうわけじゃなくて…!」
「触りたいのなら触ってもいいぞ。」
「えっ……」
た…確かに前から少し触ってみたいとは思ったが…い…いいの…かな…?
「じ…じゃあ…お言葉に甘えて…」
そう言って慎重に土方さんの髪に触れてみた。驚くほどにサラサラしている。まるで絹のように…な…何だこれ…ずっと触っていたくなる…。さ…触る手が止まらないんだが…!?
「そんなに触りたかったのか?」
「え…あ…ま…まぁ…そうです…ね…。それにしても綺麗ですね…どうやってここまで綺麗にできるんです…?」
「香油を使って手入れをしているからだ。」
「香油ですか…通りで…」
それに…なんとなく…柚子などの柑橘系の匂いがする…。なんだか…落ち着くな…。もう少し香りに浸っていたい…。
「顔が近いぞ」
「へっ!?あ、す、すみません!?」
無意識に私は近づいていたみたいでもう少しで完全に顔にぶつかるところぐらいまで近づいてしまった…。は…恥ずかしいッ…。
「そういえばあの風鈴は貰い物か?」
「あ、そうですね、友人から貰ったんですよ。綺麗ですよね。」
「そうだな。それに今夜は月が綺麗だな。」
「そうですね……」
ん…?あれ…?な、なんか聞いたことがあるぞ…?口説きか隠語かで聞いたことがあったような…。
「…気づいているのか?」
「え…あ…」
これは…口説きの方だ…。知っている…。恋愛小説で見たぞ…。確か…意味が…「あなたが好きです」だった…ような…。まって…てことは…口説きではなく告白か!?
「いや…あの…」
「どうした?顔が赤いぞ?」
ニヤリと笑いながら私の頬に手を添えてくる。なぜだろう。土方が喋るたびに鼓動が早くなってしまう。無意識に…顔も火照ってきて…。
「ひ、土方さん…!?ち、近いですよ…!?」
「こちらが近づいては駄目なのか?」
「い…いや…そういうわけじゃ…」
そう言いながら土方さんは顔を近づけてくる。ち、近い…!そ…それに…い…いい匂いがする…。だ…駄目だ…思考が働かない…。
「…目をつぶれ。」
「ッ…」
私は覚悟を決めて目をギュッと閉じる。しかし…いくら待っても何もしてこない…。ただ土方さんの息をする音が聞こえてくる…。あまりにも静か…だな…。
「…?」
私は試しに目を開けてみる。
「…」
「んッ…!?」
その瞬間、風鈴の音が静かに響く中、土方さんは私の唇に口づけをした。あまりにも自然で…何も反応ができなかった。
「…甘いな。」
「………///」
私はただ思考停止する中でペロリと舌なめずりをする土方さんを見つめるしかなかった。この人の始めては…一体…誰が奪ったんだろうか…。
そして次の日の朝。私は思い出した。そうだ…結局的に誕生日のこと話してなかったな…。そして昨日が誕生日だと話したら全員から驚かれた。まぁ…うん…一度も伝えたことなかったからな…。でも土方さんは何かどこか…知っているような素振りをしていた。
「どおりで昨日は気分が良かったんだな。」
「そ…そんなこと言わないでくださいよ…牛山さん…」
「そういえば、何かと隠し事が多いな、お前は。」
永倉さんが少し疑いの目で見てくる…。こ…怖い…。
「え…えぇ…?そうです…?」
「なら、罰として秘密を明かさせればいいんじゃないのか?」
キラウシさん…それは酷くないです…!?なんでそんなに楽しそうなの…!?あ、ちなみにキラウシさんはアイヌの方なんだけど…訳あって土方さん達と共に行動している人なんだ。
「じゃあ、まずは性別の方からお願いします。」
家永さんが笑顔で言ってくる…。怖ぃぃぃ!!
「え…えぇ…?」
「確かに、あやふやだな。」
「そこは共感しないでもらえますかねぇ…?牛山さん…」
『で?どうなんだ?/ですか?』
全員が私を見る。…これは…誤魔化しが効かないな…。しょうがない…。言うか…。
「…俺は……いや…私は…女です。」
『………』
えっ?えっ?ちょ…な、なに!?なんで黙るの!?あなた達が言えと言ってきたんだが!?
「マジ…か…」
「マジですよ?」
「……なんか…すまん…」
「やめて!?謝らないで!?いつもの牛山じゃないんだが!?」
「なんで早く言わなかったんだ…?」
永倉さんが不思議そうに聞いてくる。
「…嫌だったんですよ。女だからといって特別扱いされるのが。それであなた達に置いて行かれるのが。」
「…」
「誰が置いていくだと?」
先程まで昼寝していた土方さんが起き上がって私の方を見る。
「…だから…あなた達に…」
「置いて行く訳がないだろう。」
「え…?」
予想外な答えが帰ってきて私は戸惑った…。普通なら冗談だろとか言われて終わるのかと思ったけど…違った。土方さんは…私を連れて行ってくれるみたいだ。たとえ私が女だとしても。男だとしても。
「それに…お前の大切なものを預かっているんだ。尚更、置いて行けるわけがない。」
「ッ…///」
「大切なもの?なんだそりゃ?」
牛山が首を傾げる。他のみんなも首を傾げるがその中で一人…何かを察しているのかワナワナと震わせている人がいた。そう…永倉さんだった。
「土方さん…まさか…あんたッ…!」
「ん?なんだ?ガムシン、何かあったのか?」
「……いや…何でもないですよ…。」
「…///」
何かを諦めたのかため息をつきながら話すのをやめる永倉さん…。すみません…。あなたのご想像どおりです…。
「まぁ…そんなことはともかく、人数分話してもらおうぜ。」
牛山がそう言い始める。…おい?冗談だろ!?
「そうだな。牛山ニシパ(旦那)に賛成だ。」
「い…いやぁぁぁぁぁ!!」
そんな感じで…私の誕生日は波乱に終わったのだった…。めで…たし……じゃねぇぇぇ!!